Triangle-Ravviare
「あんな感じで良かったですか?」
「十分十分♪有難う、コレで暫くは大丈夫かな」
友也の大学の近くのカフェで例の彼女に会って、30分程のやり取り。
『榎木…みの、りですっ。友也さんとお付き合いしてますっ』
『弟の同級生で、俺ずっと片想いしてたんだー』
「実君の名前もじってたな」
「う…だって、咄嗟に名前浮かばなかったんだもん…」
「みのりちゃん♪」
「かっ、揶揄わないでくださいー」
恥ずかしそうに照れて、グイグイと友也の胸元を押してくる拓也の手を友也はやんわりと取る。
「あながち、俺の言ったことはウソじゃないんだけどな」
「え…?」
一瞬真剣な眼差しになって言われたことを、拓也は聞き返したが、友也はいつもの笑顔になっており「腹減ったろ。折角だし、この辺案内するよ。何食いたい?」と誘う。
「えっと、じゃあ、友也さんがいつも行く、オススメのお店とか行ってみたいです」
「了解」
(……。気の…せいかな。だって、今はもういつもの友也さんだし)
取られた手を、そのまま握られ歩き始める。
「と、友也さんっ。手…っ」
「このくらいはいいだろ。完璧な彼女、やってくれるんだろ?」
「でも、もうお役御免じゃ…」
「まだまだ。熊ノ井に帰るまで、拓也君は俺の彼女」
頬を赤くして戸惑っている拓也に、友也は微笑みつつ。
「傍から見たら、俺たち立派な恋人同士。だからさ、俺に恥かかせないでくれよ」
少し屈んで、耳元でコソッと囁く。
そんな友也からパッと身体を離し、拓也は慌てて応える。
「っ、分かりましたからっ。引き続き、よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げて改まる拓也に、友也はプッと吹き出し「こちらこそ」と再び拓也の手を取り歩き出した。
大分陽が落ち始めた夕刻。
二人は次の電車の時間まで、駅前の公園で散策をすることに。
「今日は、有難うございました。お昼やお茶もご馳走になっちゃって…」
元はといえば、拓也が友也に付き合った事なのだが、それでも律儀にお礼を言う拓也。
「いいって。俺も助かったし。このくらいエスコートして当然」
歩きながら会話を楽しむ。
「でも友也さん、やっぱり慣れてますよね。女の子にモテるの、分かるなー」
彼女作ればいいのに、と言う拓也に、友也は「惚れる?」と冗談混じりに言う。
「またまたー。すぐそーやって揶揄う…」
ふと視線だけで見上げると、そこには真剣な眼差しの友也がいた。
「結構、本気なんだけど」
「え…」
「昭広より大人な分、拓也君を大事に出来る自信あるよ、俺」
今までに見た事のない真剣な表情で、そしてそれは、自分の好きな人に少し面影が似ている人。
「俺、拓也君が好きだよ。出来るなら、付き合いたい」
「あ…、」
頬に触れて少しずつ近づいてくる友也に、一瞬、藤井と重なる。
(――――藤井君…!)
「ダっダメです!!」
咄嗟に、友也の胸を両腕いっぱい伸ばして押し返した。
「これ以上は、藤井君を裏切れない!」
瞳に涙を浮かべて、それでも一生懸命友也を見つめ返して言葉を放つ。
そんな拓也の姿に、友也は苦笑混じりに微笑んだ。
「そっか。昭広は幸せモンだなぁ」
「ごめんなさい…」
拓也の目尻に浮かぶ涙を友也は人差し指でそっと拭う。
「昭広が兄貴で、俺が拓也君と同級生だったら、どうなってたかな?」
「友也さん…」
言いながらいつもの表情に戻っている友也に、拓也も安心して。
「でも、僕は、藤井君がお兄さんより、友也さんがお兄さんがいいです」
友也さんは、ずっと僕の憧れのお兄ちゃんなんですから、と拓也は微笑んでみせる。
「これからも、"長男"の"兄貴"として、僕にいろいろアドバイスを下さい」
(こんな無邪気な笑顔でそんな事言われちゃあ、これ以上は手出し出来ねぇなぁ…)
「おぅ。いつでも頼りにしていいぞ。弟よ」
「はいっ」
腕時計で時間を確認した友也は「そろそろ行くか」と、拓也の手を再び取る。
「…まだ手を繋ぐんですか?」
「当然。言っただろ?熊ノ井帰るまでは、俺の彼女」
「…はい」
クスリと笑って、包まれた手の暖かさに素直に甘んじる。
そんな拓也に愛しさを覚えつつも、
(まー、そういう意味で付き合えたら最高だけど、どちらかといえば「小動物を愛でるような愛しさ」だな、コレは)
と、気持ちを切り替える。
「昭広に飽きたら、いつでも俺のところ来いよー拓也君♪」
「とっ友也さん!!」
顔を赤くして何言ってるんですか!!と言う拓也の頭をクシャリと撫でる。
「早く彼女作って、そういうことはその彼女さんにして下さいっ」
「はいはい」
傍から見たらじゃれ合いにしか見えないやりとりをしながら、二人は電車に乗り込んだ。
