変わらないきみのまま

藤井君は凄い。
運動神経は抜群だし、勉強もちゃんと出来るし(授業中寝てる事多いのに!)、ぶっきらぼうに見えて実は優しいし。
そんな藤井君に、僕は憧れるし、でも時々悔しい思いもする。
それは小学生の頃から変わらない────


「榎木、本っ当ごめん」
放課後。
今日は日直の拓也。
さっきから謝っているのはもう一人の日直だが、どうやら今日に限ってどうしても部活を遅刻できないという事で、放課後の業務を一人でやってほしいと言うのだ。
「別にいいよ。大丈夫。早く行きなよ」
にっこり笑って承諾をする。
「サンキュー!次の日直の時は、俺が放課後業務やるから!」
と言いながら、荷物を持って教室から飛び出して行った。

放課後業務と言っても、指定の時間までにゴミ箱のゴミ捨てと、日誌書きと、戸締まり位だ。
本来なら、部活が始まる時間までに余裕で熟せるのだが、今日は帰りのHRが長引いたのだ。

「さて、と」
ごみ捨てから帰ってきた拓也は、次の仕事は〜とペンケースからシャーペンを取り出し、日誌を書き始める。
「今日の特記事項は…」

ガラッ。
教室のドアが開き顔を上げると、藤井が教室に入って来るところだった。
「あれ。まだ帰ってなかったの?」
「廊下で担任に捕まって雑用手伝わされてた」
「あは。ご苦労様」
本当は拓也を待つ為に時間を潰そうと思ってたところだったから、いい暇潰しになったんだけど、と藤井は密かに思った。

「小野崎は?」
ともう一人いる筈の日直の名を尋ねる。
「今日部活遅刻できないって言うから、行ってもらったよ?」

一瞬、藤井の眉がピクっと動いた。
1/3ページ
スキ