お兄ちゃんと僕②

「ねー、本当に出かけるのー?」

朝ゆっくり寝坊をした兄ちゃんは、昼前に起きて、今出かける準備をしている。

「………実、邪魔」

洗面所で歯を磨いてる兄ちゃんの背中にくっついて、さりげなく妨害。
「邪魔してるんだもーん」
全然さりげなくなかったか。

「兄ちゃん疲れてるのに。休日は "休む日" って書くの知ってる?」
「知ってる」
「じゃあ休めばいいのにー」
「家にいても実がこれじゃあ、休まりません」
うがいをして、タオルを口元にあてながら、くるっと振り向いて笑顔で答える。
「藤井の兄ちゃんとだったら、休めるの?」

「……………」

な、何で無言で赤くなるの兄ちゃん!!

何か腹立つよ、藤井昭広めっ!!

その時、インターホンが鳴った。

「あ、藤井君来た」
「僕が出るねー!!」
「ちょっと実...!」

兄ちゃんより早く玄関へ向かって走り出す。

「いらっしゃい、そして、さようなら」
「………実」
一瞬ドアを開けてすぐさま閉める。
すると閉まるギリギリのところで手が差し込まれ、それは阻止された。

「拓也は?」
笑顔で聞かれる。

「いますけど?」
笑顔で答える。

「生意気ンなったなぁ、おい」
「もう僕だって高1!身長だって、あと少しで追い付いてやらぁ!!」
「おー確かに追い付きそうだよなぁ…お前んトコの父ちゃんデカイし」
兄ちゃんは追い抜いたけど、藤井の兄ちゃんにはまだ負けてる。
でも、幸いまだまだ成長期!
絶対追い抜く!!

「拓也はあれ以上デカくならなくて、よかった」
「うんうん。兄ちゃんは、あれ位が丁度イイ」

うっかり意気投合して、二人でうんうんと頷いていると、

「小さくて悪かったねー」

出かける準備を終えて玄関に来た兄ちゃんは、ほっぺを膨らませて僕と藤井の兄ちゃんを睨んでいた。

「どうせ二人に比べたら僕は小さいよ」

ブツブツ言いながら靴を履く。

「実なんか、小さい頃のが可愛かったよーだ!!」
「え、今は?」
「可愛くない!!」

ガ―――――ン
ショック!!

「お、おい拓也、実ショック受けてる」
藤井の兄ちゃんが、ちょっと同情気味に兄ちゃんに言う。

「もう、行かせるかぁ!!」

靴を履き終えて立ち上がった兄ちゃんの背中に抱き着いて、羽交い締めにした。

「実!離せー」
「絶対離さない!!」
「勘弁してくれよ、実ぅ」

藤井の兄ちゃんまでもが額に手を当てて呆れ返る。
つか、お前に呆れる筋合いねぇよ!

「はい、そこまでー」

突然玄関が開いて間に入って来たのは、お向かいの太一だった。
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