名取と見る夢
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深夜、仕事を終え家路につく
玄関を開けると自分のものではないが
見慣れた靴がある
(………来てたのか)
部屋は暗いままだ
まっすぐ寝室に向かう
寝室も暗いが、ベッドの上にぼんやり明かりがあった
「いのり…?起きてる?」
「ん〜?ぁ、お帰り〜…」
お帰り、とは言ってくれているが
こちらは見もせず
スマホの画面を見たままだ…
「………もうちょっと何かないのかい?味気ないなぁ…」
「んー… 何かってなにぃ?」
彼女のスマホをのぞくと、何やらゲームをしているようだった
こっちを見ようともしない……
「お帰りなさいのハグとか、キスとか…」
「やだよぉw 何それ、恥ずかしいw」
……ちょっとバカにしたような笑いだ………
「恋人同士ってもっと甘いもんじゃないのかい?」
「わっ…… そのままベッドあがってこないでよ〜
シャワー浴びてないでしょ?」
「……………」
ベッドに上がることを制止される
「人を汚いものみたいに……💢💦」
「ダメダメ〜…お風呂入ってきて」
言われなくてもそのつもりだったから
……言われると癪に触る
「はいはい…… 今行ってきますよ」
その場に荷物を置き、バスルームに向かう
ーーーーー
シャワーを浴びながら
自分たちの関係について考える……
(いつからこんな感じになったんだ……)
前はもっと甘い関係だった気がする
お帰りと玄関まで出迎えに来てくれて
ぎゅっと抱きしめてくれた気もする
(慣れ……てやつかな……)
結婚すると妻がだらしなくなるという話を聞くが、結婚をする前にもうその状態になっている気分だ
バスルームを出て部屋着に着替え、寝室に戻る……
彼女は相変わらずスマホゲームに夢中のようだ
思わず、彼女からスマホを取り上げる
「わっ、ちょっと〜!なにぃ?💦」
「……いつまでやってんの?」
「うーー……いいとこだったのにぃ!
今日のハイスコア!」
まったく… こっちの気持ちに気付いていないのだろうか…?
ベッドに上がり、ゆっくり彼女に近づく………
「……周一さん、髪乾かしてないの?
乾かしておいでよ〜…びしょびしょ」
濡れた髪の俺を遠ざけようとする
「いのりは水も滴る俺を何とも思ってくれないのかい?」
「何とも思わない…
枕濡れたらイヤってことだけ」
そっけないにもほどがある……!
「…ぇ!?💦わっ……何?!」
思わず彼女に馬乗りになっていた
「……前はもっと素直で可愛かっただろ…?」
「し、知らないし……
もー!どいてよっ💦」
俺を押し退け、逃げようとする彼女だったが…
押さえつけて、その動きを封じる
「やだやだ……っ」
首もとに、キスをする
「〜〜っ?!
……ゃ、やだってば!!」
思いの外……
彼女が大きな声を出したので
驚いて体を離す
「………何?
ホントに嫌なわけ?」
「…………」
顔を反らしたまま、黙っているいのりを見て
胸の奥が痛む気がした………
いつから俺たちは
こんな感じになってしまったのだろう
「いのりさ…… 何しにきたの?」
言った後で、自分の胸が痛んだ
言ってはいけない言葉だったように思ったからだ
「………じゃぁ
帰る……
仕事終わりで疲れてるでしょ…
帰るね」
…………確かに、俺は疲れてるのかも
あんな言葉、彼女に言ってしまったのだから
「いや……いのり、ごめん
そんなつもりじゃ……」
「どいて…… 無理、帰るから…」
俺を押し退け、ベッドから抜け出した彼女の手をつかむ
「ごめんって………」
彼女はうつむいてて、その表情はみえない
「…………何しにきたのって………
ひどくない…?
ここに来たら何かしなきゃいけないの?
