どんな姿をしていても…
文化祭の準備は拓也の意に反して着々と進み、当日へと着実に近付く。
ウェイターもといウェイトレスの衣装は、予算もそんなにない事もあり、女子生徒提供の中学時代の制服(セーラー服限定)という事になった。
「せ、せめてブレザータイプだったら、普段の制服がスカートになるだけなのに…」
とある放課後、クラスが試着室として借りた特別棟の被服室で、女子から借りた制服に着替えながら拓也は嘆く。
「それじゃあ、変わり映えしないからだろ」
「まあ、メイド服とかよりは良かったんじゃね?」
「つか、榎木って意外に諦め悪いのな」
小野崎を始めとする他のウェイトレス役の級友達も、拓也を宥めたり呆れたりとダベリながら着替える。
「着替え出来たかー?」
コンコンとドアをノックされ、一人がOKの返事をすると、級長と実行委員と布瀬(生徒会役員だから)に、制服提供の女子数名が入って来た。
「…………っ」
「かっ可愛いー!!」
絶句する男子に対して絶叫するのは女子。
「やだやだやだやだ!そこら辺の女子より可愛いとか、特に榎木君!!」
「えっ!!」
絶賛する女子達に名指しされて拓也は真っ赤になって狼狽える。
「女子ってこういうの、本当好きだよなぁ」
「だな」
「お前らも十分可愛いけどな」
「嬉しくない褒め言葉アリガトウ」
と、他の男子は拓也を取り囲む女子を眺めて呆れる。
「さて、試着した感じ、サイズとかも良さそうだな」
級長が確認を取る。
「いくらサイズ調整出来るスカートだからって、男子にこうも簡単に履かれちゃうのも複雑だけどね」
ウエストのホックの部分がスライド式に稼動するタイプでサイズ調整が可能なのだ。
「まあ、まだ成長途中の高一だからイケるんだろうな」
「じゃあ、あとは仕上げ!」
私達に任せてーと言わんばかりに、女子の持って来たウィッグやらヘアアクセサリーやら装着させられる事 数分後。
「もう…どっからどう見ても女子…」
「お前ら…本当可愛いな…」
溜息混じりに感嘆する女子と実行委員側に対し、
「…………っ」
「俺ら、高校一年の文化祭は人生の永遠の黒歴史だな…」
と涙をちょちょ切らせるウェイトレス組だった。
試着を終え着替えて、皆で教室に戻る。
クラスでは、設営班が当日のメニューボードやポップ、看板等を作っている。
「お、ウェイトレス組、試着お疲れー」
「どうだった?」
中橋と穂波が藤井とポップを作りながら、拓也と小野崎に声をかける。
「あーまー、なかなか好評?特に榎木…」
「わー!小野崎君!!」
小野崎の口を両手で塞ぐ拓也と藤井の目が合う。
「…………っ」
真っ赤になって小野崎の口を塞いだまま微動だにしない拓也の手を、後から来た布瀬がやんわりと退かせて藤井達にニッコリ笑う。
「まあ、当日のお楽しみな♪」
帰り道。
「布瀬は見たのに俺には見せてくれないとか、ずりぃ」
藤井は拓也に呟く。
「藤井君。布瀬君は仕事の一環。藤井君は違うでしょ」
「ガンコ」
「煩い」
「じゃあ…」
グイッと拓也の肩を抱き寄せ、耳打ち。
"文化祭当日、二人でサボろうか…?"
「…っ、ダメっ!!」
不意打ちの耳元での囁きと、思いがけない藤井の言葉に、拓也は咄嗟に拒否をする。
「何で?」
藤井の問い掛けに、拓也は狼狽えながらも答える。
「だっ、だって…やっぱりサボったりしたら、皆に迷惑かけるし…」
「でも、やりたくないんだろ?」
「だけど…迷惑をかけるのは、もっと嫌だ…」
自分が休めば、他のメンバーに負担が行く。
特に接客は、当日が一番要なのだ。
俯いている拓也は、藤井が「してやったり」と笑んでいる事に気付かない。
「じゃあ、ちゃんとやらなきゃな」
「うん」
藤井は拓也の頭をポンポンと撫でる。
「よし!これで、心置きなく、当日を楽しめるな!」
「――――はっ」
ハメられた―――!!
