変わらぬ想いを抱いて
ブルーマンデーとはよく言ったものだ。
週末に気分転換が出来なかったら、そのまま仕事三昧の一週間突入なんて地獄もいいところだ。
あの後、拓也から連絡があり、クリスの事を色々聞いた。
13年前のハワイ旅行での事、その時、拓也の親父さんとクリスの間で何かあった事(その内容は拓也もよく知らないという)、旅行後、節目節目(向こうからはクリスマスカード、こちらからはニューイヤーカード)で繋がりを絶やさなかった事(ホント、マメだな拓也…)、大人になってからは、メールなんかでもやり取りしていたらしい。
で、今回の来日は、まずは仕事で出張、折角日本へ行くのだからと、そのまま有給取得、その事をメールのやり取りで知った拓也が「じゃあ休日にあたる日はうちにおいでよ」と誘い、休暇日は榎木家へ滞在…というのが、経緯。
そう、数日間ヤツと拓也は同じ屋根の下なのだ。
その間、俺は…放っとかれるんだろうな…ハハッ。
そりゃ今までだって、仕事後や毎週末に会っていたわけではない。
それこそお互い忙しく、休出になったり、残業が続いたり、完全すれ違いなんてことも多々ある。
それでも、次に会えるのが励みになって、お互い仕事も頑張れるというもの。
しかし今回は何だ、仕事じゃないんだ、会えない理由は!
俺だって、ただの友人とかなら、何も気にしない。
気にしない…筈なんだけど、何でか気になる。
引っかかっていたそれを少し考えたら、その答えは実に簡単だった。
だって相手はスキンシップが過度な異国の人間。
挨拶代わりに、ハグしたりキスしたりが当たり前なんだ。
そして、別れ際に見せたあの表情。
あの類の笑みはよぉぉぉく知っている。
寛野や広瀬がよくするんだよ!即ち。
拓也を狙っている。
そして、拓也は気づかない。これ、デフォルト。
(あぁぁぁぁ、またなのか!? またこのパターンなのか!?)
そんなヤツが、挨拶と称してハグしたりキスしたり…
「そんなん許せるかっ!!」
ガタッと立ち上がり、ハッと我に返る。
「あ…」
「ふ、藤井?どうした?」
「お、おい?お前なんかミスでもしたのか?」
「してません!! と思うけど…藤井さん、俺なんかしました?」
先輩や同期、後輩が口々に言う。
「い、いや、こっちの事。すみません」
椅子に座り、項垂れる。
ホント、何やってんだ、俺。
「藤井さん、お茶どうぞ」
「あ、あぁ、どうも」
女子社員がコーヒーを淹れて持ってきてくれた。
「藤井さん、疲れてるんですよー。今度一緒に飲みに行きません?癒しますよ」
「いい、行かない」
お前じゃ癒されない。
受け取ったコーヒーを飲みながら、再びパソコンと対峙。
「うっわ、藤井さん、いつにも増してキッツー」
「即答だし」
「相変わらずクールだし」
「何で女子はアレがいいんだ…」
「俺たちとはどう?女子の皆さん」
「藤井さんがいないなら、行かない」
どこの高校の休み時間だと言わんばかりの会話に上司が一言。
「はいはい、もうその辺で仕事戻れー。っと、藤井」
「ハイ?」
呼ばれて、顔を上げる。
「確かに最近 根詰めてたな。ここいらで有給取ってもいいぞ」
「あーまー、大丈夫です」
今休んでもなー…。
「そうか?まあ、無理はするなよ?」
「はい。有難うございます」
まぁ、適当に手は抜いてるから、ご心配なく。
そんな心境の中、昼休みに拓也からメールが入った。
『クリスが藤井君ともっと話したいって。今週 仕事の後、一緒に食事できる日ある?』
拓也と食事!
あ、アイツも一緒にか…。
でもまあ、ここでウダウダしていても仕方ないから、会えるなら会っておこう。
そう思って、返信。
『OK。今週なら、明日明後日辺りなら大丈夫』
すると、程なく返信が来て、明日駅で待ち合わせをすることに。
『よかったークリス喜ぶよー。僕も楽しみ』
最後にそんな返信が来て、クリスはどうでもいいが、拓也が楽しみだと言ってくれたので、午後の仕事は大分はかどった。
やはり、アイツは俺の原動力であり、またその逆も然り。
「落ち着いてて雰囲気のいいお店だね」
「以前、上司に連れて来られたんだ」
通されたこじんまりとした和個室。
約束の駅前でクリスを連れ立った拓也と合流して、どこへ食事へ行こうかと相談。
やっぱり和食だよねということで、ふと思い出した仕事で訪れたことのあるちょっとイイトコロの料亭。
気軽に回転寿司とかでも良かったけど…うん、はっきり言う。見栄張りました。
もう、何だ、久々に現れた新たなライバルに俺も必死かもしれない。
お品書きを見ながら、外国人には馴染みのない料理名の説明をする拓也に声を掛ける。
「豆腐料理美味かったぞ。揚げ出しとか、あと湯葉」
「湯葉!いいねー、家じゃ食べられないしねー」
「ユバ?」
「うん。豆腐を作るときに出来る膜でね。すっごく美味しいよ」
じゃあ、湯葉料理いくつかとー、揚げ出しとー、天ぷらもいいなー…と言う拓也に合わせて、適当に見繕ってオーダーをかけた。
週末に気分転換が出来なかったら、そのまま仕事三昧の一週間突入なんて地獄もいいところだ。
あの後、拓也から連絡があり、クリスの事を色々聞いた。
13年前のハワイ旅行での事、その時、拓也の親父さんとクリスの間で何かあった事(その内容は拓也もよく知らないという)、旅行後、節目節目(向こうからはクリスマスカード、こちらからはニューイヤーカード)で繋がりを絶やさなかった事(ホント、マメだな拓也…)、大人になってからは、メールなんかでもやり取りしていたらしい。
で、今回の来日は、まずは仕事で出張、折角日本へ行くのだからと、そのまま有給取得、その事をメールのやり取りで知った拓也が「じゃあ休日にあたる日はうちにおいでよ」と誘い、休暇日は榎木家へ滞在…というのが、経緯。
そう、数日間ヤツと拓也は同じ屋根の下なのだ。
その間、俺は…放っとかれるんだろうな…ハハッ。
そりゃ今までだって、仕事後や毎週末に会っていたわけではない。
それこそお互い忙しく、休出になったり、残業が続いたり、完全すれ違いなんてことも多々ある。
それでも、次に会えるのが励みになって、お互い仕事も頑張れるというもの。
しかし今回は何だ、仕事じゃないんだ、会えない理由は!
