雨と涙の一雫

「榎木、大丈夫か!?」
「ひゃービチョビチョ」
制服の雨粒を手で払い落としながら拓也は空を見上げた。

学校帰り。
二人で電車から降りて歩いていたら、突然降り出した大粒の雨。
取り敢えず走って、通り掛かった公園の東屋ヘ逃げ込んだところだった。

「―――っくしゅっ」
拓也から小さなクシャミが一つ。
その様子を見た藤井は
「冷えるな…こっからだと俺ん家のが近いか?」
と呟いた。
「藤井君…?」
片腕を抱いてふるっと寒さに身を震わせた拓也が聞き返すと
「風邪ひくし、一度俺ん家行こう」
藤井は拓也の手を取って走り出した。


鍵を開けて玄関に入る。
「あれ?一加とマー坊、まだ帰ってないのか?」
「あぁ、二人なら今日はウチだよ。ヒロも一緒でみんなで宿題するとかで…僕昨夜おやつ用意したもん」
「用意?って作ったのか?」
藤井がタオルを渡しながら聞くと
「うん。プリン」
ほわっと笑って答える拓也。
「みんなで宿題やるなら、ご褒美用意しなきゃ遊んじゃうでしょ?」
何と用意周到な事か。

「―――っしょん」
「あっと、風邪引くからシャワー浴びて来いよ榎木」
「え!? いいよタオルだけで」
慌てて断るも
「ダメ。もうすぐ期末だから体調崩しても困るだろ」
ほい、と藤井は洗濯された自分のシャツとデニムパンツを渡して拓也を脱衣所に押し込む。
「う…じゃあ、シャワー頂きます」
「しっかりあったまれよ」

パタンとドアが閉まる。

……………。
(別に他意はなかったけど…)
この状況、堪えれられるか?俺。
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