親友の好きな人

学校帰り。
ショッピングモール内のCDショップで何気なく新譜コーナーを見ていたら、久しぶりに聞く声に名前を呼ばれた。
「あれ?拓也ー!」
振り向くと
「ゴンちゃーん!」
小学校からの親友・後藤正だった。

「久しぶりだねー部活今日は休みなの?」
「おう。昨日試合だったからさ、今日は休み」
後藤は、拓也達とは違う高校へ進んだ。
中学の部活で始めた空手を続けたくて、空手部の強い商業高校へ。
でも流石強豪校、土日も部活が多く、なかなか遊ぶ機会がなく、会うのは本当に久しぶりだった。

「実の事は、ヒロから毎日のように話聞くんだけどな」
「そうなの?実はあまりヒロの事話さないなーヒロも元気?」
「おう、元気元気。つか、実はあまり話さないのか?」
「うーん、女の子の事はあんまり。男の子の友達の事は聞くよ」
「男と女の差なのかねー」

そんな話をしていると
「悪い、待たせたな」
とCDの支払いを終えた藤井が戻って来た。
「と、あれ?」
「おー、藤井も一緒だったんだーお久!」
拓也に続き、かつての級友の登場で更にテンションの上がる後藤。
「ね、ゴンちゃん久しぶりだし、三人でお茶しようよ!」
拓也の提案。
「え?いいのか?」
と、チラっと藤井を見る後藤。
「もちろんだよ、ねー藤井君!」
満面の笑みの拓也に対して
「…まあ」
一瞬の間を置いて、返事をする藤井。

(お邪魔じゃないのか…?)

お調子者に見えて、実は小学生の頃から周りの事が割りと見えている後藤。
親友の拓也の気持ちは勿論、藤井の拓也への気持ちも何となく感じとっていた。
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