俺だって、ただの友人とかなら、何も気にしない。
気にしない…筈なんだけど、何でか気になる。
引っかかっていたそれを少し考えたら、その答えは実に簡単だった。
だって相手はスキンシップが過度な異国の人間。
挨拶代わりに、ハグしたりキスしたりが当たり前なんだ。
そして、別れ際に見せたあの表情。
あの類の笑みはよぉぉぉく知っている。
寛野や広瀬がよくするんだよ!即ち。
拓也を狙っている。
そして、拓也は気づかない。これ、デフォルト。
(あぁぁぁぁ、またなのか!? またこのパターンなのか!?)
そんなヤツが、挨拶と称してハグしたりキスしたり…
「そんなん許せるかっ!!」
ガタッと立ち上がり、ハッと我に返る。
「あ…」
「ふ、藤井?どうした?」
「お、おい?お前なんかミスでもしたのか?」
「してません!! と思うけど…藤井さん、俺なんかしました?」
先輩や同期、後輩が口々に言う。
「い、いや、こっちの事。すみません」
椅子に座り、項垂れる。
ホント、何やってんだ、俺。
「藤井さん、お茶どうぞ」
「あ、あぁ、どうも」
女子社員がコーヒーを淹れて持ってきてくれた。
「藤井さん、疲れてるんですよー。今度一緒に飲みに行きません?癒しますよ」
「いい、行かない」
お前じゃ癒されない。
受け取ったコーヒーを飲みながら、再びパソコンと対峙。
「うっわ、藤井さん、いつにも増してキッツー」
「即答だし」
「相変わらずクールだし」
「何で女子はアレがいいんだ…」
「俺たちとはどう?女子の皆さん」
「藤井さんがいないなら、行かない」
どこの高校の休み時間だと言わんばかりの会話に上司が一言。
「はいはい、もうその辺で仕事戻れー。っと、藤井」
「ハイ?」
呼ばれて、顔を上げる。
「確かに最近 根詰めてたな。ここいらで有給取ってもいいぞ」
「あーまー、大丈夫です」
今休んでもなー…。
「そうか?まあ、無理はするなよ?」
「はい。有難うございます」
まぁ、適当に手は抜いてるから、ご心配なく。
そんな心境の中、昼休みに拓也からメールが入った。
『クリスが藤井君ともっと話したいって。今週 仕事の後、一緒に食事できる日ある?』
拓也と食事!
あ、アイツも一緒にか…。
でもまあ、ここでウダウダしていても仕方ないから、会えるなら会っておこう。
そう思って、返信。
『OK。今週なら、明日明後日辺りなら大丈夫』
すると、程なく返信が来て、明日駅で待ち合わせをすることに。
『よかったークリス喜ぶよー。僕も楽しみ』
最後にそんな返信が来て、クリスはどうでもいいが、拓也が楽しみだと言ってくれたので、午後の仕事は大分はかどった。
やはり、アイツは俺の原動力であり、またその逆も然り。
「落ち着いてて雰囲気のいいお店だね」
「以前、上司に連れて来られたんだ」
通されたこじんまりとした和個室。
約束の駅前でクリスを連れ立った拓也と合流して、どこへ食事へ行こうかと相談。
やっぱり和食だよねということで、ふと思い出した仕事で訪れたことのあるちょっとイイトコロの料亭。
気軽に回転寿司とかでも良かったけど…うん、はっきり言う。見栄張りました。
もう、何だ、久々に現れた新たなライバルに俺も必死かもしれない。
お品書きを見ながら、外国人には馴染みのない料理名の説明をする拓也に声を掛ける。
「豆腐料理美味かったぞ。揚げ出しとか、あと湯葉」
「湯葉!いいねー、家じゃ食べられないしねー」
「ユバ?」
「うん。豆腐を作るときに出来る膜でね。すっごく美味しいよ」
じゃあ、湯葉料理いくつかとー、揚げ出しとー、天ぷらもいいなー…と言う拓也に合わせて、適当に見繕ってオーダーをかけた。