変わらないきみのまま

「まあ、アレだな。昔からお人よしは榎木のいいところでもあるんだもんな」
二人で並んで校門に向かう。
「ムッ。だからお人よしじゃあないよ」
頬を膨らませながら反論をすると、
「こういうところも昔から変わらない」
ヒヒッと笑いながら膨らました頬を藤井につつかれた。
拓也はかぁっと顔が熱くなるのを感じ、つつかれた頬を押さえて
「藤井君!!」
と抗議の声を出す。

「藤井君だって…っ」

お?と何か反撃が来るかと藤井が身を構えると

「昔から、優しいところは変わらないじゃないか…!」

「!?」
思いもよらない反撃に、今度は藤井が赤面した。


変わらないきみのまま──そのままのきみがスキ。

幼なじみって、ちょっと複雑でくすぐったい。



次の日。
「昨日は本当助かった!ありがとなー榎木!」
登校すると、放課後業務を押し付けた、もといお願いした日直の相方・小野崎が朝一でお礼を言いに来た。
「そんなーいいよー」
相変わらずの笑顔で答える拓也の横で藤井が
「全くだ。今日榎木に昼メシ奢れ」
と口を挟む。
「えっいいよ!そんなの!小野崎君、気にしないでね!」
と言ったのに…。

昼休み。
「藤井の睨みがマジ怖いから」
と、ささやかながら購買部の人気ベーカリーが2つ届いたという事です。



☆――――――――☆
「幼なじみに恋する5題」より
"変わらないきみのまま"
お題提供:確かに恋だった
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