必ず…ヤらなきゃ、いけないの……?」
「だからごめん……
俺も、ひどい言葉だったって思ってる… ごめん…」
表情はみえないが
掴んだ彼女の手が、小刻みに震えている
「とにかく… 落ち着こう
俺も、だけど……
今、飲み物持ってくるから… 待ってて?」
このまま彼女が帰ってしまったら
それこそ終わりだ……
とにかく、彼女を引き留めなくてはと思った
「いつものでいい?甘めの」
彼女が黙ってうなづいたので、少しほっとした
いのりを寝室に残し、キッチンへ向かう
彼女は甘いミルクココアが好きだ
専用のカップは、二人で買いに行った
(……そういえば、最近は二人で買い物にも行ってないな……)
そのカップを買いに行った頃を思い出す
手を繋いで、街の中を歩いた
ココアをいれながら、ふとリビングに目をやる
テーブルの上に見慣れないものがある
ブルーレイディスクのケースだ
(ぁ、前にもらった……)
自分が出た映画のやつだった
もらったはいいが、パッケージも開けずそのまま放置していたやつだ
(……いのりが見たのか?)
そのケースを手に取り、どんな映画だったか思い返す
「……………ぁ…」
ココアを持って寝室へ戻るが…
少し焦る気持ちがあった
映画の内容は………
ーーーーーー
「いのり…… はい、ココア
甘くしておいたよ」
ベッドで横になっていたいのりが
ゆっくり体をお越した
「………ありがと…」
か細い声で言うと、カップを受け取ってくれた
ベッドに腰かける彼女の隣に座り
ゆっくりココアを飲む彼女を眺める
「………何?
ずっと見られてると… 飲みにくい…」
「フーフーってしてるの、可愛いなぁと思って」
「……………べ、別に可愛くないよ」
そう言ってまたココアに口をつける
「いのり………
あの映画見たの?」
「ぁ………
……ぅん……」
「どうだった?」
「別に…… 普通?
脚本は、悪くないかな……」
「………そっか」
沈黙が、二人の間を流れる
また彼女が、フーフーっと息を吹き掛ける音が聞こえる
「俺にも、少しちょうだい?」
「ぇ、…わぁ💦」
カップを彼女に持たせたまま、少し傾けてココアを飲む
「んー……相変わらずかなり甘いね」
「……………」
うつむきがちに黙っている彼女を見て
確信、とまではいかないが
予感が当たっているのでは?と思ってきた……
「映画……… 最後まで見た?」
「…………見た…」
「ホントに?全部?最後まで?」
「だから、見たってば………」
「………そっか……」
再び流れる沈黙に、俺は確信を持った
あの映画で俺は…………
「ぁ、あの映画………」
沈黙を破ったのは、意外にもいのりの方だった
「ネットの評判、まぁまぁ良かったよ……
たまたまそれが目に付いて……
周一さんの演技が良いとか、周一さんカッコいいとか………
周一さんと女優さんとの絡みが…
エロくて良いとか……」
サイドテーブルに、ゆっくりココアのカップを置くいのり……
(あぁ、やっぱり…………)
俺の予感は的中だ
「……いのりに隠してたわけじゃないんだけど…
特に言う必要もないかと、思って…」
「………別にいいよ、仕事でしょ?
演技………だよね…?」
いのりが俺の方をまっすぐ見る…
少し潤んだような瞳で…
気づいたら、彼女を抱き締めていた
「………演技だよ
演技に決まってるだろ?」
「………演技に、思えなくて……」
「………いのり?」
彼女の異変に気づき、抱きしめていた体を離す
ポロポロと、涙をこぼしていた
「ネットの評判、すごい良かった……
キャスティングも、脚本も……
周一さんの評判も良くて…… 女優さんとの絡みもエロくてヤバいとか…
だから、気になって… 見たんだけど……」
手で必死に涙を拭う彼女が
とても愛しく思えた……
「ぇ、演技に………思えなくて……」
再び、彼女を強く抱きしめる
さっきよりもずっと強く
「……俺の演技がうまいってことかな?」
「………違う、バカっ」
「バカってことないだろ〜?」
「……あの女優さん、綺麗だし
手足長くて、細いし……
スタイル良すぎて
軽く脱いだシーン……ヤバかった…」
恐らく、いのりが俺にそっけなかったのは
慣れやマンネリなどではなく……
「それで、嫉妬してたの?」
やっと、彼女の涙は止まったようだった
「……嫉妬じゃない
自分への、蔑み?
自己嫌悪…みたいな」
「何で??」
「…………わたしじゃ
周一さんに不釣り合いだと思って…
あれくらい、綺麗な人じゃないと……」
俺の胸の中で、その表情はうかがえない
「わたし、浮かれてた……
周一さんと一緒にいられて
……世間にバレたら、絶対叩かれるなぁと思って
あんな女、とか……」
「…………いのり、こっち見て?」
少しだけ体を離して、彼女の顔を両手で包み込むようにする
彼女の泣いたばかりの目は少し腫れていて、まだ潤んでいた
「今度、二人で買い物にでも行こうか?
