パラレルなボクら。
「バッカじゃないの?勝算もなしに、ケンカなんかに参加するわけないじゃない」
パンパンと汚れた両手を叩き払い、腰を抜かしている不良たちを上から見据える。
「僕の家はね、文武両道がモットーなの。自分の身は自分で護らなきゃね。あ、でも、この事は内密に。ヘンに噂になって絡まれるのも面倒なので。絡んでくるヤツらが出てきたら、真っ先に君たち探し出すから」
タクの腕っ節はちょっとしたものだったが、それは学校で体術の授業を共にした事のあるクラスメイトやごく近しい者にしか知られていない。
その上で、普段の物腰が柔らかい分、油断する馬鹿な輩は多い。
アキとそんなタクがタッグを組んだら、最強になるのは当たり前だった。
「チックショー、覚えてろよ!!」
バタバタと走り去る不良たちの背中に「お約束の常套句」と呟いて、タクはアキに向き直る。
「君にしては、手こずってたんじゃない?」
「うるせー、考え事してたんだよ」
「ふーん…でも、コレで貸し1」
「なっ、助けてくれなんて言ってねぇし!」
冗談じゃねぇと、アキは喚く。
「まぁ、確かに僕の参戦がなくても、最終的には一人で何とかしてただろうけど…時短にはなったでしょ?」
さっきまで殴り合いのケンカをしていたとは思えない程の、爽やかな笑顔。
「…チッ、んだよ、何が希望だよ」
そんなアキにタクはニコッと笑う。
「明日、一限足りとも休まず授業に出席する事!」
そう言い放つタクに、アキは心底嫌そうな顔をした。
「たったコレだけの事に、一日拘束する気かよ!」
「何言ってるの!学生の本分でしょ!!」
すっかり優等生の顔に戻り、一喝するタク。
「冗談じゃねーよ。大体お前も、そこまでして教師に媚び売りてぇのかよ」
「は?」
何言ってるの?と言う顔でアキの顔を見つめる。
そんな視線に、アキは一瞬ドキリとする。
「…俺の事、教師に頼まれてるって」
「あぁ、まぁ、頼まれてるのは事実だけど…それ以上に…」
口を噤んで、下を向く。
「何だよ、はっきり言えよ」
らしくないはっきりしない態度に、アキは先を促す。
「…っ、僕がアキと一緒にいたいから…っ」
言いながらカァーっと顔を赤くして、尚も俯く。
「…………アキ?」
何の反応を示さないアキを不審に思い顔を上げると、そこには…。
「…………っ」
片手を口元に当てて、タクと同じように顔を赤くしているアキがいた。
「そ、それって…どういう…?」
「えっ!?」
「こういう…?」
恐る恐る手を伸ばして、アキはキュッとタクを抱きしめる。
「う、うん…」
タクは恥ずかしさから顔を隠すように、アキの胸元に額を付けて頭を埋めた。
「じゃー明日、全部の授業出たら、褒美くれる?」
「え?」
何?とアキの胸元から顔を上げると、ニカッと笑い、耳元に囁く。
「タクのファーストキス」
「昭広にーちゃーん!朝ですよー!!」
突然の大声に藤井はガバッと跳ね起きた。
声の方向に目をやると、部屋の入口には見慣れた妹と弟の姿。
「あ、オナラブーコとバカ犬」
「なっ!! それを言うならクリスティーヌでしょー!昭広兄ちゃんのバカー!!」
「昭広兄ちゃん、まだきのうのオママゴトやってるんですか?」
そう、それは、昨日の出来事。
クラスメイトの兄弟を巻き込んで、お誕生会と称したオママゴトをやらされたのだった。
「うるせー。オナラブーコのせいで、妙な夢見ちゃったじゃねーか」
ガシガシと頭を掻きベッドから下りて洗面所に向かう。
それにちびっ子二人もトテトテとついて来る。
「夢?どんな夢見たの?」
「は?どんなって……」
一加の問い掛けに思い出す、最後の台詞――
『タクのファーストキス』
急速に熱を集める頬を誤魔化す為に、高速で顔を洗う。
「ちょ、お兄ちゃん、水飛んでるっ冷たっ」
