カフェオレ、ミルク抜きで。

「もしもし、榎木!?」
『藤井君?ヘンってどうかしたの!?』
本気で心配している声。
あぁ、そうだよ。
榎木はこういうヤツ…。

「いや、何でもないから」
『でも…森口君からわざわざ連絡あるなんて、よっぽどの事じゃ…』

本当に心配している様子に、藤井は森口をキッと睨み付ける。
「本当に何でもないから。ちょっと、こう、口喧嘩?でも俺らはいつもの事だし」
『そう…?ちゃんと仲直りしてね…?』
「あぁ、分かってる。ごめんな?折角楽しんでたところなのに…」
『ううん…藤井君の声聞けて、嬉しかった』
「…俺も」

「…おい、俺のケータイでイチャつくな」

ハッと我に返り、
「じゃ、また明日な!」
『うん、また明日』

電源ボタンを押して、森口にケータイを渡す。
「………」

少し気まずさを感じる藤井に対して、森口は
「まぁ、ラブラブでよろしい事ー」
とおどける。
お陰で変な空気になる事もなく
「うるせっ」
と答えて軽く森口の肩を小突いた。

何だかんだで、この親友とは気が合うのだ。



「じゃあ、コレ借りてくぞ?」
読みかけの森口オススメのコミックスを数冊借りて、藤井は玄関に向かう。
「おぉ。返すのいつでもいいから」
「サンキュ」

特に次の約束を取り付けるわけでもなく、お互いタイミングが合えば気軽に会う。
それで疎遠になっていく相手もいるが、学校が違っても付き合いが続くのは、やっぱり良い関係を築けている二人なのだろう。

森口のマンションを出て、自転車を跨ぐ。
家に向かって自転車を漕ぎながら、藤井はふと思いを巡らせる。

気の置けない親友に、愛しい恋人。
学校へ行けば、まあ楽しい友人達。

(恵まれてるなぁ)

そして、そんな思いを巡らせてみても、一番に浮かぶのは拓也の事。

今日は会えなかったけど、その分明日が楽しみになる。
会えない事も、程良いスパイス。

(我ながら、ちょっとクサいかも…)

空には一番星が輝き始めている。
明日も晴れるらしい。

(明日は…体育があるなー)
確かバスケで榎木とは同じチーム!

「っしゃ!」
信号が青になり、より張り切ってペダルを漕ぐ脚に力を入れる藤井だった。


-2013.01.20 UP-
2/2ページ
スキ