お兄ちゃんと僕③

「兄ちゃーん」
夕飯後のリビング。
食器の片付けも終わって、パパは入浴中、僕はボケーっとTVを眺めながら、文庫を読んでる兄ちゃんに話し掛けた。
「ん?」
「今度の休みって、予定ある?」
どうせ、藤井の兄ちゃんと約束あるんだろうけど。
「んー…特にないけど」
お…?
「じゃあ、一緒に出掛けよう!?」
「いいよ。どっか行きたいトコでもあるの?」
文庫から顔を上げ、そう応えてくれた。
マジですか!!
どうしよう何も考えてなかった!
「えっ!!えっとえっと…映画とか!」
「いいね、たまには」
じゃあ、観たいの選んどいて、と笑顔で言われた。

やった!
駄目元でも言ってみるもんだ!!
今度の休みは兄ちゃんとデートだー!!

「兄ちゃんのノパソ貸して!シネマ情報見る~♪」
「部屋にあるから取っておいでよ」
「はーい♪」
上機嫌で2階へ昇り、パソコンを持って来る。
何がいいかなー今何やってたっけー。
最寄りの映画館のサイトを検索するキーボードを叩く指も軽やかに。
出てきた上映情報の一覧を兄ちゃんと眺めて「どれにするー?」と相談。

週末が楽しみだ!!



そんなこんなで土曜日。
お天気は文句なしの晴れ!
張り切って早起きして、まずは洗濯!
「もう、今ある分だけで回しちゃうからねー」
「実、今朝は早いなぁ…パパまだ寝てていいか?」
パパの寝室を覗いて、洗濯物の確認。
「いいよ!今日僕と兄ちゃん出掛けるから、朝ごはんも先に済ますからね」
「おー…」
まだ半分夢の中にいるであろうパパの返事を聞いて、次は兄ちゃんの部屋。
「兄ちゃーん」
起きてる気配がないけど、一応ノックをしてそっとドアを開ける。
まだカーテンが開けられてないから、やっぱり寝てるんだね。
本当、この兄貴は(パパもだけど)平日はキッチリ起きるのに休日は起きない。
学生の時はそんな事なかったのに、社会人にとって休日の朝7時台は早朝になるらしい。

いつもはベッドに潜り込んで奇襲をかけるけど(そして最終的に一緒に寝ちゃうんだけど)、今日は出掛ける前に家事を片付けなきゃね!
疲れてる兄ちゃんには、ギリギリまで寝てて貰おう。

洗濯機を回して、朝食の準備。
目玉焼きとウィンナーでいいか。
トーストは、各々起きて来た時でいいし、コーンスープの素あったよね。
お湯を沸かしてる間にレタスを千切る。
コーヒーもセットしたし…あとは洗濯機が止まるまで暇だ。
あー早く出掛ける時間にならないかなぁ。

太一から借りたマンガを読んでると洗濯終了のアラームが鳴った。
庭に出て干していると
「おはよう、実」
兄ちゃんが起きて来た。
「おはよう!」
洗濯が終わったら、一緒に朝ごはんだ!

朝ごはんを終えて、出掛ける準備をして、いざ出発。

「朝から元気だねー」
足取り軽く歩いている僕の数歩後ろから、兄ちゃんが苦笑混じりで着いて来る。
「だって、兄ちゃんと出掛けるなんて、久々で嬉しいから!」
首だけ後ろを向いて、にへっと笑う。
そんな僕に、目を細めて
「そうだね、久々だしね」
と微笑んでくれる兄ちゃん。
あー癒されるー。
気楽な高校生と言えど、一生懸命勉強して兄ちゃんの母校へ入学したから、日々色々頑張っているのだ!
名門進学校大変。
卒業した兄ちゃん尊敬。
今日は色々充電出来そうだ♪

どんなに気分を落ち着かそうとしても足取りは軽くなり、そんな無駄な努力はしなくていいやと開き直り、ご機嫌に駅の改札を潜った。
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