公認ストーカー(ただしされてる方には非公認)
熊ノ井市立熊ノ井中学校。
ここの3年某組はここ最近、休み時間の度に女子生徒を静かながらに騒がしていた。
「お前、何しにうちのクラス来てんの?」
「あ?お前には関係ねぇし」
同じマンションに住んでいながら、仲があまりよろしくない藤井と宮前が、お互い邪魔だと言わんばかりに言葉を交わす。
「関係あるよっ。俺は今の授業で分かんなかったところ榎木に教わってんだよ、邪魔!」
「こんなのも分かんねぇのかよ、アホだな」
「藤井君!」
廊下側に席を位置する拓也の机の周りには、前の席に広瀬、席は離れているが教科書とノートを持って拓也の隣の机をくっつけて勉強を教わる宮前、廊下と教室を隔てる壁の半分上は窓となっているそこからは、隣のクラスの藤井が桟に片腕で頬杖をついて顔を覗かせていた。
「そんな事言われると、僕も藤井君から化学教わりづらいなー…迷惑だったら言ってね?」
「迷惑とかないから、気にすんな」
前向きに頑張ってる人に、そんな事言わないで欲しいとの意を含み、言葉を選んで遠まわしに咎める。
学年で割と人気上位にいる藤井・拓也・広瀬と、三人には見劣りするものの、気さくな性格がウケのいい宮前がわずか10分という休み時間に集結もすれば、お年頃の女子生徒達も色めき立つというもの。
「お前ここのところ毎時間こっち来るけど、次の授業何なの?」
広瀬が言うのと同時に、拓也の耳に聞き慣れた声が話に割って入った。
「藤井ぃっ。次、音楽室!てめぇ、こっからどんだけ離れてると思ってんだ、オラ行くぞっ」
「ゴンちゃん!」
藤井のであろう教科書とリコーダーを後藤はぐいっとその胸に押し付ける。
「次音楽なの?じゃあ、早く移動しなくちゃじゃない」
「そうだよ!全く…じゃあ、邪魔したな拓也」
「うん、いってらっしゃーい…あ、藤井君!僕のクラス、次の次、理科だからいないからねー」
「知ってる」
言いながら、後藤と一緒に音楽室へと踵を返す。
(知ってるのかよ……)
拓也以外の誰もが心の中でツッコんだ。
よそのクラスの時間割を把握してるなんて普通じゃない。
「藤井君、すごいねー。僕たちのクラス、理科って知ってたよ!」
(榎木…、ストーカーされても気づかないタイプだな)
友人のもはやストーカーレベルの行為でさえ素直に感嘆する拓也に、無邪気とか純粋とかいうものを通り越して不安がよぎったことは言うまでもない。
「榎木ー気をつけろよー。そんなんじゃ、ストーカーとかに付け狙われるぞ?」
「まさか。僕なんかストーキングするモノ好きいないよー」
あっけらかんとして笑う拓也の発言に、何人のクラスメイトが心の中でストーカー希望に立候補したことか(男女問わず)。
危機感がなさすぎる。
その柔らかな物腰で自分がどれだけの人に慕われて、異性は勿論同性すらもヘタしたら性別をも乗り越えて一線を越えたいと思わせる容姿を持っているのか分かっちゃいない。
尤も容姿に関したら広瀬も人のことは言えないのだが、広瀬は自覚している分周りにはキツすぎると言っていい程態度が悪い(それすらもMっ気をそそられるというアブノーマルもいるが)。
「あ、チャイム」
そんな話をしている間に休み時間終了のチャイムが鳴り響いた。
「続き、放課後やろうか」
「いいのか?」
自分の席へ向かう宮前に拓也が声をかける。
「うん。途中になっちゃったし。放課後、図書室行こう」
ほわっと笑んで、そう申し出る拓也に宮前も素直に「サンキュー」と応じた。
こういうところが、男女問わず人気のある所以。
自分にそんな気はないけれど、やっぱり榎木を独り占めできる時間ができるのは、少し優越感あるなーと思う宮前だった。
