Trick or Treat!
「兄ちゃん兄ちゃんにーちゃぁぁぁん!!」
「ただいま」を言う前に人の事を連呼して家の中へ入って来たかと思ったら、そのままの勢いで後ろから抱きついてきた弟に、兄は持っていた包丁を落としそうになった。
「実っ危ないっ!そして『ただいま』は!?」
「ただいまっ。コレさんかしたいっ」
「はい、お帰り」と、挨拶を返しながら実の言う『コレ』とやらについて書いてあるチラシを買ってきてもらった醤油と共に拓也は受け取った。
「商店街主催のハロウィン仮装行列ぅ?」
「あぁ、一加とマー坊もそんな事言ってたな」
「へー、紅南学区の商店街はそんな事やるんだー」
次の日、学校での休み時間。
何となく話の流れが時期的な事もありハロウィンの話になり、ハロウィンと言えば…と、昨日実から見せられたチラシを思い出した。
「今年が初めての催しだよね?小学生までが対象で仮装して商店街練り歩くって」
「そうだな、初めて聞くしな、そんなイベント」
丁度その時、ポケットの中の拓也のケータイにバイブが走った。
「あ、ゴンちゃんから返信来た。この事メールで訊いてみたんだよね」
ゴンこと後藤の家は酒屋さん。
まさに主催する商店街の中で生活をしているご家庭だ。
『今年からの試みでよ。地域の子供たちの健全な育成と交流がウンタラカンタラで、とにかくウチも売り物の駄菓子提供するぜ。ヒロも参加するし、実もするだろ?…藤井弟妹も(笑)』
「ウンタラカンタラって何だよ」
「ゴンちゃんらしいよね」
見る?と言われ、一緒にケータイ画面を覗き込み文面を読んだ藤井は呆れて言い、拓也はクスリと笑う。
「まー、今は他人との交流ってなかなか出来ない世の中だから、こういうのって周りの大人がしっかり子供たちと面識作って関わってる感じがしていいな」
個人情報とか、プライバシーとか、ストーカーとか、今は小さい子供でもましてや性別も関係なく犯罪に巻き込まれる世の中。
そういうご時世だからこそ、地域との密な連携が必要なのかもしれない。
布瀬のその言葉に、他のメンツも「そうだな」と言う。
「うん。僕たちも、子供の頃からよくお世話になったよね、商店街の人たちに」
特に拓也は、まだ実がよちよち歩きだった頃からその手を引いて買い物をしていた。
そんな幼い兄弟に、商店街の人たちは暖かく見守り声をかけてくれていた。
それは両親が忙しい藤井兄弟にとっても同じで、今も尚、通りかかったり買い物に行けば「元気かー?」「大きくなったなー」と声をかけてくれる。
「みんないい人たちばかりだよ、商店街の人たちは。色々まけてくれるし」
お財布にも優しいーと目を閉じ頬に手を当ててほんわかと呟き主婦精神を垣間見せる拓也に、一同は「それはお前の顔と人柄だよ」と心の中でツッコミを入れたとか。
「一加ちゃんは何の仮装するの?」
放課後、藤井宅へお邪魔すると、一加がいたので拓也は聞いてみた。
「それは勿論、魔女よお兄様ー」
女の子なら一度は憧れるわよねー、あのコスチューム!と、両手を組んでうっとりとする様は普段オマセな一加もまだまだ無邪気なもので。
「藤井君が作るの?」
拓也が言うのと同時に、飲んでいたジュースを吹き出す藤井。
「うわっ、お兄ちゃん汚いっ」
「だっ大丈夫?藤井君」
「おっお前がっヘンな事、言うからだろっ」
ゲホッとむせながら反論をする藤井に、一加が持って来たタオルを手渡す。
「そうよお兄様、昭広兄ちゃんがお裁縫なんてするわけないじゃない。明美姉ちゃんに作ってもらう…実ちゃんは何着るの?」
「えー、何だろ…何考えてんのかな、実のヤツ」
昨日の今日で、まだ何も言って来ていないな…と思っていると、今度は藤井が聞いてきた。
「お前が作るのか?」
「え?流石にムリじゃない?」
