アイスと思い出し笑いと×××
藤井宅で昼食を摂った藤井兄妹と榎木兄弟は、食後4人でコンビニを目指して歩いていた。
先程チラッと話題に出たアイスを買いに出たのだ。
「昭広兄ちゃんのケチ。ハーゲ○ダッツ食べたい」
「ざっけんな。高校生の小遣い幾らだと思ってやがる」
日常茶飯事な言い争いを繰り広げる兄妹のすぐ後ろでは、
「実はコーラ味でいいの?」
「うん!兄ちゃんは何味が好き?」
「僕は…梨味かなぁ」
前列とは対称的にほのぼのとした会話を繰り広げる兄弟がいた。
「美味しいよねー」
「つめたいよねー」
ホワホワほのぼの。
「じゃあ、リッチね!絶対プリン味!!」
「ったく仕方ねぇなぁ」
ケンケンゴウゴウ。
それぞれの兄弟(妹)の特徴が顕著に顕れる光景であった。
コンビニに着いて、それぞれの好きな味のアイスを選び、精算。
店を出た後は、小学生ペアは公園へ、高校生ペアは藤井宅へと向かう。
「兄ちゃん、また一加ちゃんち行くの?」
「うん」
「じゃあ、僕また一加ちゃんち帰って来ればいい?」
休日は、まだ小さい実は紛失防止で自宅の鍵を持ち歩かないようにしている。
基本、常にランドセルのファスナー付きのポケット部分に入れているようにしているのだった。
「そうだね。そしたら、一緒に帰ろうか」
「うん!」
「余り遅くなるなよ」
「まあ、程々にのんびりしてくるわ」
「一加…」
有り難いけど、ホントにマセたおガキ様だ…と内心呆れ果てる兄を横目に
「実ちゃん、行きましょー♪」
実の手を取り走り出す一加。
「一加ちゃん、実の事よろしくね!」
行ってらっしゃいと拓也は手を振る。
「まだまだ無邪気で可愛いよねぇ」
自分達とは反対方向へと走り去る二人の後ろ姿を見送りながら、拓也は微笑む。
「なのに、一加ちゃんは時々大人びた事言ったりするよね」
女の子ってそういうものなの?
「あいつは上に4人もいるから、無駄に耳年増なんだよな。小さい頃から俺らの事よく見てただろうし」
しかも、初恋が4歳と来たもんだ。それも2歳児相手に!
「全く幼児の頃からマセたガキだよ」
マンションに着き自宅の鍵を開けながら、溜め息混じりに自身の妹を省みる藤井に
「でも…4歳の頃からずっと実の事好きでいてくれるって…凄いと思う。凄く一途だよね、一加ちゃん。実にはまだ、そういう気持ちが解らないから、時々一加ちゃんに申し訳なくって…」
拓也はちょっと困り顔で言った。
「解る訳ねぇって!榎木だって小1どころか、6年の時でさえ女子に言い寄られてパニック起こしてたじゃねぇか」
「あ!あれは…!!」
「一気に複数に告られて悩んでたよなぁー♪」
正確には、バラされて、だけど。
「藤井君…!!」
あの時の事は拓也にとって、自分の余りにも子供過ぎた考えと身勝手な対応に、今でも自己嫌悪に陥る出来事だった。
「あーもぉ、忘れたい過去の一つなのにぃ」
拓也は真っ赤になってアイスをガリッと小さく齧った。
「ま、俺もあの頃はそういうの全然興味なかったしなぁ。男はそんなモンじゃね?」
「でも、ゴンちゃんは槍溝さんに恋してたよ」
「…人それぞれだよな」
「だね」
クスリと笑い合って、アイスを頬張る。
「梨、食った事ない。美味い?」
「美味しいよ?食べる?」
ハイ、と拓也が食べかけのそれを差し出すと藤井が一口齧る。
「ん。美味い…けど、やっぱ俺はソーダだなぁ」
「ソーダは基本だよね」
「食う?」
「うん」
拓也も差し出された藤井のアイスを一口食んだ。
「フフ」
不意に拓也の笑い声が零れ
「何?」
と藤井が問うと
「昔、藤井君に "アーン"ってした時は、食べてくれなかったのになーって思い出して」
それは藤井が風邪を引いて、拓也に助けを求めた小6の秋。
「もっと甘えてくれてよかったのに」
「な…っ、バァカ出来るかよっ」
らしくなく、赤くなり慌てる藤井に
「今思うと、あの頃の藤井君、可愛い」
拓也は最後の一口を口に入れ、クスクス笑う。
そんな拓也を藤井は呆れ顔で軽く睨みつける。
「…榎木、知ってるか?」
「何を?」
「思い出し笑いする奴って、エロいんだって」
「な…っ!?」
今度は拓也が真っ赤になって慌てる番。
藤井はアイスの棒を持ったままになってる拓也の右手を掴み、グイッと引き寄せて
「エロ」
と言い放ち口付ける。
その寸前、拓也に見えたのは藤井の意地悪そうな笑み。
「んーっ」
意地悪な笑みと言葉に抵抗しようと試みるが、がっちりと両手首と後頭部を抑えられ身動きが取れず。
やっと解放された時は、拓也の呼吸はすっかり上がってしまっていた。
「はぁ…、」
「やっぱエロい」
呼吸を整えようとする拓也を見て、藤井はヘラッと笑う。
「どっちが!!」
と、拓也は涙目で訴えるのだった。
「んー、やっぱ一番は表情だよな」
「!?そんな事ないよ!?」
「いーや、そんな事ある」
「~~~~っ」
-2013.05.02 UP-
