拍手⑧

~Thank you so much for your Clap!!~
――――――――――――――
朝、登校時間。
マンションのエレベーターの下りボタンを押して、藤井はその到着を待つ。

(今日は…選択があったっけ)
芸術系教科の単位は選択制で、藤井は美術を選択したが昔から図工の類いを苦手としている拓也は音楽を選択し、同じクラスにいながら唯一別に過ごす授業。
藤井も別に音楽でも良かったが、提出期限さえ守れば授業中は自分のペースで過ごせる利点を思い、美術を専攻した。
(まぁ…こればっかは得手不得手があるしな)

でもやっぱり、同じ教室に榎木がいないのはつまらんなぁ…と惚けた事を考えていたら(今日も朝から拓也バカだ)エレベーターが到着した。

「あ」
「げ」

開いたエレベーターのドアの中には先客。
自分はいつもと変わらない時間だから、向こうがいつもより早いか遅いかなのだろう。
「"げ"とは失礼だな、藤井」
「いや、別に他意はない」
「……でも謝らないんだな」
「謝る程でもないだろ」

同じマンションに住む元同級生の宮前裕多と藤井は、どうも昔からソリが合わない。
小6の時の拓也と宮前の一件からは、藤井にとっては余計に気の食わない存在となっている。

しかし、それは藤井の方だけのようで―――…。

「榎木だったら、爽やかに "おはよー"とか言うのになー」
どうせ同じマンションなら榎木のが絶対良かったぜー。

中学に上がった頃から拓也と宮前は仲良くなり、そのせいか自分も、小学生の頃より宮前と接する機会が増えてしまった。
無論、マンツーで付き合うつもりはこれっぽっちもないが。

自分との引き合いに、よりにもよって恋人の名前を出され、藤井の眉がピクリと動く。

「お前さ、榎木にあんな事しといて、よく友達付き合い出来るよな」
「ん?」
「神経疑う」
横目で睨み付ける藤井に、宮前は不敵に笑う。

「違う。あの事があったから、俺と榎木は今友達なんだよ」
「………」
「ま、最初の俺の態度は悪かったのは認めるけどな!その件に関しちゃ、お前にも感謝だぜ。気付くきっかけ作ってくれたんだもんな。
そのお陰で榎木にちゃんと胸の内を伝えられて、その上で榎木は俺を許して友達と認めてくれたんだ。あの時はサンキューな」

(…何か、お礼言ってる割には、挑発的に感じる)
それは、藤井の気のせいではない。
宮前は挑発しているのだ。

宮前とて、藤井は気に入らない存在なのだ。
だけど、仲良くしたい友達の大切な想い人。
拓也の性格を考えたら、本来ならこちらとも友達付き合いが出来たらベストなのだが、それはもう、長年の溝がなかなかそうさせないのが分かっている。

そして普段は自分に対してシカトを決め込む程クールな藤井が、拓也絡みになるといつになく不機嫌になる事に気付いた時、それはそれは愉快だった。
だから、つい怒りボルテージを上げるような言動をして揶揄う。

要は、相性が悪いのだ、この二人は。

(あーもー、朝からムカつく)

藤井はそんな宮前の思惑にまんまとハマっていた。

「お前、いつもこの時間じゃないだろ…」
うんざりと藤井は宮前に言う。
「俺は今日日直だから、いつもより早く出たんだよ。何、お前はいつもこの時間なん?」
「そうだよ!だから、お前これからこの時間出てくんな!」

エレベーターのドアが開くと同時に藤井は駆け出しマンションから出て行った。

「…俺だって電車の時間があるっつーの」
理不尽な奴だな…と呟きながら
「あ♪」
ニヤリとする宮前を藤井は知る由もない。


「藤井君おはよー!」
「榎木…」
どこと無くいつもと違う藤井に
「あれ?疲れてる?」
と拓也は問う。
「あー、ちょっと…」
「無理しちゃダメだよー」
ふんわり笑む拓也に、今日は一段と癒しを感じる、と藤井の表情が和らいだその時、
「あ、メール」
ブレザーの上着ポケットに入れてた拓也のケータイにバイブが走った。
「あ、珍しいー」
送信元を確認してパッと綻ぶ笑顔につられ、それにすっかり和んだ藤井は思わず問う。
「誰から?」

「宮前君!」


「何、コイツ…」
「さぁ…?」
学校では拓也に項垂れるようにくっついている藤井の姿が。
「ふ、藤井君、離して…」
「無理。文句なら宮前に言え」
「意味が解らないよ藤井君!!」
「欝陶しい奴だな、オイ」
「今日、休み時間の度こうな訳?もう帰れよお前ら」

拓也だけでなく級友たちにまで欝陶しがられる藤井だった。

☆―――――――☆

拍手有難うございます!
管理人の綾見です!
今回から拍手お礼企画変わります♪
幾つか有り難くもリクエストを頂けたので、少しずつ消化させて頂きますねー(^^)
本当に有難うございます!!

さて今回は、拓也を巡って藤井君にバトって欲しいとの事で、第1回目のゲストは宮前君でした!

藤井 「ちょ、待て!」
拓也 「"1回目"って!?」
綾見 「モテモテたっくんが見たいって事よ」
拓也 「…そんなの困る…」
綾見 「ま、ウチはあくまでも "藤拓サイト"なので、悪いようにはしない…と、思う…よ?」
藤井 「何で段々弱気になってんだ!!しかも俺だけ過酷!!」
綾見 「煩い。お客様の要望だから」
藤井 「横暴だぁぁぁ!!」
拓也 「管理人の馬鹿ぁぁぁ!!」


そんな訳で、楽しんで頂けたら幸いです。

有難うございました!

-2013.05.09 UP-
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