Triangle-Caprice

「…んっ」
重なった口付けが深くなる。
舌を絡ませて、咥内を溶かして。
「ふ…っ」
銀糸を伝わせて、唇を解く。

「本当に何もされてねぇか?キスも?」
「うん。抱きしめられただけ」
「よかった…よくないけど」
フフッと拓也は笑って
「でも少しだけドキドキした」
「なっ!?」
「5年後の藤井君は、こんななのかなぁって…」
少し意地悪っぽく言ってみる。
「…余裕じゃねぇか…」
そんな拓也に引き攣った笑顔になる藤井。

「うん。だから…5年後の藤井君にも会ってみたい」
それまで、ずっと一緒にいてくれる?

思いも寄らない拓也の発言に、引き攣った笑顔が驚きの顔になり、優しい笑みに変わる。

「5年と言わず、ずっと一緒にいるつもりだし」

離さない―――。
そう囁いて、甘く唇を合わせる。



「じゃあ、僕帰るね」
結局、陽が傾く時間になるまでずっと部屋で過ごしていた二人。

お暇しようと、リビングに顔を出し、先程帰って来た藤井の両親に「お邪魔しました」と挨拶をする。
藤井と玄関に向かうと、丁度友也が帰って来た。

「げ、兄貴」
「お、帰るのか?」
可愛くない弟を無視して、弟には勿体ないと思っている可愛いその恋人に声を掛ける。

「はい、お邪魔しました」
あんな事をした相手にも、相変わらずの笑顔で丁寧な挨拶をする。
「本当、昭広には勿体ないなぁ」
「わっ」
軽く拓也をハグする友也。
「やめろ」
声を低く怒りを込めて静かに一喝し、藤井は友也から拓也を奪取する。
「友也さん」
ふわっと笑って友也を見上げる。
天使の微笑みにドキッとした、その瞬間
「次、あんな事したら、承知しませんからね」
いや、目が笑っていない。

普段温厚な奴程、怒らせたら恐ろしい―――…。

「ハイ。スミマセンデシタ」

ドキッとした次の瞬間、別のドキドキと冷や汗に支配された友也だった。


-2013.02.17 UP-
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