「うるせー!あっち行けーっ!!」
「大変ですー!昭広兄ちゃんがハンコウキですー!!」
「何ぃ!昭広っお赤飯だな!!」
マー坊の声を聞きつけ、トースト片手に友也が洗面台にやって来た。
「バッカ、そんなんじゃねーよ!」
ドタドタと大騒ぎしながらリビングへ行くと
「昭広、家庭内暴力だけは勘弁してね」
「悩みがあるなら父に言えよ」
と息子の成長に涙をちょちょ切らせる両親に
「朝からバカ言ってないで、とっとと食べちゃってよ」
「ホント、朝から煩い…」
と呆れる姉二人。
藤井家の朝はとても賑やかだった。
「藤井君!昨日は楽しかったねー」
学校へ着くと、拓也が声をかけてきた。
「えっ、えの、きっ」
「? おはよー」
ニコリと笑って、昨日の話題を振る。
「き、昨日の事は忘れろ!」
「…は?何で?」
キョトンとする拓也にしどろもどろな藤井。
「何でって…」
意識したくなくても、意識してしまう夢で抱きしめた拓也の身体、そして唇。
「とにかく!今日一日俺の半径1mに近づくな!!」
「えぇー!?」
「頼む。今日だけ。お願い」
「ふ、藤井君?」
ジリジリと後ずさって「じゃっ」と森口の方に走り去って行く藤井に、拓也は困惑せざるを得ない。
(あーもー、今日一日距離置けば大丈夫だろうか、いや、気をしっかり持て俺っ!!)
そう思う反面、
(どうせ夢なら、チューまでしとくんだった…)
とも思ってしまったとか。
-2013.10.18 UP-
(補足)
当時、正確なリクエストテーマは「高一・不良×優等生な藤拓」+「ほんのり甘めもあってよし」+「一加ちゃんのお誕生会後の夢オチ」と頂いておりました。
後半の課題につき、現実に戻った世界は、小6の藤井君&拓也です。
あと、藤井くんの夢なのにタクの動向が分かるのは何故?となりますが、パロなので!細かい事はスルーでお願いします。
パンパンと汚れた両手を叩き払い、腰を抜かしている不良たちを上から見据える。
「僕の家はね、文武両道がモットーなの。自分の身は自分で護らなきゃね。あ、でも、この事は内密に。ヘンに噂になって絡まれるのも面倒なので。絡んでくるヤツらが出てきたら、真っ先に君たち探し出すから」
タクの腕っ節はちょっとしたものだったが、それは学校で体術の授業を共にした事のあるクラスメイトやごく近しい者にしか知られていない。
その上で、普段の物腰が柔らかい分、油断する馬鹿な輩は多い。
アキとそんなタクがタッグを組んだら、最強になるのは当たり前だった。
「チックショー、覚えてろよ!!」
バタバタと走り去る不良たちの背中に「お約束の常套句」と呟いて、タクはアキに向き直る。
「君にしては、手こずってたんじゃない?」
「うるせー、考え事してたんだよ」
「ふーん…でも、コレで貸し1」
「なっ、助けてくれなんて言ってねぇし!」
冗談じゃねぇと、アキは喚く。
「まぁ、確かに僕の参戦がなくても、最終的には一人で何とかしてただろうけど…時短にはなったでしょ?」
さっきまで殴り合いのケンカをしていたとは思えない程の、爽やかな笑顔。
「…チッ、んだよ、何が希望だよ」
そんなアキにタクはニコッと笑う。
「明日、一限足りとも休まず授業に出席する事!」
そう言い放つタクに、アキは心底嫌そうな顔をした。
「たったコレだけの事に、一日拘束する気かよ!」
「何言ってるの!学生の本分でしょ!!」
すっかり優等生の顔に戻り、一喝するタク。
「冗談じゃねーよ。大体お前も、そこまでして教師に媚び売りてぇのかよ」
「は?」
何言ってるの?と言う顔でアキの顔を見つめる。
そんな視線に、アキは一瞬ドキリとする。
「…俺の事、教師に頼まれてるって」
「あぁ、まぁ、頼まれてるのは事実だけど…それ以上に…」
口を噤んで、下を向く。