「ただいま」を言う前に人の事を連呼して家の中へ入って来たかと思ったら、そのままの勢いで後ろから抱きついてきた弟に、兄は持っていた包丁を落としそうになった。
「実っ危ないっ!そして『ただいま』は!?」
「ただいまっ。コレさんかしたいっ」
「はい、お帰り」と、挨拶を返しながら実の言う『コレ』とやらについて書いてあるチラシを買ってきてもらった醤油と共に拓也は受け取った。
「商店街主催のハロウィン仮装行列ぅ?」
「あぁ、一加とマー坊もそんな事言ってたな」
「へー、紅南学区の商店街はそんな事やるんだー」
次の日、学校での休み時間。
何となく話の流れが時期的な事もありハロウィンの話になり、ハロウィンと言えば…と、昨日実から見せられたチラシを思い出した。
「今年が初めての催しだよね?小学生までが対象で仮装して商店街練り歩くって」
「そうだな、初めて聞くしな、そんなイベント」
丁度その時、ポケットの中の拓也のケータイにバイブが走った。
「あ、ゴンちゃんから返信来た。この事メールで訊いてみたんだよね」
ゴンこと後藤の家は酒屋さん。
まさに主催する商店街の中で生活をしているご家庭だ。
『今年からの試みでよ。地域の子供たちの健全な育成と交流がウンタラカンタラで、とにかくウチも売り物の駄菓子提供するぜ。ヒロも参加するし、実もするだろ?…藤井弟妹も(笑)』
「ウンタラカンタラって何だよ」
「ゴンちゃんらしいよね」
見る?と言われ、一緒にケータイ画面を覗き込み文面を読んだ藤井は呆れて言い、拓也はクスリと笑う。
「まー、今は他人との交流ってなかなか出来ない世の中だから、こういうのって周りの大人がしっかり子供たちと面識作って関わってる感じがしていいな」
個人情報とか、プライバシーとか、ストーカーとか、今は小さい子供でもましてや性別も関係なく犯罪に巻き込まれる世の中。
そういうご時世だからこそ、地域との密な連携が必要なのかもしれない。
布瀬のその言葉に、他のメンツも「そうだな」と言う。
「うん。僕たちも、子供の頃からよくお世話になったよね、商店街の人たちに」
特に拓也は、まだ実がよちよち歩きだった頃からその手を引いて買い物をしていた。
そんな幼い兄弟に、商店街の人たちは暖かく見守り声をかけてくれていた。
それは両親が忙しい藤井兄弟にとっても同じで、今も尚、通りかかったり買い物に行けば「元気かー?」「大きくなったなー」と声をかけてくれる。
「みんないい人たちばかりだよ、商店街の人たちは。色々まけてくれるし」
お財布にも優しいーと目を閉じ頬に手を当ててほんわかと呟き主婦精神を垣間見せる拓也に、一同は「それはお前の顔と人柄だよ」と心の中でツッコミを入れたとか。
「一加ちゃんは何の仮装するの?」
放課後、藤井宅へお邪魔すると、一加がいたので拓也は聞いてみた。
「それは勿論、魔女よお兄様ー」
女の子なら一度は憧れるわよねー、あのコスチューム!と、両手を組んでうっとりとする様は普段オマセな一加もまだまだ無邪気なもので。
「藤井君が作るの?」
拓也が言うのと同時に、飲んでいたジュースを吹き出す藤井。
「うわっ、お兄ちゃん汚いっ」
「だっ大丈夫?藤井君」
「おっお前がっヘンな事、言うからだろっ」
ゲホッとむせながら反論をする藤井に、一加が持って来たタオルを手渡す。
「そうよお兄様、昭広兄ちゃんがお裁縫なんてするわけないじゃない。明美姉ちゃんに作ってもらう…実ちゃんは何着るの?」
「えー、何だろ…何考えてんのかな、実のヤツ」
昨日の今日で、まだ何も言って来ていないな…と思っていると、今度は藤井が聞いてきた。
「お前が作るのか?」
「え?流石にムリじゃない?」
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