ずるいから好きです

そっと拓也の口内を舌でなぞる。
拓也の舌を捕え、遠慮がちに絡めた。
刹那、拓也の肩が小さく跳ねる。

(待っ…)
少しできた隙間から声を出し待ったをかけようとした瞬間、

「…っあ」
艶を帯びた声が漏れた。

!?

びっくりした拓也は、藤井の胸を押して開放される。

「な…何…今の」
顔…というか、全身が今までにないという程熱い。
「何って…榎木の声」
「わー!!わー!!」

はっ恥ずかしい…!!

全身茹でダコ状態でパニックを起こしてる拓也を見て

「ぷっ」

藤井は吹き出す。
これは無垢というより
「こっ子供…っ」

「!?」

拓也は、恥ずかしさで真っ赤な顔と潤んだ目で藤井を見返す。

「な…ひど…っ」

「正直に答えろよ?」
ククッと笑いながら、藤井は拓也に言った。

「嫌だった?」
「………」
躊躇いがちに首を左右に振る。

「じゃあ…気持ちよかった?」
「ふじ…」
「ちゃんと答える」
「………っきっ」
潤んだ上目遣いで睨み付けながら
「気持ちよかった…っ!!」

言った後、ぎゅーっと固く目をつぶってふるふると震える。

そんな様子を藤井は満足そうに見て

「俺も!」

と、ぎゅっと拓也を抱きしめる。

「もう一回していい?」
「なっ…!」

これ以上ないっていう程に体温が上昇しているのに、更に熱くなる。

「な、拓也…」
「!?」

一瞬怯んだ隙に、唇を奪われる。

藤井君の卑怯者―――!!

(あぁ、もう…)

そんな君が大好きだよ!
悔しいなぁ!!

「拓也…」
一瞬唇を離され
「今度は声、我慢するなよ…?」

「ふっ…!?」

瞬間、口付けが深くなった――――。




☆――――――――☆
「初々しい恋10題」より
"ずるいから好きです"

お題提供:確かに恋だった


-2013.01.13 UP-
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