ここの3年某組はここ最近、休み時間の度に女子生徒を静かながらに騒がしていた。
「お前、何しにうちのクラス来てんの?」
「あ?お前には関係ねぇし」
同じマンションに住んでいながら、仲があまりよろしくない藤井と宮前が、お互い邪魔だと言わんばかりに言葉を交わす。
「関係あるよっ。俺は今の授業で分かんなかったところ榎木に教わってんだよ、邪魔!」
「こんなのも分かんねぇのかよ、アホだな」
「藤井君!」
廊下側に席を位置する拓也の机の周りには、前の席に広瀬、席は離れているが教科書とノートを持って拓也の隣の机をくっつけて勉強を教わる宮前、廊下と教室を隔てる壁の半分上は窓となっているそこからは、隣のクラスの藤井が桟に片腕で頬杖をついて顔を覗かせていた。
「そんな事言われると、僕も藤井君から化学教わりづらいなー…迷惑だったら言ってね?」
「迷惑とかないから、気にすんな」
前向きに頑張ってる人に、そんな事言わないで欲しいとの意を含み、言葉を選んで遠まわしに咎める。
学年で割と人気上位にいる藤井・拓也・広瀬と、三人には見劣りするものの、気さくな性格がウケのいい宮前がわずか10分という休み時間に集結もすれば、お年頃の女子生徒達も色めき立つというもの。
「お前ここのところ毎時間こっち来るけど、次の授業何なの?」
広瀬が言うのと同時に、拓也の耳に聞き慣れた声が話に割って入った。
「藤井ぃっ。次、音楽室!てめぇ、こっからどんだけ離れてると思ってんだ、オラ行くぞっ」
「ゴンちゃん!」
藤井のであろう教科書とリコーダーを後藤はぐいっとその胸に押し付ける。
「次音楽なの?じゃあ、早く移動しなくちゃじゃない」
「そうだよ!全く…じゃあ、邪魔したな拓也」
「うん、いってらっしゃーい…あ、藤井君!僕のクラス、次の次、理科だからいないからねー」
「知ってる」
言いながら、後藤と一緒に音楽室へと踵を返す。
(知ってるのかよ……)
拓也以外の誰もが心の中でツッコんだ。
よそのクラスの時間割を把握してるなんて普通じゃない。
「藤井君、すごいねー。僕たちのクラス、理科って知ってたよ!」
(榎木…、ストーカーされても気づかないタイプだな)
友人のもはやストーカーレベルの行為でさえ素直に感嘆する拓也に、無邪気とか純粋とかいうものを通り越して不安がよぎったことは言うまでもない。
「榎木ー気をつけろよー。そんなんじゃ、ストーカーとかに付け狙われるぞ?」
「まさか。僕なんかストーキングするモノ好きいないよー」
あっけらかんとして笑う拓也の発言に、何人のクラスメイトが心の中でストーカー希望に立候補したことか(男女問わず)。
危機感がなさすぎる。
その柔らかな物腰で自分がどれだけの人に慕われて、異性は勿論同性すらもヘタしたら性別をも乗り越えて一線を越えたいと思わせる容姿を持っているのか分かっちゃいない。
尤も容姿に関したら広瀬も人のことは言えないのだが、広瀬は自覚している分周りにはキツすぎると言っていい程態度が悪い(それすらもMっ気をそそられるというアブノーマルもいるが)。
「あ、チャイム」
そんな話をしている間に休み時間終了のチャイムが鳴り響いた。
「続き、放課後やろうか」
「いいのか?」
自分の席へ向かう宮前に拓也が声をかける。
「うん。途中になっちゃったし。放課後、図書室行こう」
ほわっと笑んで、そう申し出る拓也に宮前も素直に「サンキュー」と応じた。
こういうところが、男女問わず人気のある所以。
自分にそんな気はないけれど、やっぱり榎木を独り占めできる時間ができるのは、少し優越感あるなーと思う宮前だった。
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