Mint×Vanilla=Cotton Candy

急いで待ち合わせ場所に行くと、藤井の姿は既になかった。

「当然だよね…」

拓也は、ハァ…と、走って来た息の乱れと溜め息が混ざった大きな息を吐き出した。

ケータイをかけてみるけど、数コールで留守電に切り替わる。
拓也はケータイをポケットにしまって、藤井の行きそうな所へ片っ端から捜しに走った。


(いない…)
本屋・CDショップ・レンタルショップ・藤井の好きな服屋…。
森口にもケータイをかけてみたけど、いなかった。

いつの間にか陽も傾き、家に帰ってるかも…と拓也は藤井の自宅へ電話をかけてみる。

『はい、藤井でーす』
数コール後、オシャマな声が聞こえた。
「あ、一加ちゃん?」
『拓也お兄様?』
どうしたの?と一加が聞く。

「うん…藤井く、昭広お兄さん、帰ってないかな?」
『昭広兄ちゃん?まだよ?今日デートじゃなかったの?』

(デ…デート…)
改めて言われると、照れるフレーズだなと一瞬思った拓也だが、すぐに思考を戻し

「あ、いや、戻ってないならいいんだ!ありがとう」
『まーた、昭広兄ちゃん、拓也お兄様に失礼な事したのね!全くデリカシーないんだから!』
一加が怒ったような口調で言う。

「いや…今回は僕が悪いから…」
ポツリと呟くと
『え?』
と聞き返され、ハッと我に返る。

「いや!一加ちゃん、ありがとね、じゃ!」
と慌ててケータイを切る。

拓也は、もう一度、藤井の行きそうな店や場所を覗きに走った。



すっかり暗くなったが、全然見つからない。
ケータイも繋がらない。

(藤井君…)

このままダメになっちゃうのかな…。
僕はまだ、こんなに好きなのに。
いつも、藤井君を怒らせるのは同じ原因。
もう、こんな自分、大嫌いだ――――!!

グルグルと思考がダークにハマっていき、繁華街をトボトボと歩いてると、

「君…」

と声を掛けられた。
拓也は顔を上げると、そこはゲーセンの前で、補導員らしき男の人が二人いた。
「こんな時間に何やってる?どこの学校だ?」

(ヤバ…)
腕時計を見ると21時半…段々取り締まりの補導員が出て来る時間だった。

「あの…えっと…」
しどろもどろと答えてると、
「!?」
後ろからグイっと腕を引っ張られ

「今から帰りますー!!」

と腕を引っ張った張本人が叫び、その場から走り去る。

「あ、コラ!!」
補導員達が慌てているが、追ってくる様子もなく、その場をやり過ごす事が出来た。

「ふ…藤井君…」

繁華街から外れた路地に入って足を止める。
「あ、ありがとう」
拓也は、助けて貰ったお礼を言う。

「この、馬鹿!!」

流石に心配を掛けたと思い、藤井の罵声を甘んじる。
「てっきりもう来ないと思ってたのに…」
藤井は、溜め息を吐いて拓也を見る。

「ふ、藤井君こそ、どこ行ってたの?僕捜したのに、ケータイにも出ないし…」
恐る恐る拓也は聞いてみる。

「ネットカフェ入って、いつの間にか寝てた。そんで、高校生退室の時間になったから、起こされて出て来たら榎木補導員に捕まってるし…」

「そ、そうだったんだ…」
(マナーモードにして寝てたら、ケータイも気付かないよね…)
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