「何だよ、はっきり言えよ」
らしくないはっきりしない態度に、アキは先を促す。
「…っ、僕がアキと一緒にいたいから…っ」
言いながらカァーっと顔を赤くして、尚も俯く。
「…………アキ?」
何の反応を示さないアキを不審に思い顔を上げると、そこには…。
「…………っ」
片手を口元に当てて、タクと同じように顔を赤くしているアキがいた。
「そ、それって…どういう…?」
「えっ!?」
「こういう…?」
恐る恐る手を伸ばして、アキはキュッとタクを抱きしめる。
「う、うん…」
タクは恥ずかしさから顔を隠すように、アキの胸元に額を付けて頭を埋めた。
「じゃー明日、全部の授業出たら、褒美くれる?」
「え?」
何?とアキの胸元から顔を上げると、ニカッと笑い、耳元に囁く。
「タクのファーストキス」
「昭広にーちゃーん!朝ですよー!!」
突然の大声に藤井はガバッと跳ね起きた。
声の方向に目をやると、部屋の入口には見慣れた妹と弟の姿。
「あ、オナラブーコとバカ犬」
「なっ!! それを言うならクリスティーヌでしょー!昭広兄ちゃんのバカー!!」
「昭広兄ちゃん、まだきのうのオママゴトやってるんですか?」
そう、それは、昨日の出来事。
クラスメイトの兄弟を巻き込んで、お誕生会と称したオママゴトをやらされたのだった。
「うるせー。オナラブーコのせいで、妙な夢見ちゃったじゃねーか」
ガシガシと頭を掻きベッドから下りて洗面所に向かう。
それにちびっ子二人もトテトテとついて来る。
「夢?どんな夢見たの?」
「は?どんなって……」
一加の問い掛けに思い出す、最後の台詞――
『タクのファーストキス』
急速に熱を集める頬を誤魔化す為に、高速で顔を洗う。
「ちょ、お兄ちゃん、水飛んでるっ冷たっ」
「うるせー!あっち行けーっ!!」
「大変ですー!昭広兄ちゃんがハンコウキですー!!」
「何ぃ!昭広っお赤飯だな!!」
マー坊の声を聞きつけ、トースト片手に友也が洗面台にやって来た。
「バッカ、そんなんじゃねーよ!」
ドタドタと大騒ぎしながらリビングへ行くと
「昭広、家庭内暴力だけは勘弁してね」
「悩みがあるなら父に言えよ」
と息子の成長に涙をちょちょ切らせる両親に
「朝からバカ言ってないで、とっとと食べちゃってよ」
「ホント、朝から煩い…」
と呆れる姉二人。
藤井家の朝はとても賑やかだった。
「藤井君!昨日は楽しかったねー」
学校へ着くと、拓也が声をかけてきた。
「えっ、えの、きっ」
「? おはよー」
ニコリと笑って、昨日の話題を振る。
「き、昨日の事は忘れろ!」
「…は?何で?」
キョトンとする拓也にしどろもどろな藤井。
「何でって…」
意識したくなくても、意識してしまう夢で抱きしめた拓也の身体、そして唇。
「とにかく!今日一日俺の半径1mに近づくな!!」
「えぇー!?」
「頼む。今日だけ。お願い」
「ふ、藤井君?」
ジリジリと後ずさって「じゃっ」と森口の方に走り去って行く藤井に、拓也は困惑せざるを得ない。
(あーもー、今日一日距離置けば大丈夫だろうか、いや、気をしっかり持て俺っ!!)
そう思う反面、
(どうせ夢なら、チューまでしとくんだった…)
とも思ってしまったとか。
-2013.10.18 UP-
(補足)
当時、正確なリクエストテーマは「高一・不良×優等生な藤拓」+「ほんのり甘めもあってよし」+「一加ちゃんのお誕生会後の夢オチ」と頂いておりました。
後半の課題につき、現実に戻った世界は、小6の藤井君&拓也です。
あと、藤井くんの夢なのにタクの動向が分かるのは何故?となりますが、パロなので!細かい事はスルーでお願いします。
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