Mint×Vanilla=Cotton Candy

「ところで榎木」

藤井の静かな声に、拓也はビクっと反応する。

「俺、一応怒ってるんだけど」

「…うん」

「今日のすれ違いは、誰のせい?」

「…僕です」

「補導員から助けたのは?」

「藤井君…」

「何か言う事は?」

反省を促すかのように、一問一答をする。

「ごめんなさい…」
素直に謝る拓也。

「お詫びの印、貰わないとな」
藤井が意地悪く微笑む。

「…古典の授業ノート、5限分…」
拓也はチラっと上目遣いで見上げる。

「うーん…それも魅力的だけど…」
片目を瞑ってニヤリと笑う。

「キス」

「え…?」

「榎木からキス、まだされた事ない」

「えっえっ…だって…」
真っ赤になって拓也は狼狽える。

グイっと腕を引き寄せられ、
「拓也」
と耳元で名前を囁かれビクっとする。

「ね、拓也?」

「――――っ、目!」

真っ赤になって拓也は顔を上げる。

「目、瞑って!」
照れ屋の拓也の精一杯。

藤井はふっと微笑んで
「ハイ」
と目を瞑る。

ドキドキと逸る心臓に小さく深呼吸をして、拓也は藤井の首に腕を回す。

触れるだけの口付け──。

そっと唇を離すと、すかさず藤井の手が拓也の耳の後ろに回り、
「足りない」
と囁き、今度は藤井から深く唇を合わせた。

「!?…っ」

藤井の舌が入り込み、拓也の舌を絡める。

「…ふっ、んん…」

息苦しさに、首に回していた手で、拓也は藤井の背中を叩く。

そっと唇を離され、
「ごちそうさま」
と藤井はニッコリする。

「藤井君!」
拓也が恥ずかしさから抗議の声を上げると
「何か文句でも?」
と藤井は意地悪く笑って睨み付ける。

「…ありません」

今日は何も言えない…と拓也は観念し、その様子を満足そうに藤井は見て

「もう一回」

と口付ける。
深くなるキスに、今度は拓也も抵抗せず、舌を甘く絡めた。


-2013.01.24 UP-
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