Triangle-Caprice

「本当にすまなかった、この通り!!」
二人に対して土下座をする友也。
「絶対許さない!」
怒り絶頂の藤井。
それは、そうだろう。
危うく恋人に手を出されそうになったのだから。
「ふっ藤井君!僕なら大丈夫だから」
未だボロボロと涙を零しながら、拓也は仲裁をする。
「お前なぁ、何で庇うんだよ?犯されそうになってたのに!」
「おか…っ!そこまでするつもりなかったよ!」
「うるせぇ!!同じだろうが!!」

もういい!こんな危険な所に榎木置いておけるか!と、藤井は拓也の手を取り、玄関へ向かう。
「取り敢えず外出ようぜ」
「え、うん」
と言う拓也に視線を向けて、あ…と考え直す。
こんな泣き顔して外には出せないか。

リビングに戻り、バンッ!と乱暴にドアを開ける。
「兄貴!お前が出て行け」
有無は言わせねぇぜと言わんばかりのドスを効かせた声。

「へいへい」
ここは拓也の為にも大人しくした方がいいと判断し、友也は素直に応じる。

でも、兄も負けない。
すれ違い様、藤井に
「拓也君、相変わらず可愛いなぁ」
昔も可愛かったけど、成長して色気も出て来たし♪
「!!」

揶揄い半分に挑発。
「もたもたしてっと本気で貰うぞ」
「うるせぇよ!早く行けって!!」
「はいはい」
友也は手をひらひらさせて、玄関の外へ出て行った。

パタンとドアが閉まると友也はドアに寄り掛かり、口元を片手で覆う。

(ヤ…ヤバかった…)
最初は完全冗談の揶揄いだった筈なのに、途中から本気になりかけていた事に自身で気付いていた。
(拓也君の "まだ何も"が事実なら…昭広、よっぽど堪えてるかよっぽど淡泊なのか…どちらにしてもヤバくね?)
藤井が聞いたら「余計なお世話だ!」と怒りそうな心配をしていた。

一方家の中では―――

「ったく」
チッと舌打ちしながら、先に拓也を押しやった男子部屋に入る藤井。

拓也は二段ベッドに背を預けて座り、ハンカチで目全体を覆って目元を押さえていた。

「大丈夫か?」
肩に触れるとピクッと揺れた。
「うん、ヘーキ。ビックリしたけど」
女の子じゃないし。

ハンカチを外してニッコリ笑って見せる。
涙は、止まっていた。

「悪かったな、兄貴が」
藤井が代わりにもう一度謝る。
「ううん、冗談だって分かってるし」
気にしないで、と拓也は言う。
「それと、俺も。ちゃんと家にいればよかった」
後悔の色が隠せない。

「藤井君…僕なら大丈夫だって」
健気に振る舞う拓也に、藤井は恐る恐る拓也を抱きしめる。
「…怖い?」
「何で?」
「さっきあんな事あったから」
「ヘーキだよ。だって、今こうしてるのは藤井君じゃない」
今度は拓也が藤井を安心させるように、両腕を藤井の背中に回し、力を込める。
そこでやっと、藤井の安堵した溜め息が漏れ、やわやわと抱いていた腕に力を込められた。
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