顔を上げて藤井の顔を見ると、満面の笑顔。
「榎木のウェイトレス姿、楽しみにしてるから♪」
「ふ、藤井君!!」
「まあ、仕事中はともかく。初めての高校の文化祭だ。休憩時間は一緒に回ろうな」
さっきとは違った笑顔を向けられ、拓也はドキリとする。
(あぁ、そうだ)
初めての高校の文化祭。
中学までとは規模も盛り上がり方も違う。
それをいつまでもふて腐れていたら、台なしではないか。
「…うん」
自分も抗える事は抗ったのだ。
その上で決まったものは仕方ない。
(腹をくくろう。楽しまなきゃ損だよね)
「なんか、藤井君に上手く丸め込まれた気がする」
「気のせいだろ」
「そうかなぁ…」
ウェイターもといウェイトレスの衣装は、予算もそんなにない事もあり、女子生徒提供の中学時代の制服(セーラー服限定)という事になった。
「せ、せめてブレザータイプだったら、普段の制服がスカートになるだけなのに…」
とある放課後、クラスが試着室として借りた特別棟の被服室で、女子から借りた制服に着替えながら拓也は嘆く。
「それじゃあ、変わり映えしないからだろ」
「まあ、メイド服とかよりは良かったんじゃね?」
「つか、榎木って意外に諦め悪いのな」
小野崎を始めとする他のウェイトレス役の級友達も、拓也を宥めたり呆れたりとダベリながら着替える。
「着替え出来たかー?」
コンコンとドアをノックされ、一人がOKの返事をすると、級長と実行委員と布瀬(生徒会役員だから)に、制服提供の女子数名が入って来た。
「…………っ」
「かっ可愛いー!!」
絶句する男子に対して絶叫するのは女子。
「やだやだやだやだ!そこら辺の女子より可愛いとか、特に榎木君!!」
「えっ!!」
絶賛する女子達に名指しされて拓也は真っ赤になって狼狽える。
「女子ってこういうの、本当好きだよなぁ」
「だな」
「お前らも十分可愛いけどな」
「嬉しくない褒め言葉アリガトウ」
と、他の男子は拓也を取り囲む女子を眺めて呆れる。
「さて、試着した感じ、サイズとかも良さそうだな」
級長が確認を取る。
「いくらサイズ調整出来るスカートだからって、男子にこうも簡単に履かれちゃうのも複雑だけどね」
ウエストのホックの部分がスライド式に稼動するタイプでサイズ調整が可能なのだ。
「まあ、まだ成長途中の高一だからイケるんだろうな」
「じゃあ、あとは仕上げ!」
私達に任せてーと言わんばかりに、女子の持って来たウィッグやらヘアアクセサリーやら装着させられる事 数分後。
「もう…どっからどう見ても女子…」
「お前ら…本当可愛いな…」
溜息混じりに感嘆する女子と実行委員側に対し、
「…………っ」
「俺ら、高校一年の文化祭は人生の永遠の黒歴史だな…」
と涙をちょちょ切らせるウェイトレス組だった。
試着を終え着替えて、皆で教室に戻る。
クラスでは、設営班が当日のメニューボードやポップ、看板等を作っている。
「お、ウェイトレス組、試着お疲れー」
「どうだった?」
中橋と穂波が藤井とポップを作りながら、拓也と小野崎に声をかける。
「あーまー、なかなか好評?特に榎木…」
「わー!小野崎君!!」
小野崎の口を両手で塞ぐ拓也と藤井の目が合う。
「…………っ」
真っ赤になって小野崎の口を塞いだまま微動だにしない拓也の手を、後から来た布瀬がやんわりと退かせて藤井達にニッコリ笑う。
「まあ、当日のお楽しみな♪」
帰り道。
「布瀬は見たのに俺には見せてくれないとか、ずりぃ」
藤井は拓也に呟く。
「藤井君。布瀬君は仕事の一環。藤井君は違うでしょ」
「ガンコ」
「煩い」
「じゃあ…」
グイッと拓也の肩を抱き寄せ、耳打ち。
"文化祭当日、二人でサボろうか…?"
「…っ、ダメっ!!」
不意打ちの耳元での囁きと、思いがけない藤井の言葉に、拓也は咄嗟に拒否をする。
「何で?」
藤井の問い掛けに、拓也は狼狽えながらも答える。
「だっ、だって…やっぱりサボったりしたら、皆に迷惑かけるし…」
「でも、やりたくないんだろ?」
「だけど…迷惑をかけるのは、もっと嫌だ…」
自分が休めば、他のメンバーに負担が行く。
特に接客は、当日が一番要なのだ。
俯いている拓也は、藤井が「してやったり」と笑んでいる事に気付かない。
「じゃあ、ちゃんとやらなきゃな」
「うん」
藤井は拓也の頭をポンポンと撫でる。
「よし!これで、心置きなく、当日を楽しめるな!」
「――――はっ」
ハメられた―――!!
顔を上げて藤井の顔を見ると、満面の笑顔。
「榎木のウェイトレス姿、楽しみにしてるから♪」
「ふ、藤井君!!」
「まあ、仕事中はともかく。初めての高校の文化祭だ。休憩時間は一緒に回ろうな」
さっきとは違った笑顔を向けられ、拓也はドキリとする。
(あぁ、そうだ)
初めての高校の文化祭。
中学までとは規模も盛り上がり方も違う。
それをいつまでもふて腐れていたら、台なしではないか。
「…うん」
自分も抗える事は抗ったのだ。
その上で決まったものは仕方ない。
(腹をくくろう。楽しまなきゃ損だよね)
「なんか、藤井君に上手く丸め込まれた気がする」
「気のせいだろ」
「そうかなぁ…」