変わらないきみのまま

「なーんーで、お前はいつもいつもそうお人よしなんだよ!」
突然怒鳴られて驚く拓也。
「えーでも、小野崎君だって事情があるんだし、無理だったら僕だって引き受けないよ」
ムッとして言い返す。
「そんなんだから利用されるんだ」
「利用って…!お互い様って言葉知らないの!?」

イライライライライライラ
ムカムカムカムカムカムカ
「帰る!」
「バイバイ!!」

────売り言葉に買い言葉。
「何か昔も、こんな言い合いしたよねぇ?」
一人になった教室で溜め息を吐きながら、一先ずは仕事を片付けようと拓也は日誌の続きを書く為ペンを握り直した。


「失礼しましたー」
日誌を担任の机に置き、教室の鍵を所定の場所に返す。
これで日直の仕事はおしまい。
職員室を出て、また一つ溜め息をつきながら昇降口へ向かう。

(藤井君、まだ怒ってるかなぁ…...)

靴箱を開け、靴と上履きを履き換えて顔を上げると、そこには藤井が腕組みをして待っていた。

「さっきは悪かったな」
と、昇降口脇にある自販機のココア缶を差し出された。
「あ、ありがとう!」
とココアを受け取る。
(あったかい…)
缶の温もりでさっきまで沈んでいた心まで温かくなった気がした。
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