それは幸せなアレルギー

『また明日』
そう藤井君からメールを貰って眠りに就いた。
次に目覚めた朝は、いつもと同じようで、何かが違う気がした。


「拓也…?」
「何?パパ」
春美は不思議そうに拓也を見て声をかけた。
「いや…別にいいんだけど…砂糖5杯目入れたぞ今」
「え!?」
拓也の手元のコーヒーには、6杯目になろうとしているシュガースプーンが。
試しに飲んでみると
「…ムリ」
「そりゃそうだろ…」
勿体ないけどシンクに流して、新しいコーヒーを注ぐ。
「何だ?悩み事か?」
「違っ…」
瞬間に顔が赤くなる。
(あ…)
パパの顔がキョトンとした顔になったけど、絶対何か気付かれた。
そう感じた拓也は口を開いた。
「あの、パパは…」
(ママへの気持ちに気付いた時、涙が出たんだよね?)

「────っ、やっぱいいや!」
えへへーと笑いながらはぐらかす。
(きっ聞けないよ、そんな事!!)
春美はふっと軽く息を吐くと
「まあ、多いに悩め若者!」
と冗談混じりに言った。
すると今度は実に向かって
「実ー、今日はパパがご飯作るからなー何がいい?」
と話す。
「カレーライス!」
「じゃあ、学校終わったら、人参とサラダ用のブロッコリー買っといてくれんか?」
「りょーかーい」

朝の榎木家の食卓は、短い時間でも、必ず三人でコミュニケーションを取って一日が始まる。
「兄ちゃんは今日遅いの?」
「うーん、委員会があるからね、いつもよりは」
「家の事は気にせず、でも遅くなり過ぎずに帰って来いよ」
「うん、分かってる。ごちそうさま」

食器をシンクに運んで、鞄を手にした拓也は実と春美に向き直った。
「行ってきまーす」
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