惚れた弱みと小悪魔と

「今日のHRは以上!」
待ちに待った放課後。
しかし藤井にとっては最悪の放課後。

「榎木ー、楽しんで来いよ♪」
「もーからかわないでよ!また明日!」
教室を出る間際、拓也はチラっと藤井を伺い見たが、目が合う事はなかった。

「まあまあ、昭広君。今日くらい俺達に付き合いたまえ」
拓也が誰かとデートしてるかと思うとまっすぐ家に帰る気にもならず、クラスメート達とファーストフード店でダベる。
と言っても藤井は相変わらず上の空で、仲間達の話など全然聞いてなかったが。

適当に切り上げて、解散。
陽は大分傾いて、空には一番星が輝き始めた。

(榎木はまだ帰ってないのだろうか…)

携帯を鞄から取り出し、拓也のアドレスを開いてみたが、メールも発信もせず携帯を閉じた。


「ただいまー」
玄関を開けると、中から美味しそうな香りが漂って来た。
「あっ昭広兄ちゃん!やっと帰って来たー!」
「お帰りなさいですー」
一加とマー坊が居間から出て来た。
「あれ?一加何でエプロンなんか…」
言いかけたその時、
「お帰りなさーい、藤井君!」
制服のカッターシャツを腕まくりし、更にエプロンを着けた拓也が顔を出した。

「―――――!?」

「何固まってるのよ昭広兄ちゃん!」
「息してますかー?」
妹・弟につんつんつつかれ我に返る。
「えっ榎木、何で!?」
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