すき・きす・みっつ
藤井君は僕からスルリと離れ部屋の奥へ進み、買ってきたものが入っているレジ袋を机の上に置いた。
「アイツ、何しに来てたんだ うちに」
「え…?遊んでたんじゃないの?」
「あー…、まあそうなんだけど…」
そうして、二段ベッドに寄り掛かるようにして座ると、僕の腕をやんわり引いて抱き寄せた。
「まだ潤んでる、目」
「だっ、だって……、」
恥ずかしいのと、藤井君が突然帰って来たことで、さっきの僕は完全パニクっていた。
今は大分落ち着いてるけど、まだ少しドキドキしている。
「……俺の好きなとこ3つって、どこ?」
「えっ」
それなのに、藤井君までそんな事を言い出すもんだから。
「や……っ、言えないよ、そんな事」
「じゃー、言わなくていいから」
「え……」
キョトンとする僕に、藤井君はニヤリと笑う。
「仁志からの言付け。その質問には続きがあって、元々はその3か所に、キスするゲームなんだってさ」
「は……?」
な、何それ?
「まあ、そのゲームを元に、『カレカノの好きなパーツベスト3』みたいな企画記事みたいなんだけどな」
あぁ、一応はしっかり仕事だったわけね。
「榎木、言わなくていいから、キスしてみ?」
「や、やだ」
「仁志が知ってて、俺知らないの気になる。そしたら、夜も眠れない」
「ウソだぁ」
「ほら早く。しないと離さない」
藤井君がヘラリと笑う。離してもらえないのは……困る。
「目っ!瞑ってて!絶対開けないで!」
「ハイハイ」
何でこんな事に……もう何度もしてる行為だけど、こういう仕方は……恥ずかしい。
藤井君の右手を取って、まずは指先に、そして瞑っている瞼に唇を触れさせた。
最後は……服の上から二の腕に。
3か所全てに唇を触れさせると、藤井君が目を開けた。
「腕?」
「うん、藤井君の腕って、キレイに筋肉ついてるんだもん…憧れ…」
「俺は、スラッとした榎木の腕の方が好きだけどな」
僕は、もう少し筋肉欲しいとこだけど……お互いないものねだりっていうのかな。
「3つしたからいいでしょ、離して…」
「まだ。俺の方からしてないもん」
「え」
そう言うと、髪の毛をひと房手に取って口づけられた。
「まずは髪の毛。サラサラでいつもいい匂い。……次は、」
やっぱここかな、と目尻に触れる。
「クリクリ動く大きな目。最後は……」
言いながら、3つあるポロシャツのボタンを外された。
「ちょ、ちょっと藤井君!?」
「鎖骨。キレイに浮いてて好き」
場所が場所なだけに、藤井君の唇が触れるとピクリと動いてしまった。
「あ、感じた?」
「ち…違……っ、もう3か所やったから終わりっ」
ニヤリと笑う藤井君から逃れようとバタバタ動く。
今は誰もいないけど、いつ一加ちゃんたちが帰って来るかと思うと気が気じゃないよっ。
「待った。今やった3か所はウソじゃないけど、実は建前も含まれています」
「は?」
一度逃れた藤井君の腕の中に、もう一度引き戻されて。
「…………っ」
触れられた場所は、唇。
「やっぱキスするなら、ここは外せないでしょ」
「…………うん」
やっとの思いで返事をして俯く。
実は、僕も故意に外してた。
だって、人に言うにはやっぱり恥ずかしい。
「本当は3つじゃ足りないし、いろんなとこ好きだけど」
「へ?」
俯いた顔を上げると、意地悪そうな笑顔の藤井君があった。
「例えば、すっと伸びた背筋とか、可愛いヘソとか、」
「へ…っ、そんな事、絶対森口君に言わないでよ!!」
「言わねーよ」
そんな事を言い合っていると、玄関から「ただいまー!」と元気な一加ちゃんとマー坊の声が聞こえた。
「あ!一加ちゃんたち帰ってきた。ハイ、もうこの話はおしまい」
天の助けと言わんばかりにパッと藤井君から離れると、マー坊が部屋のドアを開けた。
ふう、間一髪。
「あ!兄ちゃん!!」
「みっ実っ!」
兄ちゃんもマー坊のうち来てたんだーと抱き付いてくる実に、一瞬気が遠くなりそうになった。
ほ、本当に危なかったぁぁぁ!!
「昭広兄ちゃん。ゲーム リビングに持ってっていい?」
「おぉ、持ってけ持ってけ」
藤井兄弟二人でガサゴソとゲームのハード機やらコードやらをまとめながら、藤井君が声を掛けてきた。
「実がこっち来たんなら、榎木家今留守か?」
「ううん~パパがいるよー」
無邪気に答える実に「……そっか」と脱力して返事をする藤井君に、僕はピンときてしまった。
実とマー坊がリビングに行くのを見計らって言う。
「残念でした」
「でも、アイツらゲーム始めたら、この部屋来ないよな」
「やっ、やだよっ。実もいるしっ」
絶対流されるもんか。
そう決意して、僕も実たちを追いかけた。
「お兄ちゃんたちもゲーム参加していいかな!?」
「いいですよー」
「わーい♪兄ちゃんもいっしょにやろー♪」
よしっ。これで手出しできまいっ。
すると藤井君も諦めたように溜め息を吐いて僕についてきた。
「マー坊、真剣勝負な」
「負けません!」
「一加ちゃんもやるでしょ?」
「うん!」
こうして、5人で賑やかなゲーム大会となった事に安堵する僕だった。
-2014.05.24 UP-
「アイツ、何しに来てたんだ うちに」
「え…?遊んでたんじゃないの?」
「あー…、まあそうなんだけど…」
そうして、二段ベッドに寄り掛かるようにして座ると、僕の腕をやんわり引いて抱き寄せた。
「まだ潤んでる、目」
「だっ、だって……、」
恥ずかしいのと、藤井君が突然帰って来たことで、さっきの僕は完全パニクっていた。
今は大分落ち着いてるけど、まだ少しドキドキしている。
「……俺の好きなとこ3つって、どこ?」
「えっ」
それなのに、藤井君までそんな事を言い出すもんだから。
「や……っ、言えないよ、そんな事」
「じゃー、言わなくていいから」
「え……」
キョトンとする僕に、藤井君はニヤリと笑う。
「仁志からの言付け。その質問には続きがあって、元々はその3か所に、キスするゲームなんだってさ」
「は……?」
な、何それ?
