がんばれ末っ子六番目!

「バッカねー。だから言ってるでしょぉ?邪魔するなって」

リビングで一加ちゃんを捕まえて、事の一部始終を伝えたらそう言われた。

「あの二人と一緒にいると、少なからず三度はそういう目に遭うわよ」

三度…それは言いすぎではないかと思ったけど、たった30分もしない間にあの空気…あながち大袈裟ではないってことか?

「学校では大丈夫なんですかね、あの二人…」
「さあ?知らなーい」
「昭広兄ちゃんはともかく、TPOを弁える拓也お兄ちゃんなら心配いらないかと思うけど…」
「でも、それ以上にお兄様は天然だからね」
「…………」
思わず苦笑が漏れる。
天然と周りをさほど気にしない人のコンビネーション…うわぁ。

「ところで、そのゲーム私もやりたい」
一加ちゃんがリビングで一緒にやろうと提案するも。
「あ、でも、ハードもソフトも男子部屋ですよ」
「このバカタレ。何で持って出てこないのよ。責任持って取り行きなさいよ」
だって、まさかリビングでゲームすることになるとは思っていなかったもん。
「イヤです!今はあの部屋行きたくないっ」
今行ったら絶対馬に蹴られる!! そんな恐ろしいこと自らやってたまるかっ。

「うるさい。姉命令。今すぐ取ってきて」
「うぅぅ…」

有無を言わせない一加ちゃんのこの横暴さは、小さい頃から変わらない。
一加ちゃんの数々の行動で、どれだけ過去の僕がとばっちり食ったか…。

仕方なしに男子部屋まで戻り、ドアを控えめにノックしてみる。

「昭広兄ちゃーん?一加ちゃんがゲームやりたいって、持ってってもいい?」

カチャリとドアを静かに開けて、…やっぱり後悔したさ、あぁ。

「ダメ、今使用中」
「マっマーぼ…っ」

確かに二人はゲームをしていた。
昭広兄ちゃんお得意の落ちゲー(こんてにゅうナシでさたん様までイケる腕前だからね)。
あぐらをかいた昭広兄ちゃんの脚の中に、拓也お兄ちゃんが座っている形で。
拓也お兄ちゃんの身体の前でどうやら昭広兄ちゃんの脚がガッチリ組まれているのと、コントローラーを持つ両腕も拓也お兄ちゃんの背後から腰周りで回っている為、身動きがとれないらしい。

「だっ、だから嫌だって言ったのに離してぇぇぇっ」
「まさか部屋に戻ってくるとは思わなかったしな。榎木、どんどん積まれてってるぞ」
「ゲームどころじゃないよっ」

平然とそのままの態勢で続ける昭広兄ちゃんに、赤面涙目で抗う拓也お兄ちゃんに思わず同情しつつ、何も見なかったことにしてドアをそっと閉める。

人に対して良く言えばクール、悪く言えば無関心の昭広兄ちゃんが、ああいうことをするってことは、やっぱり拓也お兄ちゃんは特別ってことで。
でも、周りを気にしない性質が、拓也お兄ちゃんを時々困らせてるんだろうな、アレは。
まあ、自分の家の中だから余計なのかもしれないけど(外ではもう少し自重していると信じたい)。
僕も、いつか大事な人ができたら、もう少し相手を思いやった行動を心掛けたいな、うん。

「一加ちゃん、お兄ちゃんたちゲームやってたからムリですよ」
「へー、拓也お兄様が珍しいわね。じゃ仕方ないかー」

サラッとそれだけ言い、一加ちゃんは女子部屋へ。
あまりのあっけなさに、そんなに軽く済まされるんなら、僕の今の行動って意味あったの ねぇ?
末っ子って、こんなに理不尽な立場なの ねぇ?


「あ、マンガくらい持って出てくればよかった…」

暫くはもう絶対入りたくない自室の方を見遣り、リビングにしか居場所のなくなった僕は、暇を潰すべく見たくもないテレビのスイッチを点けるのでした……。


-2014.01.07 UP-


(蛇足のオマケ/当時、リク主様へ寄せたメッセージに、お膝抱っこの流れを書いたところ、ぜひ本文かあとがきにおまけとして載せて欲しいと有難いお言葉を頂けたので転載してました)

藤井 「折角だし、何かやってみるか?」
拓也 「えー、んじゃ、藤井君の得意なヤツで、僕にもできそうなの」
藤井 「じゃ、落ちゲーでもすっか。パズルゲーム」
拓也 「うん。…って、どこ座ってんの!?」
藤井 「気にすんな」
拓也 「気にするよ!マー坊や一加ちゃん来たらどうすんの!」
藤井 「大丈夫大丈夫(多分)。はい、好きなキャラ選んでボタン押す」
拓也 「嫌だー、その自信と根拠は一体どこから!?」
藤井 「押し倒されるのと膝抱きとどっちがいい?」
拓也 「その二択の意味が分からないからっ」
藤井 「じゃあ押し倒」
拓也 「膝抱きで。決定、このボタンでいいんだね」
藤井 「じゃ、始めるぞー」
拓也 「うー…」
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