先程チラッと話題に出たアイスを買いに出たのだ。
「昭広兄ちゃんのケチ。ハーゲ○ダッツ食べたい」
「ざっけんな。高校生の小遣い幾らだと思ってやがる」
日常茶飯事な言い争いを繰り広げる兄妹のすぐ後ろでは、
「実はコーラ味でいいの?」
「うん!兄ちゃんは何味が好き?」
「僕は…梨味かなぁ」
前列とは対称的にほのぼのとした会話を繰り広げる兄弟がいた。
「美味しいよねー」
「つめたいよねー」
ホワホワほのぼの。
「じゃあ、リッチね!絶対プリン味!!」
「ったく仕方ねぇなぁ」
ケンケンゴウゴウ。
それぞれの兄弟(妹)の特徴が顕著に顕れる光景であった。
コンビニに着いて、それぞれの好きな味のアイスを選び、精算。
店を出た後は、小学生ペアは公園へ、高校生ペアは藤井宅へと向かう。
「兄ちゃん、また一加ちゃんち行くの?」
「うん」
「じゃあ、僕また一加ちゃんち帰って来ればいい?」
休日は、まだ小さい実は紛失防止で自宅の鍵を持ち歩かないようにしている。
基本、常にランドセルのファスナー付きのポケット部分に入れているようにしているのだった。
「そうだね。そしたら、一緒に帰ろうか」
「うん!」
「余り遅くなるなよ」
「まあ、程々にのんびりしてくるわ」
「一加…」
有り難いけど、ホントにマセたおガキ様だ…と内心呆れ果てる兄を横目に
「実ちゃん、行きましょー♪」
実の手を取り走り出す一加。
「一加ちゃん、実の事よろしくね!」
行ってらっしゃいと拓也は手を振る。
「まだまだ無邪気で可愛いよねぇ」
自分達とは反対方向へと走り去る二人の後ろ姿を見送りながら、拓也は微笑む。
「なのに、一加ちゃんは時々大人びた事言ったりするよね」
女の子ってそういうものなの?
「あいつは上に4人もいるから、無駄に耳年増なんだよな。小さい頃から俺らの事よく見てただろうし」
しかも、初恋が4歳と来たもんだ。それも2歳児相手に!
「全く幼児の頃からマセたガキだよ」
マンションに着き自宅の鍵を開けながら、溜め息混じりに自身の妹を省みる藤井に
「でも…4歳の頃からずっと実の事好きでいてくれるって…凄いと思う。凄く一途だよね、一加ちゃん。実にはまだ、そういう気持ちが解らないから、時々一加ちゃんに申し訳なくって…」
拓也はちょっと困り顔で言った。
「解る訳ねぇって!榎木だって小1どころか、6年の時でさえ女子に言い寄られてパニック起こしてたじゃねぇか」
「あ!あれは…!!」
「一気に複数に告られて悩んでたよなぁー♪」
正確には、バラされて、だけど。
「藤井君…!!」
あの時の事は拓也にとって、自分の余りにも子供過ぎた考えと身勝手な対応に、今でも自己嫌悪に陥る出来事だった。
「あーもぉ、忘れたい過去の一つなのにぃ」
拓也は真っ赤になってアイスをガリッと小さく齧った。
「ま、俺もあの頃はそういうの全然興味なかったしなぁ。男はそんなモンじゃね?」
「でも、ゴンちゃんは槍溝さんに恋してたよ」
「…人それぞれだよな」
「だね」
クスリと笑い合って、アイスを頬張る。
「梨、食った事ない。美味い?」
「美味しいよ?食べる?」
ハイ、と拓也が食べかけのそれを差し出すと藤井が一口齧る。
「ん。美味い…けど、やっぱ俺はソーダだなぁ」
「ソーダは基本だよね」
「食う?」
「うん」
拓也も差し出された藤井のアイスを一口食んだ。
「フフ」
不意に拓也の笑い声が零れ
「何?」
と藤井が問うと
「昔、藤井君に "アーン"ってした時は、食べてくれなかったのになーって思い出して」
それは藤井が風邪を引いて、拓也に助けを求めた小6の秋。
「もっと甘えてくれてよかったのに」
「な…っ、バァカ出来るかよっ」
らしくなく、赤くなり慌てる藤井に
「今思うと、あの頃の藤井君、可愛い」
拓也は最後の一口を口に入れ、クスクス笑う。
そんな拓也を藤井は呆れ顔で軽く睨みつける。
「…榎木、知ってるか?」
「何を?」
「思い出し笑いする奴って、エロいんだって」
「な…っ!?」
今度は拓也が真っ赤になって慌てる番。
藤井はアイスの棒を持ったままになってる拓也の右手を掴み、グイッと引き寄せて
「エロ」
と言い放ち口付ける。
その寸前、拓也に見えたのは藤井の意地悪そうな笑み。
「んーっ」
意地悪な笑みと言葉に抵抗しようと試みるが、がっちりと両手首と後頭部を抑えられ身動きが取れず。
やっと解放された時は、拓也の呼吸はすっかり上がってしまっていた。
「はぁ…、」
「やっぱエロい」
呼吸を整えようとする拓也を見て、藤井はヘラッと笑う。
「どっちが!!」
と、拓也は涙目で訴えるのだった。
「んー、やっぱ一番は表情だよな」
「!?そんな事ないよ!?」
「いーや、そんな事ある」
「~~~~っ」
-2013.05.02 UP-
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