白旗3秒前
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やってらんねぇ。気分は最悪だ。
いつのまにか交換留学とやらでやってきた人間の世話役にされた俺様はそれまでの自由を失った。ハッキリ言って面倒を見る義理なんてないが、ルシファーの言うことだから無視すると後が怖ぇ。つーかディアボロ殿下が関わってるから余計やべぇ……クソ、腹立つな。
そんなわけで、こいつは事あるごとに俺を頼ってくるようになった。今も教科書がなくなったとかどうとかどうでもいいことで俺様の貴重な時間を奪いやがる。あのなぁ、時は金なりって言葉が人間界にあんだろ。金と同じなら失いたくなくて当然なんだっつーの。用件聞いて、テキトーにあしらって、そんで終わりだ。用が済んで良かったろ?
なのに、なんでそんな傷ついた顔してんだ……わけわかンねーな人間は。
おまけに来なくていい時に寄ってくるくせして、急に俺の目の届かないところにいなくなる。再三忠告はした。はじめこそ食われて困るのはコイツだけだからと放置を決め込もうとしたが、そのせいで三時間の説教を食らった。それ以来コイツの危機は俺の危機として行動してやってんのによぉ。
……あ!
またどっか行きやがったチクショウ!
「正直、もう限界なんだよね」
ようやく見つけたと思ったらクラスの野郎に絡まれてやがる。俺様をここまで苦労させてんだからすぐ助けてやんのも癪だ、死ぬ前に助けりゃいい。腕の一本くらいなくなっても自業自得だろ。
「君みたいな人間がこんなとこ歩いてたら、食われて当然なんだよ」
まぁ全くもって同意だな。俺がうんうんと頷く間にアイツは野郎に詰め寄られていく。おーい、そこ後ろ退がっても壁だぞ。
そしてとうとう背中が壁にぶつかった頃にアイツがふいに俺の方を見た。まん丸い目が俺を見つけて、そして――
「オイ」
俺が何も言わずとも、コイツに絡んでいた野郎は情けない声を出してどっかに行っちまった。何謝ってんだよ、まだ声かけただけじゃねーか。これだから雑魚はよ。
それより、だ。
目の前の人間が危機は過ぎ去ったとばかりにホッとしているのがどうにも気に食わねぇ。ありがとう、じゃねェだろ。俺様はな、お前がさっき襲われそうになってたやつよりずーっと怖いんだよ。わかってねぇなら教えてやる。
壁を背にしたままのコイツの顔の真横に足裏で蹴りを入れる。ちょっと壁にヒビが入ったのはゴアイキョーってことで。驚いて固まる様に気分が良くなった俺は、そのきっちり結ばれたネクタイに手をかけてぐっと引き寄せた。
「で、助けてやった礼は? なんかねーのかよ、なぁ?」
呑気なツラを覗き込む。俺様に凄まれてんのに抵抗しねぇ、声もあげやしねぇ。ただ真っ直ぐに俺を見るだけの瞳がゆらゆら揺れる。泣くならそれでもいい。すぐ泣くのなんて弱者丸出しでおもしれーじゃねぇか。
けれど、そうはならなかった。
ゆっくりと一度瞬きをした後、嘘みたいにケロッとした顔になったことに驚いた俺の手が緩んで、アイツが俺から離れた。礼の内容を考えておくなんて言いながら駆けていくちっちぇー背中を見つづけることしかできない俺。ようやくハッとした頃には、アイツはもういない。
学習能力ねーのかよ!一人でどっか行ったらまた同じ目に合うだろうが!
「……くそっ、なんだってんだ!」
世話役として世話をするために再びアイツを追いかける。その間、アイツが俺を見つけた時のあの嬉しそうな顔がいつまでも頭に焼きついて離れなかった。
いつのまにか交換留学とやらでやってきた人間の世話役にされた俺様はそれまでの自由を失った。ハッキリ言って面倒を見る義理なんてないが、ルシファーの言うことだから無視すると後が怖ぇ。つーかディアボロ殿下が関わってるから余計やべぇ……クソ、腹立つな。
そんなわけで、こいつは事あるごとに俺を頼ってくるようになった。今も教科書がなくなったとかどうとかどうでもいいことで俺様の貴重な時間を奪いやがる。あのなぁ、時は金なりって言葉が人間界にあんだろ。金と同じなら失いたくなくて当然なんだっつーの。用件聞いて、テキトーにあしらって、そんで終わりだ。用が済んで良かったろ?
なのに、なんでそんな傷ついた顔してんだ……わけわかンねーな人間は。
おまけに来なくていい時に寄ってくるくせして、急に俺の目の届かないところにいなくなる。再三忠告はした。はじめこそ食われて困るのはコイツだけだからと放置を決め込もうとしたが、そのせいで三時間の説教を食らった。それ以来コイツの危機は俺の危機として行動してやってんのによぉ。
……あ!
またどっか行きやがったチクショウ!
「正直、もう限界なんだよね」
ようやく見つけたと思ったらクラスの野郎に絡まれてやがる。俺様をここまで苦労させてんだからすぐ助けてやんのも癪だ、死ぬ前に助けりゃいい。腕の一本くらいなくなっても自業自得だろ。
「君みたいな人間がこんなとこ歩いてたら、食われて当然なんだよ」
まぁ全くもって同意だな。俺がうんうんと頷く間にアイツは野郎に詰め寄られていく。おーい、そこ後ろ退がっても壁だぞ。
そしてとうとう背中が壁にぶつかった頃にアイツがふいに俺の方を見た。まん丸い目が俺を見つけて、そして――
「オイ」
俺が何も言わずとも、コイツに絡んでいた野郎は情けない声を出してどっかに行っちまった。何謝ってんだよ、まだ声かけただけじゃねーか。これだから雑魚はよ。
それより、だ。
目の前の人間が危機は過ぎ去ったとばかりにホッとしているのがどうにも気に食わねぇ。ありがとう、じゃねェだろ。俺様はな、お前がさっき襲われそうになってたやつよりずーっと怖いんだよ。わかってねぇなら教えてやる。
壁を背にしたままのコイツの顔の真横に足裏で蹴りを入れる。ちょっと壁にヒビが入ったのはゴアイキョーってことで。驚いて固まる様に気分が良くなった俺は、そのきっちり結ばれたネクタイに手をかけてぐっと引き寄せた。
「で、助けてやった礼は? なんかねーのかよ、なぁ?」
呑気なツラを覗き込む。俺様に凄まれてんのに抵抗しねぇ、声もあげやしねぇ。ただ真っ直ぐに俺を見るだけの瞳がゆらゆら揺れる。泣くならそれでもいい。すぐ泣くのなんて弱者丸出しでおもしれーじゃねぇか。
けれど、そうはならなかった。
ゆっくりと一度瞬きをした後、嘘みたいにケロッとした顔になったことに驚いた俺の手が緩んで、アイツが俺から離れた。礼の内容を考えておくなんて言いながら駆けていくちっちぇー背中を見つづけることしかできない俺。ようやくハッとした頃には、アイツはもういない。
学習能力ねーのかよ!一人でどっか行ったらまた同じ目に合うだろうが!
「……くそっ、なんだってんだ!」
世話役として世話をするために再びアイツを追いかける。その間、アイツが俺を見つけた時のあの嬉しそうな顔がいつまでも頭に焼きついて離れなかった。
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