Mint×Vanilla=Cotton Candy

「困るよ!成一さん!!」
「なっ!すぐに帰って来るから、じゃっ!!」
「僕、これから約束あるのに…っ」

ある休日。
拓也は藤井と出掛ける約束をしており、時間に合わせて家を出ると、丁度向かいの成一と鉢合わせた。
今、木村家には成一しかおらず、宅配便が来るとかで家を空ける事が出来ないが、成一もまた急用が出来たという事で、拓也に留守番を押し付けたいきさつが、先の会話だった。

一時間程で戻ると言ってたが―――…

「困ったなぁ…取り敢えず、藤井君に連絡しなきゃ…」

木村家に上がり、リビングに行って、拓也はケータイを取り出した。

数コールの後、藤井が出た。
『もしもし?榎木?』
「あ、藤井君?」

藤井もまた、待ち合わせ場所に向かっている所だった。

「あの、ちょっと、一時間くらい遅れるんだけど…」
申し訳なさそうに拓也は告げた。
『あ、そうなのか?ん、分かった。適当に時間潰してる』
すんなり了承が取れて、ホッと胸を撫で下ろす拓也。

ケータイを切って、そわそわしながら時計を見る。
(成一さん、早く帰って来てよー)
家主不在での他人の家での留守番に加え、約束を控えている事で、拓也は余計に落ち着かない。
TVを点けて見ても、全く耳に入らない。


…………。
(遅いっ!!)
時は既に一時間を経過しようとしているが、宅配便も来なければ成一も帰って来ない。
痺れを切らして、拓也は成一のケータイに電話をかけた。

「成一さん!? 遅いよっ!! 僕約束あるのに困るよー!!」
コール音が途切れた瞬間にまくし立てる。
『お!?まだ来ないか?分かった、今帰るから!あと30分くらい待ってろ』
「早くしてね!!」

成一との電話を切った後、すぐに藤井にかけ直す。

「藤井君、ゴメン…あともう少しかかりそう…」

『…………何?』
聞こえた藤井の溜め息に拓也は少しビクつく。
その溜め息の理由に、少なからず拓也も予想はつくからだ。
恐らく、藤井は遅刻の理由を察している。
「え?」
『遅れてる理由、何?』

(やっぱり…)
このパターンはいつものパターンだ…。

拓也はそう思いながら、恐る恐る理由を述べる。

『分かった。今日はもういいよ』
「ふじ…」
『引き受けた以上、途中で抜けられないだろ』
聞く耳持たずで、拓也の言葉を遮る。
『じゃあな』
プツ――― ツー ツー …。

無情にも切られてしまった。

しばしケータイを握りしめて呆然としていると、成一が帰って来た。

「わりぃわりぃ、拓也、この借りはちゃんと返すから!」
とヘラヘラ謝る成一に対して、拓也はキッと涙目で睨み
「僕と藤井君に、成一さんの店のフルコース!!」
と叫び、木村家を飛び出して行った。

「フ、フルコース!?」
拓也の余りの勢いに圧倒されつつ、「藤井」のオマケ付き。
「あちゃー…マズった?」

ちょっと申し訳なかったかな、とチラっと思った成一だった。
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