「こいつらこれでも付き合ってないんだぜ!」
「――なあ、アレはどうすればいい?」
「どうするも何も、今行ったら俺たち超KY野郎だよな」
トイレから出て二人を追った後藤と広瀬だが、傍から見たら、何とも言い難い雰囲気の同級生二人が数メートル先にいた。
状況としては、藤井が拓也にシャーペンを渡している、ただそれだけ。
でも醸し出す雰囲気は、今二人に近寄ったら馬に蹴られるかもね、な空気。
「アイツら、付き合ってんの?」
広瀬が後藤に訊く。
「いんや、まだのハズ」
後藤も戸惑いを隠せない。
「恐らく、拓也自身自分の状態に気づいてないだろうし……」
「え、マジで!? あんだけオーラ出してて!?」
「甘いな。拓也は自分のことと恋愛のことは超絶鈍感だぜ。即ち、ニブニブカテゴリィのダブルコンボ」
だから俺がいつでも恋愛アドバイザーとして拓也からの相談を待ってるというのに、ちっともなんだぜーと、クネクネダンスを踊りだす。
「アイツ、周りのことには敏感に反応して気ィ遣いーなのに、何でだ。そしてお前は言ってることとやってることにツッコミ所満載だな」
呆れ顔で後藤を冷ややかに睨みつけると、広瀬は踵を返し、もう一度館内の方に戻って行く。
「お前のその顔で睨まれると怖ぇな。って、拓也たちンとこ行かねえの?」
「アレじゃ行かねえ方がいいだろ。どうせ榎木のことだから、俺らいなくても一通り見て帰ってくるだろうし」
出入り口脇に設置された簡素な長ソファーにドカッと腰を下ろす。
「資料として必要だと思ったら、しっかりメモも録ってくるだろ」
「まあ、拓也だからな」
というわけで、堂々とサボリを決め込む二人だった。
それから広瀬の言う通り、しっかり庭園を一回りし、きっちりメモを録って戻ってきた拓也に、こっぴどくお小言を言われた後藤。
「え、何で俺だけ!?」
「日頃の行いだろ」
「お前、館内でも大したことしてなかっただろ」
「じゃ、資料まとめはゴンちゃんにやってもらおうかな」
「ヒデェ!拓也ぁ…」
ムリですごめんなさいと、縋り付く後藤にクスリと笑い「ウソウソ。さ、遅くなっちゃったけど、ここ出てお昼食べ行こっか」と提案する。
「あ、藤井君、僕 写真プリントしに行こうか?」
バスに乗り込んで、拓也がデータ預かるよと申し出るが。
「あぁ、ついでがあるし、俺やっとくからいいよ」
「そ?じゃ、ちゃんとプリント代教えてね。4人で割るから」
「ん。わかった」
(こっそり撮った榎木の写真、バレるわけにはいかねぇもんな)
ポケットの中でカメラから抜き取ったSDカードを藤井はギュッと握り締めた。
次の合同授業の日。
集めた資料を元に、要点をまとめて発表に使うポスターを作成する。
「ねえ、藤井君。ここのところさ……」
「それよりこっちの方がよくねえか?……」
「おい後藤、お前字ぃヘッタクソだな」
「へ?そうか?」
完全グループ作業になっているこの授業、グループ内でも各々の役割は自然と出来、後藤と広瀬はポスターのレイアウト担当、藤井と拓也は仲良く話しながらレポートをまとめている。
「おい、榎木。後藤よりお前ポスターの方がよくねーか?」と広瀬が拓也に声をかけるが、
「え?でも僕レイアウトとか苦手だし…ゴンちゃんの方がセンスいいよ。それに、広瀬君のセンスがいいもの。そっちは二人に任せたいな」
「それだし、後藤より榎木の方が文章まとめるの上手いから、後藤こっちによこされても俺が困る」
ニッコリ笑顔の拓也と飄々とした態度の藤井でトレードを拒否する二人。
「拓也はともかく、藤井、俺に対してそれ失礼じゃねーか?間違っちゃいないけど」
「間違ってないなら、別にいいじゃねーか」
(お前らお互いがお互いに一緒に作業したいだけじゃねぇの!?)
