ちょっと大人の話④
今日はのんびり過ごす休日。
俺の部屋でアイツがランチを作る。
ここに来る前に立ち寄った商店街で手に入ったと言っていた、手土産の旬のアサリ。
だからメニューは、アサリを贅沢にたっぷり使ったスープパスタらしい。
「テーブル拭けたぞー」
「あ、じゃあそこのポテトサラダ持ってって」
キッチンに行くとそう頼まれたので、リビングのローテーブルを拭いた布巾を置いてサラダボールを手に取る。
アイツはスープの味を確かめて、こんなもんかと沸騰しているパンにパスタを入れていた。
テーブルにサラダを置いて………。
「藤井くーん、もうすぐ出来るよ…あ、」
「………味見?」
美味そうなサラダと程よく感じて来た空腹に我慢出来なくなって、ついつまんだその瞬間。
「違う。それは "つまみ食い"って言うの」
「相変わらず美味しゅうでございます」
「ごまかさないの!もう、行儀悪いなぁ。実みたい!」
み、実みたいだとう…?
呆れ返ってキッチンへ戻る拓也に、俺もついて行く。
茹で具合を確認すべく麺を1本掬いあげて口に含む姿を横目に見ながら、戸棚からパスタ皿を出していたら、声を掛けられた。
「藤井君、はい アーン」
「あー…?」
振り返り言われるまま口を開くと、パスタを1本挟んだ菜箸の先を口に入れられた。
「味見は、こういうの」
教えるような、ニッコリ得意げな笑顔でそう言うと、口からはみ出たパスタをチュルッと吸い込みながらも呆気に取られてる俺の手からひょいとお皿を持っていく。
「我ながら、見事なアルデンテ♪」
手際良くパスタを盛り付けながら、今度の笑顔は満足そう。
そんなエプロン姿とか、相変わらずくるくる変わる表情とか、「アーン」とか、そう言えばこんな風に二人でのんびり過ごす休日は久々だとか、もう色々何と言いますか…
「いただきます」
「はっ!?」
後ろからギュッと抱きしめて、頭をその滑らかな首筋に埋める俺にギョッとして拓也は首を捻る。
「ちょ、藤井君!?」
「これは味見でもつまみ食いでもなく、お食事です」
何てな事を言ったら、トレイで思いっきり頭をはたかれた。
「ってぇ」
「バ、バカな事言ってないで、お昼食べるよ!折角美味しく出来たのに、パスタ延びちゃう!」
真っ赤になってパスタを運ぶ拓也を、半分微笑ましく半分呆れ気分で見る。
これが俗に言う「可愛さ余って憎さ百倍」というヤツか。
そんな事を思って、フォークとスプーンを持って拓也を追い掛ける。
持って来たそれを受け取ろうと伸ばされた手を取って、ぐいっと引き寄せて―――…。
「じゃあ、デザートで頂く」
「…………っ」
「ダメ?」
「しっ知らない!!」
「いただきます」
「~~~っ、召し上がれ!」
-2013.05.08 UP-
俺の部屋でアイツがランチを作る。
ここに来る前に立ち寄った商店街で手に入ったと言っていた、手土産の旬のアサリ。
だからメニューは、アサリを贅沢にたっぷり使ったスープパスタらしい。
「テーブル拭けたぞー」
「あ、じゃあそこのポテトサラダ持ってって」
キッチンに行くとそう頼まれたので、リビングのローテーブルを拭いた布巾を置いてサラダボールを手に取る。
アイツはスープの味を確かめて、こんなもんかと沸騰しているパンにパスタを入れていた。
テーブルにサラダを置いて………。
「藤井くーん、もうすぐ出来るよ…あ、」
「………味見?」
美味そうなサラダと程よく感じて来た空腹に我慢出来なくなって、ついつまんだその瞬間。
「違う。それは "つまみ食い"って言うの」
「相変わらず美味しゅうでございます」
「ごまかさないの!もう、行儀悪いなぁ。実みたい!」
み、実みたいだとう…?
呆れ返ってキッチンへ戻る拓也に、俺もついて行く。
茹で具合を確認すべく麺を1本掬いあげて口に含む姿を横目に見ながら、戸棚からパスタ皿を出していたら、声を掛けられた。
「藤井君、はい アーン」
「あー…?」
振り返り言われるまま口を開くと、パスタを1本挟んだ菜箸の先を口に入れられた。
「味見は、こういうの」
教えるような、ニッコリ得意げな笑顔でそう言うと、口からはみ出たパスタをチュルッと吸い込みながらも呆気に取られてる俺の手からひょいとお皿を持っていく。
「我ながら、見事なアルデンテ♪」
手際良くパスタを盛り付けながら、今度の笑顔は満足そう。
そんなエプロン姿とか、相変わらずくるくる変わる表情とか、「アーン」とか、そう言えばこんな風に二人でのんびり過ごす休日は久々だとか、もう色々何と言いますか…
「いただきます」
「はっ!?」
後ろからギュッと抱きしめて、頭をその滑らかな首筋に埋める俺にギョッとして拓也は首を捻る。
「ちょ、藤井君!?」
「これは味見でもつまみ食いでもなく、お食事です」
何てな事を言ったら、トレイで思いっきり頭をはたかれた。
「ってぇ」
「バ、バカな事言ってないで、お昼食べるよ!折角美味しく出来たのに、パスタ延びちゃう!」
真っ赤になってパスタを運ぶ拓也を、半分微笑ましく半分呆れ気分で見る。
これが俗に言う「可愛さ余って憎さ百倍」というヤツか。
そんな事を思って、フォークとスプーンを持って拓也を追い掛ける。
持って来たそれを受け取ろうと伸ばされた手を取って、ぐいっと引き寄せて―――…。
「じゃあ、デザートで頂く」
「…………っ」
「ダメ?」
「しっ知らない!!」
「いただきます」
「~~~っ、召し上がれ!」
-2013.05.08 UP-
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