がんばれ末っ子六番目!
(昭広兄ちゃん、いるかなー)
友達から借りたゲームのソフトを持って、喜々と帰宅。
未だ大学生一人、高校生二人と、小学生二人がいる我が家の家計は火の車。
上の二人のお兄ちゃんたちとお金を出し合ってゲームソフトを買うこともあるけれど、それも失敗したくないから、吟味するべく最初は大体こうして友達から借りて試しプレイ。
(楽しかったら、僕と昭広兄ちゃんのお年玉と、あわよくば友也兄ちゃんのバイト代も出し合って買えるといいなー♪)
そんな事を考えながら、玄関のドアを開けて、そのまま男兄弟部屋へ直行。
「ただいまー、昭広兄ちゃん、いますかー? あ、」
「お帰りなさい、マー坊」
「拓也お兄ちゃん!いらっしゃいです」
部屋にいたのは下の兄貴ではなく、そのコイビトの拓也お兄ちゃんだった。
拓也お兄ちゃんは「お邪魔してます」と、年下の僕にも丁寧に挨拶をしてくれる、とても気さくで優しいお兄ちゃん。
ガサツな友也兄ちゃんや何を考えてるのか分からない(クールと言う人もいるが、僕は違うと思う)な昭広兄ちゃんとは全然違うタイプの人だ。
僕が4歳の頃から拓也お兄ちゃんと接しているけど、あの頃からずっと大好き。
昔から一加ちゃんと一緒に、昭広兄ちゃんに怒られたりケンカしたりすると、榎木家へ行って拓也お兄ちゃんになぐさめてもらったり、いろんな事を教えてもらったりと、お世話にもなっている。
「昭広兄ちゃんは?」
お客様をおいて部屋にいるべく人間がいないので聞いてみる。
「藤井君なら、今お茶を淹れにキッチンに…あ、」
「お、マー坊、帰ったのか」
丁度その時、マグカップ2つを載せたトレイを持って、昭広兄ちゃんが部屋に来た。
「うん、ただいま。あ、コレ、友達から借りたんだけど…今はやらないですよねー?」
手にしていたソフトを見せてみるけど、拓也お兄ちゃんいるし、今日は保留かな。
基本ゲーム機は、ここの部屋。
おそらく僕は、この部屋を追い出されることは、いつもの事。
一加ちゃんからの訓え。二人一緒にいる時は、邪魔しない。
(でも、一加ちゃんだって、拓也お兄ちゃんに用事がある時はお構いなしに容赦なく、この部屋に乱入している事が多いと思うんだけど)
「あーまあ、そうだな」
昭広兄ちゃんがそう言うと、拓也お兄ちゃんがすかさず言った。
「何で?折角だしやればいいじゃん。マー坊もやりたいでしょ?」
「いいんですか?」
え、そりゃ、ずっとプレイしてみたくてやっと借りてきたんだもん、やりたいのは山々だけど。
「僕も見てみたいな。ね、藤井君」
ねっ、とニッコリ笑って昭広兄ちゃんを見る拓也お兄ちゃん。
僕は知ってる。昭広兄ちゃんは、この笑顔に、弱い。
「じゃーまー、少しだけな」
表情はそんなに変わらないけど、それでも少し口角が上がってやっぱり嬉しそうなのは、ゲームができるからじゃなくて、拓也お兄ちゃんのその笑顔が見れたから。
テレビに片付けてあったゲーム機の配線を繋いで、ソフトをセットする。
「マー坊、30分くらいだぞ」
「分かってるよ、僕だってそんなにヤボじゃアリマセン」
コソッと兄弟でヒソヒソ話。
きっと拓也お兄ちゃんのことだから、僕に気遣っての提案。
昭広兄ちゃんもそれが分かっているから素直に応じて、でもやっぱり僕はお邪魔だから、短時間で撤収の妥協案。
「拓也お兄ちゃんは、普段ゲームやらないんですか?」
「僕?うん、やらないなー。実はお向かいの太一とよくやってるけどね」
木村さんちと僕んちで、違うハード機?買ったらしくて、成一さんも一緒になってよく行き来してるよ、と昭広兄ちゃんの隣にちょこんと座ってテレビ画面を見ながら言う拓也お兄ちゃん。
「あぁ、SANY製とMINTENDOH製…」
「成一も!?」
僕の言葉と同時に昭広兄ちゃんが声を上げた。
「あ…大丈夫だから!初めての時以外、それ以降断じてないから!二人になることもそうそうないし…」
両手を顔の前でブンブン振り、拓也お兄ちゃんは慌てて言う。
ん?二人と成一さん、何かあるのかな?
「別に疑ってたりとかじゃなくて、心配なだけだよ」
「それは…安心していいよ…」
顔を赤くして俯く拓也お兄ちゃんに、言葉とは裏腹に態度はちょっと素っ気ない感じを装ってプレイを続ける昭広兄ちゃん。
あうあうあう…この空気の中にいる僕はとてつもなくいたたまれない…。
やっぱりゲームは後にすれば良かったよぅ!!
「ただいまー」
(!!)
いっ、一加ちゃーん!!
