カフェオレ、ミルク抜きで。

「今日は、拓也はいいのか?」

とある日曜日、ここは森口の家、藤井が遊びに訪れていた。

「ああ。今日は家族サービスだって」
藤井は、森口のベッドに寝っ転がって、久しく読んでなくて途中になっていたコミックスの続きを読む。

「榎木家は相変わらず仲良しだなぁ」
森口もベッドの脇に背中を寄り掛かけてフローリングに座り、雑誌をめくっている。

「実も相変わらずだぜ」
「まあ…まだ小1なら、甘えるだろ」
「そんなモンかぁ?」
あのブラコン振りは、小1なら当たり前…?
いや、行き過ぎてるだろ…?

「ところで昭広」
「あ?」
改まったふうに呼ばれて藤井はコミックスから顔を上げて森口を見た。

「お前は、拓也のベッドにもそうやって平気で寝転がるのか?」
普通、俺がベッドで寛いでお前が床だろう。

「まさか」
好きなヤツのベッドに平気で寝転がるとか有り得ねぇだろ、お前正気?

藤井は、森口には拓也との付き合いを伝えていた。
親友相手に隠す必要もないし、例え黙っていたとしても付き合いの長いこの親友はすぐに気付く。

「親友のベッドは平気なのかよ」
「…今更遠慮する相手じゃねぇだろ…」
「そうだけど…何かムカつく。降りろ」
「はぁ?」
不毛な言い合いが続きそうな気がして、いよいよ面倒くせぇと藤井が思い始めた頃…

「拓也が、昭広が俺のベッドに平気で寝るって知ったらどう思うかな♪」

!?

(榎木が知ったら…?)

①無垢モード→「ふーん?相変わらず仲良しだねぇ」ふんわり笑顔付き

②ちょっぴり嫉妬モード→「森口君のベッドで寝てるの?」頬を膨らませて上目遣いの睨み付け

…………。

「萌える」

「はっ!?」
意外な返答に森口は呆気に取られる。
「萌え…?えっ?何で…!?」

「……………」
物思いに耽けるかのように、藤井はコミックスを置きベッドの上でゴロンと寝返りを打ち、森口に背中を向けた。

何やらヘンなスイッチを入れてしまった…。
そう感じた森口は、ケータイを取り出した。

「………あ、もしもーし?拓也ぁ?」

「!?お、おい、仁志!?」
かと思いきや、突然親友が繋いだケータイの先が自分の恋人である事に気付き、慌てて起き上がる藤井。

『あれ、森口君、どうしたの?』
家族で外出中の拓也の後ろは、少し騒がしい様子が伺える。

「昭広がヘンー」
『えっ?何…』
「仁志、てめっ!」
なんて事しやがる、と藤井は無理矢理森口のケータイを奪い取った。
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