本物のキスを君に

「男だらけのグータン・●ーボー!!」
「ぶっちゃけ恋バナー!!」

いつもの如く、昼休み。
いつもの如く、お調子者二人のテンションが高い。

「こ…恋バナ…?」
凄く凄ーく嫌な予感がする。
と拓也は思い、藤井をチラ見する。
藤井も同じ表情をしている、という事は、同じ事を感じているのだろう。

「何も自分からノロケ聞く事はなかろうに…」
「全く…」
反対に、冷静にいい意味でマイペースを保つ布瀬と小野崎は、アホかと言わんばかりに各々の昼食を口に運びながら呆れている。

「黙れリア充!」
「お前らは彼女持ちだからいいよなぁ!!」
二人共、他校に彼女がいる模様。
「きっかけは?」
「どっちが告ったの?」

質問の矛先が、布瀬と小野崎に向いた。

(よ、よかった…)
藤井と付き合う事になってまだ数日。
その事実ですら、嬉しい反面恥ずかしいのに、ましてや人に語るなんてとんでもない!
(藤井君も…喋んないでよ…?)
箸の先をくわえたまま、隣に座る恋人をチラ見する。

そんな視線に気付いた藤井は
「言わねぇよ」
と、小声で返事をし、いつも通りのポーカーフェイスで弁当のおかずを口に放り込んだ。
まぁ人に話すほどの事は二人の間にはまだある訳ではないが。
安心した拓也も笑顔に戻ってミートボールを箸で掴もうとした瞬間、

「藤井と榎木は?」

「は?」

いきなり振られた。

「だから、ファーストキス!!」

ファーストキス......。
笑顔の拓也から冷や汗が流れる。

「あー…俺はまだ」
「え?マジで?」
「藤井モテるのに?」
「俺、付き合った事ねぇもん」
「えー!?」
「好きじゃない奴と付き合うつもりないし」
「今時硬派!!」

「じゃ、榎木───…」
「僕!先生に呼ばれてたの忘れてた!」

素早く途中だった弁当を片付けて、「じゃ!」と拓也はダッシュして校舎内へと消えて行った。

「えっ榎木ー!?」
「えっ…えっと…今の反応って、もしかして?」

たっくん、経験アリ――――!?

「藤井の未経験も意外だが、たっくんの経験アリはもっと意外だ!!」
「純粋無垢かと思ってたら、大人の階段一段は昇ってたとは…」
「藤井、知ってたのか…?」
と布瀬が声をかけようとしたが、当の藤井は固まっていた。

「知らなかったんだな」
布瀬も少し同情気味に溜息をつく。
「ま、まあ、アレじゃね?告ってきた女が積極的で、無理矢理奪われた、とか」
小野崎も慌ててフォロー。
「あーそれありそう。年上にもウケいいから、中学ン時に先輩に、とかさぁ」

キーン コーン …

「あ、予鈴」
「ほら、藤井、教室戻るぞ」
中橋と穂波が藤井の弁当箱を片付けて、布瀬が腕を引っ張って立たせる。
「この前のデート騒動ン時と同じじゃねぇか…おい、しっかりしろって」

教室に戻ると、まだ拓也は戻っておらず、本鈴ギリギリに戻って来た為、話をする事も出来ないまま、授業が始まった。
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