藤井くんの恋人③
やはり仁志の奴は特に用事があった訳ではなく、学校の連中との約束がキャンセルとなり予定がぽっかり空いたから、その足で俺ン家来てみたんだとか。
「いなきゃいないで、ダメ元だったし」
まあ、元々俺らはこんな感じだしな。
ちゃんと約束する時も勿論あるけど。
「お陰で拓也とも会えたし」
しかも面白い状態で♪
「こんな状態じゃなかったらもっと良かったけど、僕も久々に森口君に会えて嬉しいよ」
お茶請けにお袋が持って来たクッキーを両手で持ち、頬張りながらそんな事言うモンだから
「何この生き物!めっちゃ可愛いんですけど!!俺に譲っ」
「やらん!」
「…僕はペットじゃないよ…」
…ぷくっと頬を膨らますその姿は、やっぱりどう見てもハムスターの仲間だろ。
「たっ拓也…っ、ホントそれ悶えるから…!」
笑いを一生懸命堪え…きれてなくて、フルフル震えながら仁志はそう言いつつ、「お前も大変だな」と言いたそうな目をして俺の肩をポンと叩く。
ホント、コイツには全て見透かされてるな、俺。
「しかし、小さくなったのが拓也で良かったよな」
「?何で?」
首を傾げる榎木。
「だって、服がそういうのしか無いんだろ?」
昭広だったら気持ち悪…
「スト―――ップ!!」
いや、ホント悪夢だ。
「榎木で良かった…!」
仁志と二人でほーっと溜め息を吐く。
「…二人共…元に戻った時は、覚えといてね…?」
ニーッコリ笑ってこちらを見据える。
そろそろ逆鱗に触れそうだ。
何たって、ピラミッドの頂点に君臨する榎木様だからな。
「悪かった榎木」
「ゴメンなぁ拓也」
ここは素直に謝っておこう。
三人で他愛のない話でダベって、夕方。
そろそろ帰るわ、と仁志が立ち上がる。
榎木も俺のポケットに入り、二人で玄関まで見送りに行く。
「じゃ、またな。拓也もまた遊ぼうな」
「うん!」
「気をつけて帰れよ」
「おぉ。じゃ」
パタンとドアが閉まる。
「楽しかったね」
部屋に戻ると、ニコニコしながら榎木が言った。
「そうだな」
「森口君と藤井君のやり取りって、改めて間近で見たの初めてかも」
「そうか?」
「うん。言い合ってても楽しそうで、ああいうのを "仲良くケンカする"って言うんだろうね」
楽しそう♪とのほほんと言う。
「そういや、お前と後藤ってケンカしてるの見た事ないな」
「僕達はケンカしたこともん」
「それも凄いよな」
それでいて、表面だけの付き合いって訳でもないのがちゃんと分かる。
「"親友"にもいろんな形があるんだね」
僕達は―――………
「…………」
「…………」
親 "友"…?
視線が絡んで、暫し沈黙。
何だか…空気が…
「ぼ、僕!」
先に沈黙を破ったのは榎木だった。
「喉渇いちゃった!お茶ちょうだい?」
「あ!あぁ!」
榎木専用のカップに、スポイトでペットボトルからお茶を淹れて渡す。
「ありがとう」と受け取る榎木の顔が心なしか赤い気がするのは…。
触れないでおこう。
何せ、自分も多分今同じ状況だから。
「親友は "友"だもんね」
「?何か言ったか?」
「ううん!何でもない!!」
To be continued ...
-2013.03.12 UP-
「いなきゃいないで、ダメ元だったし」
まあ、元々俺らはこんな感じだしな。
ちゃんと約束する時も勿論あるけど。
「お陰で拓也とも会えたし」
しかも面白い状態で♪
「こんな状態じゃなかったらもっと良かったけど、僕も久々に森口君に会えて嬉しいよ」
お茶請けにお袋が持って来たクッキーを両手で持ち、頬張りながらそんな事言うモンだから
「何この生き物!めっちゃ可愛いんですけど!!俺に譲っ」
「やらん!」
「…僕はペットじゃないよ…」
…ぷくっと頬を膨らますその姿は、やっぱりどう見てもハムスターの仲間だろ。
「たっ拓也…っ、ホントそれ悶えるから…!」
笑いを一生懸命堪え…きれてなくて、フルフル震えながら仁志はそう言いつつ、「お前も大変だな」と言いたそうな目をして俺の肩をポンと叩く。
ホント、コイツには全て見透かされてるな、俺。
「しかし、小さくなったのが拓也で良かったよな」
「?何で?」
首を傾げる榎木。
「だって、服がそういうのしか無いんだろ?」
昭広だったら気持ち悪…
「スト―――ップ!!」
いや、ホント悪夢だ。
「榎木で良かった…!」
仁志と二人でほーっと溜め息を吐く。
「…二人共…元に戻った時は、覚えといてね…?」
ニーッコリ笑ってこちらを見据える。
そろそろ逆鱗に触れそうだ。
何たって、ピラミッドの頂点に君臨する榎木様だからな。
「悪かった榎木」
「ゴメンなぁ拓也」
ここは素直に謝っておこう。
三人で他愛のない話でダベって、夕方。
そろそろ帰るわ、と仁志が立ち上がる。
榎木も俺のポケットに入り、二人で玄関まで見送りに行く。
「じゃ、またな。拓也もまた遊ぼうな」
「うん!」
「気をつけて帰れよ」
「おぉ。じゃ」
パタンとドアが閉まる。
「楽しかったね」
部屋に戻ると、ニコニコしながら榎木が言った。
「そうだな」
「森口君と藤井君のやり取りって、改めて間近で見たの初めてかも」
「そうか?」
「うん。言い合ってても楽しそうで、ああいうのを "仲良くケンカする"って言うんだろうね」
楽しそう♪とのほほんと言う。
「そういや、お前と後藤ってケンカしてるの見た事ないな」
「僕達はケンカしたこともん」
「それも凄いよな」
それでいて、表面だけの付き合いって訳でもないのがちゃんと分かる。
「"親友"にもいろんな形があるんだね」
僕達は―――………
「…………」
「…………」
親 "友"…?
視線が絡んで、暫し沈黙。
何だか…空気が…
「ぼ、僕!」
先に沈黙を破ったのは榎木だった。
「喉渇いちゃった!お茶ちょうだい?」
「あ!あぁ!」
榎木専用のカップに、スポイトでペットボトルからお茶を淹れて渡す。
「ありがとう」と受け取る榎木の顔が心なしか赤い気がするのは…。
触れないでおこう。
何せ、自分も多分今同じ状況だから。
「親友は "友"だもんね」
「?何か言ったか?」
「ううん!何でもない!!」
To be continued ...
-2013.03.12 UP-
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