Twilight X'mas

Time:10:20――

「それでは、これにて2学期終了!冬休み、ハメ外すなよー…良いお年を!」

担任のその言葉で2学期最後のHRが終了したと同時に、教室中がわっと沸いた。

12月24日、2学期終業日…及びクリスマス・イヴ。

大人も子供もそれぞれの期待に浮足立つ日、そこに冬休みスタートが重なれば、受験生でもないお気楽な学生、気分も最高潮となろう。

「なぁなぁ、今から打ち上げ兼クリパしよーぜー、2学期お疲れさん会♪」

クラスメイト6人で昇降口へ向かう中、穂波と中橋が提案をしたが。

「あ、俺、今から彼女と待ち合わせ」
「俺も」

他校に彼女がいる小野崎と布瀬は、あっさり断りの返事をした。

「二人とも…流石にクリスマスに彼女持ちを誘うのは無謀だよ…」

拓也は苦笑混じりに言ったが、それが運のツキ。

「榎木と藤井は強制連行」
「えっ!?」
「はっ!?」
中橋の言葉に拓也と藤井は二人同時に聞き返す。
「確かに、彼女が他校のヤツらは、なかなか会えないから仕方なし!しかぁし、お前ら二人は常に二人でいるんだから、今更クリスマスにこだわらんでも良かろう!」
「っていうか、可哀相な俺らに付き合え!」
「無茶苦茶だなオイ」
「そんな横暴な…」

具体的な計画は立ててはいなかったものの、今年のクリスマスは一緒に過ごそうと思っていた二人、どうにかして振り切ろうとするが…。

「じゃ、一度帰って12時頃に駅前で~♪」

今日は終業式と成績表配布のHRのみで学校は放課となったので、ただ今時刻は10時半。
一度帰っても、余裕の時間だ。

「……仕方ない…よね?」
「2~3時間で解散だからな」
諦めた拓也と数時間で解散宣言をする藤井に、
「まあ、俺達もそこまで野暮じゃない」
「折角のクリスマス!冬休みスタート!楽しく過ごそうぜー」
と絡む二人。
それを傍観する小野崎と布瀬は
「何故に曲がりなりにも邪魔する二人が上からなんだろな…」
「災難だな…」
と呟いた。

昇降口で電車組と自転車組で別れ、駅でそれぞれの路線へ散らばる。
明日からの冬休み、特に用事がなければ、次に会うのは年明けの始業式だ。
布瀬に「良いお年を」とお決まりの挨拶を、穂波には「また後でね」と言い、拓也は手を振った。

拓也と藤井も電車に乗り込み、まずは帰路へ着く。

「藤井君…今日、何か考えてた?」
電車に揺られながら、拓也は藤井を見上げた。
「あーまあ、時間は大分あるし…アイツらと過ごすのも、いい時間潰しにはなるな」
「え?」
きょとんとする拓也に藤井はふっと笑う。
「少し、歩かせるから…あったかい恰好して来いよ?」
「う、うん!」

(わぁ…何だろう…何処か行くのかな?)

高校生の自分達には、時間はあってもお金はない。
拓也も色々思案はしたが、考えてみても、やはり食事はファミレスやファストフード店になるし、遊ぶ場所も限られる。

「えへへ、楽しみ」
ほわっと笑んでみせる拓也に、藤井は軽く拓也の頭を撫でた。


Time:12:07――

約束の駅で4人は合流し、やはりファストフード店でお昼を摂り、その後はカラオケという定番のコース。
思いがけずの級友たちとのクリスマス…と言っても普段遊ぶパターンと大しては変わらないが、それでも気の合うつるみ仲間との時間は何だかんだ言っても楽しく過ごせるのは事実だった。


Time:15:45――

カラオケ店へ入り3時間程経とうという頃、藤井は時間を確認して立ち上がった。

「じゃ、俺らはこの辺で。ほら、榎木行くぞ」
ハンガーに掛けてある自分と拓也のコートを取り、拓也の腕を掴み引き立たせる。
「え、うん!」
拓也は藤井からコートを受け取り、退室の支度をする。

「おぉ、んじゃ、また年明けな」
「あとは二人でごゆっくり~」
「二人はまだ続ける?」
「おー」
もう暫くカラオケを継続するらしい。
拓也と藤井は自分達の料金をテーブルに置いて、「じゃ、良いお年を」と部屋を後にした。
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