ずるいから好きです

藤井君とキス、しました。


「榎木、榎木!」
はっと我に返って声の主を見る。
「な、何?藤井君」
「何って…珍しく進んでないから」
今日は土曜日、ここは藤井家。
学校で出ている課題を一緒にしようという事になり、拓也はお邪魔している。
「あ…」
「少し休憩するか。お茶入れてくる」
「うん」
パタン、と部屋のドアが閉まり、藤井の部屋(正確には藤井家の男兄弟部屋)に一人残された。

「はぁ」
拓也はため息をついて、全然進んでいないレポート用紙を眺める。
(集中できない…)
休憩するなら片付けた方がいいかなと思い、小さな折り畳み机に広がった参考書や教科書を重ねる。

「待たせたー」
と、トレイにコーヒーとシュークリームを載せて藤井が部屋に戻って来た。
「お構いなくなのに」
拓也は一度重ねた参考書等を全部まとめて机の下に下ろし、スペースを作る。
「頭使った時は、甘い物!」
と、藤井は持って来た物を置きながら
「召し上がれ」
と笑顔で勧める。
「頂きます」
拓也も笑顔で手を合わせ、丁寧に挨拶をする。

シュークリームを頬張りながら、最初は他愛もない話で盛り上がる。

しかし
「んん…?」
予想以上にクリームが入っていたようで、口に入りきれなかったクリームが唇の端に残った。
拓也は指で拭いながら、
「すごいクリームたっぷりだねぇ」
と、笑いながら左手でポケットティッシュを捜そうと自分の鞄を探る。

すると、藤井は拓也の右手首を掴み、クリームの付いた人差し指をペロっと舐めた。

「ふっ藤井君!?」
「甘い」
「そ、そりゃ甘いよねぇ!?」
慌てて色気も何もない返答をする拓也。
「うん、甘い」
指先を口に含み、ちゅっと吸い上げる。
「…っ」
ピクっと肩が震えた。

「ふ…じい、君」
ドキンドキンと心臓がざわめく。
「榎木…」
藤井の左手は拓也の右手を掴んだまま、右手は拓也の頭の後ろへ。
(あ…)
瞬間的に目を閉じると、唇と唇が重なった。

この前とは違う、少し長いキス。
「ぷはっ」
息苦しさに一瞬唇を離した瞬間
「!?」
藤井の舌が拓也の口腔に入って来た。
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