親友の好きな人

ファミレスへ場所を移し、ドリンクバーで「お疲れ」と乾杯。
久々に会う親友との近況報告で盛り上がる拓也と後藤の会話をコーヒーを飲みながら聞いている藤井。

思いがけずの飛び入り参加で二人の時間を邪魔されたと思ったけど、こんなに楽しそうな拓也の顔を見るのは悪くない。

藤井のそんな事を思いながら拓也を見る視線に気付いた後藤は、思わず赤面した。
何て甘い視線をしてやがる────!

中学の頃から薄々感じてはいたが、よもやこんなに拓也の事を好きだったとは。

そんな藤井にあてられて、何となく自分がこのままここにいるのは野暮な気がして、
「あー…あーっと、悪い拓也。今日部活休みなの知った母ちゃんに用事頼まれてたわ。俺、帰らんと」
「えっ、そうなの!? ごめんね、引き止めちゃって」
「いや!俺も久々楽しかったし!今からなら、用事まだ間に合うから!また電話する!」
ガタっと立ち上がり、自分の支払い分の小銭を置いて藤井の脇を通り際、ポンと藤井の肩に手を置き、
「悪かったな。後はごゆっくり」
拓也には聞こえないよう小声で伝えると
「…?あ?あぁ…?」
と、何言ってんだ?というような返事が返って来た。

あの反応…自分がどんな目で拓也を見てんのか分かってねえのかな…?



その夜、早速拓也の携帯に後藤の携帯からの着信。
それとなく、探りを入れてみると

「何言ってるのゴンちゃん!?そんな付き合ってないよ!!」

と慌てた様子で否定する拓也。

「は?マジで!?」
「もー何でそう思ったのー」
「何でって…」
拓也のこの様子だと付き合っているのを隠しているわけではなさそう。
でも、藤井の視線は明らかに拓也へのそれは特別な意味が篭っているのは丸分かりで、素直な拓也の態度はやっぱり周りは気付いてるだろう。
「拓也…お前達のクラスメイトに同情する…」
「何で!?」

だってこんな天然バカップルを毎日目の当たりにするって自分がリア充じゃなきゃ堪えられない。

そう思った後藤だが
「ま、俺は大丈夫だけどな!拓也と伊達に長年親友やってるわけじゃないぜ?」
今日はイキナリでひるんじまったがな!
「ゴンちゃん、言ってる意味が分からないよ…」


一方で────

榎木にケータイ繋がらない…

何度目かの話し中を伝える電子音に時計を確認して「チッ」と舌打ち。
後藤の野郎だな…と今夜は諦めて

「おやすみ」

の一言をメールに打ち。

「送信」
ピッ。

溜め息を吐きながら部屋を出ると、丁度一加が通り掛かった。
「ちょーっと昭広兄ちゃん!乙女の前で辛気臭い溜め息なんかつかないでよ!幸せ逃げるわよ?」
相変わらず何言ってやがんだと、生意気な顔した妹を一瞥して
「ガキは早く寝ろ」
と一言。

「拓也お兄様にでも振られたの?」
「!?」

妹にまでバレバレよ?お兄ちゃん。
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