「まあ、そのゲームを元に、『カレカノの好きなパーツベスト3』みたいな企画記事みたいなんだけどな」
あぁ、一応はしっかり仕事だったわけね。
「榎木、言わなくていいから、キスしてみ?」
「や、やだ」
「仁志が知ってて、俺知らないの気になる。そしたら、夜も眠れない」
「ウソだぁ」
「ほら早く。しないと離さない」
藤井君がヘラリと笑う。離してもらえないのは……困る。
「目っ!瞑ってて!絶対開けないで!」
「ハイハイ」
何でこんな事に……もう何度もしてる行為だけど、こういう仕方は……恥ずかしい。
藤井君の右手を取って、まずは指先に、そして瞑っている瞼に唇を触れさせた。
最後は……服の上から二の腕に。
3か所全てに唇を触れさせると、藤井君が目を開けた。
「腕?」
「うん、藤井君の腕って、キレイに筋肉ついてるんだもん…憧れ…」
「俺は、スラッとした榎木の腕の方が好きだけどな」
僕は、もう少し筋肉欲しいとこだけど……お互いないものねだりっていうのかな。
「3つしたからいいでしょ、離して…」
「まだ。俺の方からしてないもん」
「え」
そう言うと、髪の毛をひと房手に取って口づけられた。
「まずは髪の毛。サラサラでいつもいい匂い。……次は、」
やっぱここかな、と目尻に触れる。
「クリクリ動く大きな目。最後は……」
言いながら、3つあるポロシャツのボタンを外された。
「ちょ、ちょっと藤井君!?」
「鎖骨。キレイに浮いてて好き」
場所が場所なだけに、藤井君の唇が触れるとピクリと動いてしまった。
「あ、感じた?」
「ち…違……っ、もう3か所やったから終わりっ」
ニヤリと笑う藤井君から逃れようとバタバタ動く。
今は誰もいないけど、いつ一加ちゃんたちが帰って来るかと思うと気が気じゃないよっ。
「待った。今やった3か所はウソじゃないけど、実は建前も含まれています」
「は?」
一度逃れた藤井君の腕の中に、もう一度引き戻されて。
「…………っ」
触れられた場所は、唇。
「やっぱキスするなら、ここは外せないでしょ」
「…………うん」
やっとの思いで返事をして俯く。
実は、僕も故意に外してた。
だって、人に言うにはやっぱり恥ずかしい。
「本当は3つじゃ足りないし、いろんなとこ好きだけど」
「へ?」
俯いた顔を上げると、意地悪そうな笑顔の藤井君があった。
「例えば、すっと伸びた背筋とか、可愛いヘソとか、」
「へ…っ、そんな事、絶対森口君に言わないでよ!!」
「言わねーよ」
そんな事を言い合っていると、玄関から「ただいまー!」と元気な一加ちゃんとマー坊の声が聞こえた。
「あ!一加ちゃんたち帰ってきた。ハイ、もうこの話はおしまい」
天の助けと言わんばかりにパッと藤井君から離れると、マー坊が部屋のドアを開けた。
ふう、間一髪。
「あ!兄ちゃん!!」
「みっ実っ!」
兄ちゃんもマー坊のうち来てたんだーと抱き付いてくる実に、一瞬気が遠くなりそうになった。
ほ、本当に危なかったぁぁぁ!!
「昭広兄ちゃん。ゲーム リビングに持ってっていい?」
「おぉ、持ってけ持ってけ」
藤井兄弟二人でガサゴソとゲームのハード機やらコードやらをまとめながら、藤井君が声を掛けてきた。
「実がこっち来たんなら、榎木家今留守か?」
「ううん~パパがいるよー」
無邪気に答える実に「……そっか」と脱力して返事をする藤井君に、僕はピンときてしまった。
実とマー坊がリビングに行くのを見計らって言う。
「残念でした」
「でも、アイツらゲーム始めたら、この部屋来ないよな」
「やっ、やだよっ。実もいるしっ」
絶対流されるもんか。
そう決意して、僕も実たちを追いかけた。
「お兄ちゃんたちもゲーム参加していいかな!?」
「いいですよー」
「わーい♪兄ちゃんもいっしょにやろー♪」
よしっ。これで手出しできまいっ。
すると藤井君も諦めたように溜め息を吐いて僕についてきた。
「マー坊、真剣勝負な」
「負けません!」
「一加ちゃんもやるでしょ?」
「うん!」
こうして、5人で賑やかなゲーム大会となった事に安堵する僕だった。
-2014.05.24 UP-
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