ナイスタイミングで帰ってきた一加ちゃんが、今の僕には救いの女神に感じる。
「あ、一加ちゃん帰ってきた!昭広兄ちゃん、僕一加ちゃんに用事あるから、ゲームはまた後にしていい?」
「お?おう。んじゃ、また後でな」
片付けようとしたけど、やっとくから行けよと言ってくれたので、お言葉に甘えて部屋を出る。
パタンとドアを閉めて、はぁ――――と思わず溜め息を吐いた。
友達から借りたゲームのソフトを持って、喜々と帰宅。
未だ大学生一人、高校生二人と、小学生二人がいる我が家の家計は火の車。
上の二人のお兄ちゃんたちとお金を出し合ってゲームソフトを買うこともあるけれど、それも失敗したくないから、吟味するべく最初は大体こうして友達から借りて試しプレイ。
(楽しかったら、僕と昭広兄ちゃんのお年玉と、あわよくば友也兄ちゃんのバイト代も出し合って買えるといいなー♪)
そんな事を考えながら、玄関のドアを開けて、そのまま男兄弟部屋へ直行。
「ただいまー、昭広兄ちゃん、いますかー? あ、」
「お帰りなさい、マー坊」
「拓也お兄ちゃん!いらっしゃいです」
部屋にいたのは下の兄貴ではなく、そのコイビトの拓也お兄ちゃんだった。
拓也お兄ちゃんは「お邪魔してます」と、年下の僕にも丁寧に挨拶をしてくれる、とても気さくで優しいお兄ちゃん。
ガサツな友也兄ちゃんや何を考えてるのか分からない(クールと言う人もいるが、僕は違うと思う)な昭広兄ちゃんとは全然違うタイプの人だ。
僕が4歳の頃から拓也お兄ちゃんと接しているけど、あの頃からずっと大好き。
昔から一加ちゃんと一緒に、昭広兄ちゃんに怒られたりケンカしたりすると、榎木家へ行って拓也お兄ちゃんになぐさめてもらったり、いろんな事を教えてもらったりと、お世話にもなっている。
「昭広兄ちゃんは?」
お客様をおいて部屋にいるべく人間がいないので聞いてみる。
「藤井君なら、今お茶を淹れにキッチンに…あ、」
「お、マー坊、帰ったのか」
丁度その時、マグカップ2つを載せたトレイを持って、昭広兄ちゃんが部屋に来た。
「うん、ただいま。あ、コレ、友達から借りたんだけど…今はやらないですよねー?」
手にしていたソフトを見せてみるけど、拓也お兄ちゃんいるし、今日は保留かな。
基本ゲーム機は、ここの部屋。
おそらく僕は、この部屋を追い出されることは、いつもの事。
一加ちゃんからの訓え。二人一緒にいる時は、邪魔しない。
(でも、一加ちゃんだって、拓也お兄ちゃんに用事がある時はお構いなしに容赦なく、この部屋に乱入している事が多いと思うんだけど)
「あーまあ、そうだな」
昭広兄ちゃんがそう言うと、拓也お兄ちゃんがすかさず言った。
「何で?折角だしやればいいじゃん。マー坊もやりたいでしょ?」
「いいんですか?」
え、そりゃ、ずっとプレイしてみたくてやっと借りてきたんだもん、やりたいのは山々だけど。
「僕も見てみたいな。ね、藤井君」
ねっ、とニッコリ笑って昭広兄ちゃんを見る拓也お兄ちゃん。
僕は知ってる。昭広兄ちゃんは、この笑顔に、弱い。
「じゃーまー、少しだけな」
表情はそんなに変わらないけど、それでも少し口角が上がってやっぱり嬉しそうなのは、ゲームができるからじゃなくて、拓也お兄ちゃんのその笑顔が見れたから。
テレビに片付けてあったゲーム機の配線を繋いで、ソフトをセットする。
「マー坊、30分くらいだぞ」
「分かってるよ、僕だってそんなにヤボじゃアリマセン」
コソッと兄弟でヒソヒソ話。
きっと拓也お兄ちゃんのことだから、僕に気遣っての提案。
昭広兄ちゃんもそれが分かっているから素直に応じて、でもやっぱり僕はお邪魔だから、短時間で撤収の妥協案。
「拓也お兄ちゃんは、普段ゲームやらないんですか?」
「僕?うん、やらないなー。実はお向かいの太一とよくやってるけどね」
木村さんちと僕んちで、違うハード機?買ったらしくて、成一さんも一緒になってよく行き来してるよ、と昭広兄ちゃんの隣にちょこんと座ってテレビ画面を見ながら言う拓也お兄ちゃん。
「あぁ、SANY製とMINTENDOH製…」
「成一も!?」
僕の言葉と同時に昭広兄ちゃんが声を上げた。
「あ…大丈夫だから!初めての時以外、それ以降断じてないから!二人になることもそうそうないし…」
両手を顔の前でブンブン振り、拓也お兄ちゃんは慌てて言う。
ん?二人と成一さん、何かあるのかな?
「別に疑ってたりとかじゃなくて、心配なだけだよ」
「それは…安心していいよ…」
顔を赤くして俯く拓也お兄ちゃんに、言葉とは裏腹に態度はちょっと素っ気ない感じを装ってプレイを続ける昭広兄ちゃん。
あうあうあう…この空気の中にいる僕はとてつもなくいたたまれない…。
やっぱりゲームは後にすれば良かったよぅ!!
「ただいまー」
(!!)
いっ、一加ちゃーん!!
ナイスタイミングで帰ってきた一加ちゃんが、今の僕には救いの女神に感じる。
「あ、一加ちゃん帰ってきた!昭広兄ちゃん、僕一加ちゃんに用事あるから、ゲームはまた後にしていい?」
「お?おう。んじゃ、また後でな」
片付けようとしたけど、やっとくから行けよと言ってくれたので、お言葉に甘えて部屋を出る。
パタンとドアを閉めて、はぁ――――と思わず溜め息を吐いた。
1/2ページ