それは幸せなアレルギー

2限目の眠い古文の授業が終われば次は化学の授業。
「藤井くーん、次移動だよー」
やっぱりしっかり寝てしまった藤井に声をかけて起こしにかかる拓也。
「んあ?」
寝ぼけた返事が返って来たが、一応は起きたらしい。
「おっ前、堂々と寝過ぎ」
寝ぼけ眼で古文の教科書をしまい、化学の教科書を机から出す。
「でも、成績悪くないの何で?」
クラスメートに聞かれ、
大分覚醒した藤井は
「そりゃ…」
教科書やペンケースを持つとガタっと立ち上がり
「榎木の教え方が上手いから」
と、拓也の頭をポンポンと撫でた。

「────っ!!」

不意に触れられ、拓也は手にしてた教科書一式をバラバラと落とした。

「榎木!?」
「あーあ、全部落として…」
「ごっゴメン」
クラスメート達が一緒に拾うのを手伝ってくれる。
藤井も資料集を拾って渡そうとすると

「あ…」
かーっと顔が火照る。
「ぼっ僕!先行ってるね!!」
と、拾い集めた教材を持って一人で教室を飛び出して行った。

残された藤井とクラスメート達。
「藤井…何か榎木にしたのか…?」
一人が藤井に聞く。
「何もしてねーよ!」
慌てて答える。
自宅でシャワー浴びさせたけど。
それ以上は何もしていないのは、紛れも無い事実。
勿論そんな事言う訳ないが。

「でも、榎木のあの反応って…」

恋してます状態だよなー?

級友一同の視線が藤井に集まる。

「今までの榎木も、藤井の事好きだよなぁとは思ってたけど」
「色気まで加わったというか…」
「ヤバイ…榎木可愛いすぎるだろ…」
藤井に聞こえないように話す級友達。

「おい。化学室行かなくていいのか?」
何やらコソコソ話してる級友達に藤井が声をかける。
「あ…!!」
バタバタと隣の特別棟の化学室へ。

でも、そこには先に行った筈の拓也の姿はなかった。

「榎木は欠席か?」
実験中、藤井は化学の教師に聞かれた。
「あ…と、」
「榎木は体調悪くて保健室です」
すかさず友人がフォロー。
「サンキュ」
「いいけど…榎木どこ行ったんだろな?」
「…」
「ホラッ実験集中!」
バンっと背中を叩く。
「後で榎木のこのレポート手伝うんだろ?」
にっと笑って試験管を藤井に渡す。
「ああ」
授業が終わるまであと20分。
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