「十分十分♪有難う、コレで暫くは大丈夫かな」
友也の大学の近くのカフェで例の彼女に会って、30分程のやり取り。
『榎木…みの、りですっ。友也さんとお付き合いしてますっ』
『弟の同級生で、俺ずっと片想いしてたんだー』
「実君の名前もじってたな」
「う…だって、咄嗟に名前浮かばなかったんだもん…」
「みのりちゃん♪」
「かっ、揶揄わないでくださいー」
恥ずかしそうに照れて、グイグイと友也の胸元を押してくる拓也の手を友也はやんわりと取る。
「あながち、俺の言ったことはウソじゃないんだけどな」
「え…?」
一瞬真剣な眼差しになって言われたことを、拓也は聞き返したが、友也はいつもの笑顔になっており「腹減ったろ。折角だし、この辺案内するよ。何食いたい?」と誘う。
「えっと、じゃあ、友也さんがいつも行く、オススメのお店とか行ってみたいです」
「了解」
(……。気の…せいかな。だって、今はもういつもの友也さんだし)
取られた手を、そのまま握られ歩き始める。
「と、友也さんっ。手…っ」
「このくらいはいいだろ。完璧な彼女、やってくれるんだろ?」
「でも、もうお役御免じゃ…」
「まだまだ。熊ノ井に帰るまで、拓也君は俺の彼女」
頬を赤くして戸惑っている拓也に、友也は微笑みつつ。
「傍から見たら、俺たち立派な恋人同士。だからさ、俺に恥かかせないでくれよ」
少し屈んで、耳元でコソッと囁く。
そんな友也からパッと身体を離し、拓也は慌てて応える。
「っ、分かりましたからっ。引き続き、よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げて改まる拓也に、友也はプッと吹き出し「こちらこそ」と再び拓也の手を取り歩き出した。
大分陽が落ち始めた夕刻。
二人は次の電車の時間まで、駅前の公園で散策をすることに。
「今日は、有難うございました。お昼やお茶もご馳走になっちゃって…」
元はといえば、拓也が友也に付き合った事なのだが、それでも律儀にお礼を言う拓也。
「いいって。俺も助かったし。このくらいエスコートして当然」
歩きながら会話を楽しむ。
「でも友也さん、やっぱり慣れてますよね。女の子にモテるの、分かるなー」
彼女作ればいいのに、と言う拓也に、友也は「惚れる?」と冗談混じりに言う。
「またまたー。すぐそーやって揶揄う…」
ふと視線だけで見上げると、そこには真剣な眼差しの友也がいた。
「結構、本気なんだけど」
「え…」
「昭広より大人な分、拓也君を大事に出来る自信あるよ、俺」
今までに見た事のない真剣な表情で、そしてそれは、自分の好きな人に少し面影が似ている人。
「俺、拓也君が好きだよ。出来るなら、付き合いたい」
「あ…、」
頬に触れて少しずつ近づいてくる友也に、一瞬、藤井と重なる。
(――――藤井君…!)
「ダっダメです!!」
咄嗟に、友也の胸を両腕いっぱい伸ばして押し返した。
「これ以上は、藤井君を裏切れない!」
瞳に涙を浮かべて、それでも一生懸命友也を見つめ返して言葉を放つ。
そんな拓也の姿に、友也は苦笑混じりに微笑んだ。
「そっか。昭広は幸せモンだなぁ」
「ごめんなさい…」
拓也の目尻に浮かぶ涙を友也は人差し指でそっと拭う。
「昭広が兄貴で、俺が拓也君と同級生だったら、どうなってたかな?」
「友也さん…」
言いながらいつもの表情に戻っている友也に、拓也も安心して。
「でも、僕は、藤井君がお兄さんより、友也さんがお兄さんがいいです」
友也さんは、ずっと僕の憧れのお兄ちゃんなんですから、と拓也は微笑んでみせる。
「これからも、"長男"の"兄貴"として、僕にいろいろアドバイスを下さい」
(こんな無邪気な笑顔でそんな事言われちゃあ、これ以上は手出し出来ねぇなぁ…)
「おぅ。いつでも頼りにしていいぞ。弟よ」
「はいっ」
腕時計で時間を確認した友也は「そろそろ行くか」と、拓也の手を再び取る。
「…まだ手を繋ぐんですか?」
「当然。言っただろ?熊ノ井帰るまでは、俺の彼女」
「…はい」
クスリと笑って、包まれた手の暖かさに素直に甘んじる。
そんな拓也に愛しさを覚えつつも、
(まー、そういう意味で付き合えたら最高だけど、どちらかといえば「小動物を愛でるような愛しさ」だな、コレは)
と、気持ちを切り替える。
「昭広に飽きたら、いつでも俺のところ来いよー拓也君♪」
「とっ友也さん!!」
顔を赤くして何言ってるんですか!!と言う拓也の頭をクシャリと撫でる。
「早く彼女作って、そういうことはその彼女さんにして下さいっ」
「はいはい」
傍から見たらじゃれ合いにしか見えないやりとりをしながら、二人は電車に乗り込んだ。