「拓也ー藤井がひどいー」「ゴンちゃん…」とわぁわぁと騒いでいる三人を軽く睨み溜め息を吐く広瀬。
「おい、とっとと続きやるぞ後藤」
「おう」
そしてもう一度チラリと二人を盗み見て、もう一度溜め息。
「こいつらこれでも付き合ってないんだぜー」状態を合同授業の期間が終了するまで見せ付けられるというのか。
「お前も大変な位置にいるもんだな」
「は?」
ここに私立中学に進学したヤツの親友・森口がいたら、また違ったのだろうか……と、一瞬よぎったが。
(後藤より藤井の扱い上手そうだしな)
まあ、どちらにせよ、早くこの授業終わってくれないかと思う広瀬だった。
-2014.04.21 UP-
「どうするも何も、今行ったら俺たち超KY野郎だよな」
トイレから出て二人を追った後藤と広瀬だが、傍から見たら、何とも言い難い雰囲気の同級生二人が数メートル先にいた。
状況としては、藤井が拓也にシャーペンを渡している、ただそれだけ。
でも醸し出す雰囲気は、今二人に近寄ったら馬に蹴られるかもね、な空気。
「アイツら、付き合ってんの?」
広瀬が後藤に訊く。
「いんや、まだのハズ」
後藤も戸惑いを隠せない。
「恐らく、拓也自身自分の状態に気づいてないだろうし……」
「え、マジで!? あんだけオーラ出してて!?」
「甘いな。拓也は自分のことと恋愛のことは超絶鈍感だぜ。即ち、ニブニブカテゴリィのダブルコンボ」
だから俺がいつでも恋愛アドバイザーとして拓也からの相談を待ってるというのに、ちっともなんだぜーと、クネクネダンスを踊りだす。
「アイツ、周りのことには敏感に反応して気ィ遣いーなのに、何でだ。そしてお前は言ってることとやってることにツッコミ所満載だな」
呆れ顔で後藤を冷ややかに睨みつけると、広瀬は踵を返し、もう一度館内の方に戻って行く。
「お前のその顔で睨まれると怖ぇな。って、拓也たちンとこ行かねえの?」
「アレじゃ行かねえ方がいいだろ。どうせ榎木のことだから、俺らいなくても一通り見て帰ってくるだろうし」
出入り口脇に設置された簡素な長ソファーにドカッと腰を下ろす。
「資料として必要だと思ったら、しっかりメモも録ってくるだろ」
「まあ、拓也だからな」
というわけで、堂々とサボリを決め込む二人だった。
それから広瀬の言う通り、しっかり庭園を一回りし、きっちりメモを録って戻ってきた拓也に、こっぴどくお小言を言われた後藤。
「え、何で俺だけ!?」
「日頃の行いだろ」
「お前、館内でも大したことしてなかっただろ」
「じゃ、資料まとめはゴンちゃんにやってもらおうかな」
「ヒデェ!拓也ぁ…」
ムリですごめんなさいと、縋り付く後藤にクスリと笑い「ウソウソ。さ、遅くなっちゃったけど、ここ出てお昼食べ行こっか」と提案する。
「あ、藤井君、僕 写真プリントしに行こうか?」
バスに乗り込んで、拓也がデータ預かるよと申し出るが。
「あぁ、ついでがあるし、俺やっとくからいいよ」
「そ?じゃ、ちゃんとプリント代教えてね。4人で割るから」
「ん。わかった」
(こっそり撮った榎木の写真、バレるわけにはいかねぇもんな)
ポケットの中でカメラから抜き取ったSDカードを藤井はギュッと握り締めた。
次の合同授業の日。
集めた資料を元に、要点をまとめて発表に使うポスターを作成する。
「ねえ、藤井君。ここのところさ……」
「それよりこっちの方がよくねえか?……」
「おい後藤、お前字ぃヘッタクソだな」
「へ?そうか?」
完全グループ作業になっているこの授業、グループ内でも各々の役割は自然と出来、後藤と広瀬はポスターのレイアウト担当、藤井と拓也は仲良く話しながらレポートをまとめている。
「おい、榎木。後藤よりお前ポスターの方がよくねーか?」と広瀬が拓也に声をかけるが、
「え?でも僕レイアウトとか苦手だし…ゴンちゃんの方がセンスいいよ。それに、広瀬君のセンスがいいもの。そっちは二人に任せたいな」
「それだし、後藤より榎木の方が文章まとめるの上手いから、後藤こっちによこされても俺が困る」
ニッコリ笑顔の拓也と飄々とした態度の藤井でトレードを拒否する二人。
「拓也はともかく、藤井、俺に対してそれ失礼じゃねーか?間違っちゃいないけど」
「間違ってないなら、別にいいじゃねーか」
(お前らお互いがお互いに一緒に作業したいだけじゃねぇの!?)
「拓也ー藤井がひどいー」「ゴンちゃん…」とわぁわぁと騒いでいる三人を軽く睨み溜め息を吐く広瀬。
「おい、とっとと続きやるぞ後藤」
「おう」
そしてもう一度チラリと二人を盗み見て、もう一度溜め息。
「こいつらこれでも付き合ってないんだぜー」状態を合同授業の期間が終了するまで見せ付けられるというのか。
「お前も大変な位置にいるもんだな」
「は?」
ここに私立中学に進学したヤツの親友・森口がいたら、また違ったのだろうか……と、一瞬よぎったが。
(後藤より藤井の扱い上手そうだしな)
まあ、どちらにせよ、早くこの授業終わってくれないかと思う広瀬だった。
-2014.04.21 UP-
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