熊ノ井中女子生徒達による、榎木拓也ディスカッション

「最後に、去年も私達の心に癒しを与えてくれたこの組み合わせ、藤井昭広君」

「安心感のある組み合わせよね…」
「榎木君と藤井君、クラス隣同士だから体育は一緒で、試合とかチーム違って盛り上がるのよねー」
「あーいいなぁ、公美ちゃん藤井君とクラス一緒だもんねー」
「体育祭も盛り上がったよね!二人リレーの選手でー…」

ほぅ…と溜め息を吐く女子達。

(やっぱ、王道は藤井昭広かしら…?)
一同のやり取りを見て槍溝は思った。

「一応、在校生は出揃ったけど、他校代表として森口君がいますがー、まぁなかなか見られないレアなツーショットという事で、今回は割愛しましょう」
「ツーショット的には候補に入れたいトコだけどね」
「今回は、普段見られる癒しツーショットだしね」

と、いう訳で、誰がいいでしょうかー!?

「やっぱ、藤井君?」
「んーでも、広瀬君とも捨て難い!!」
「可愛いもの愛でたい時は、竹中君とがピカ一なのよね。へこんでた時に見たあのツーショットは、本当心和んだし」
「大穴は宮前君…?」
「大穴って…」
「ゴンは」
「ない!」

ワイワイと、あーだこーだ意見を出し合ってると、

ガラッ

とドアが開き、一同ビクッとする。

「あれ…?」
「え、榎木君」

ドアの方を見ると、今まさに噂をしていた渦中の人物が。

「みんな、まだ残ってたの?今日部活ない日だよ?」
拓也は自分の机に掛けてある鞄を取りに、席へ向かう。

「ちょっとね、女子のおしゃべりタイムよ」
槍溝がしれっと答える。
「え、榎木君は?」
と深谷が笑顔を取り繕って声を掛ける。

「僕?職員室で級長の仕事。やっと帰れるよ」
弟のお迎えもあるから急がなきゃ、と、手にしていた筆記用具を鞄にしまう拓也。

「みんなも、遅くならないうちに帰ろうね。女の子が危ないよ?」
ふわっと笑って「じゃ」と教室を出る。

……………。

「や、やっぱり拓也君の笑顔最っ高よね!」
「あの笑顔にヤラれちゃうのよね…」
「他の小学校からの子達も狙ってるし!!」
「冗談じゃないわよねー、他小の子達に取られてなるもんですか!」

ここはやっぱり、男子達に頑張ってもらわないと!!

(…ん?)
(…え!?)

今回、そういうディスカッションだったの―――!?

深谷はショックを隠し切れなかったが、
(女の子と付き合っちゃうのよりは、いいのかな…いやでも…)
と、新たな悩みが増えたのだった。

(いや、趣旨は最初の癒される組み合わせだった筈なのに、最後の榎木君登場ですり替えられたわね…)
槍溝はあらぬ方向ヘ行ったディスカッションに溜め息を吐いたが、まあ元々も別に意味のない集まり。
(深谷さん以外は、恋愛対象というよりアイドル的な存在だしね、榎木君)

そんな噂をされているとも知らず、
「藤井君、お待たせー」
「ん」
と、昇降口で拓也を待っていた藤井と合流。
一緒に保育園ヘお迎えへ。

ホラホラ、すぐに拓也を追いかければ、美味しいツーショットを堪能出来たのに、残念でしたね、お嬢様方。



      -2013.01.29 UP-
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