時間作るよ、最近ずっと家デートだったもんなぁ」
「え…?でも……っ」
何か言いかけた彼女を無視して
顔を近付け
唇を重ねた………
「いのりには、もっと自信をもって欲しいなぁ〜
こんなに可愛いんだから」
「か、可愛くないもん……💦
周一さんと付き合うなら、完璧な美人じゃないと……
それか、鏡見てない無神経な女か…
わたしは、後者の方だったんだなぁって………
あの映画見て気づいた」
(そんなこと考えて、あんな態度だったのか……)
また泣きそうにしている彼女は
とても可愛らしくて、思わず顔がほころんだ
「ね、買い物どこに行こうか?」
「ぇ?
……てか周一さん、さっきからわたしの話聞いてる…?💦
一方的に買い物とか言われても…」
「……聞く必要ないよ」
また、彼女にキスをした…
「いのりのそんな話、聞く必要ないよ……
俺はいのりと一緒にいたいんだから
それに、完璧って何?
俺だって完璧な人間じゃないし、いのりも完璧である必要ない…
お互いを必要としてることが大事なんじゃないのかな?
俺には、いのりが必要だよ…」
「………とかいって、周一さん
完璧じゃん… かっこいいし、メンタル強いし、芝居上手いし、仕事順調だし…」
「そうかな?
いのりがあまりにもそっけないし、キスも拒否るしで不安になって
メンタルぐちゃぐちゃになりかけてたんだけど…?
俺……… すごい必死なんだよ
ね?かっこ悪いだろ?」
「…べ、別に……
カッコ悪く、ない… けど……」
再び彼女を抱きしめると
今度は彼女も俺の背中に手をまわし
抱きしめてくれた
「……ね、買い物
どこに行きたい?何か欲しいものある?」
「………特にない、かな…
てか周一さんと行けるとこなんて、限られてるし…
時間も、夜?夜中?」
「夜中じゃ店開いてないだろ〜?
指輪とか見たいし」
「えぇぇっ?!💦💦💦」
かなり驚いた様子で、俺の顔を見る
「何?その反応……
そこは喜ぶところなんじゃないかなぁ〜…」
「昼間なんて無理でしょ?
人に見られたらどうするの?💦
それに……
指輪なんて付けないし……」
「見られたってかまわないさ
そうだ!ハリー・ウィンストンとか行っちゃう?」
「い、行かない!!💦」
少しずつ、彼女に元気が戻ってきた気がする
照れくさそうにしてる姿が可愛らしい
「いのり、ね?もう決定だから
俺の休みが取れたら行こう
てか休み取る!」
「……行くなら………
顔、隠してよ?💦」
「大丈夫だよ♪」
そのまま、二人でベッドに倒れこむ
「もう拒否らないよね?
今度いのりに拒否られたら、俺…
メンタルぐちゃぐちゃになっていのりに酷いことしちゃうかも」
「こ、怖……」
「それくらい必死だよ、俺」
彼女の髪を撫でる
女優やタレントぶって芸能界にいる女より、ずっと綺麗な髪だ
「いのり…
ずっとそばにいてほしい……」
彼女に、キスを繰り返す
「周一、さん…………
そばにいたい… 誰に
何て言われようと…… そばにいたいよぉ……」
彼女のその言葉だけで、俺は生きていける気がした
「いのり…………」
ーーーーーー
ーーーーーー
仕事が終わり、家路につく
玄関を開けると今日は部屋に明かりが点いていた
(あ、起きててくれた……?)
部屋の奥からパタパタと足音がして…… いのりが玄関に現れた
「ただいま〜
嬉しいなぁ、お出迎え✨」
「ねぇ!!これ!!💢💦」
お帰りなさい……はなくて……
「だから言ったじゃん!
バカなの?!あっさり撮られてるし!
大丈夫だよ〜とか言っちゃって💢💢💢」
彼女の手には今日発売の週刊誌があった
「それのことなら、俺はもうとっくに事務所に怒られてるよ〜
メガネかけてたんだけどなぁ」
「むーだーにぃー!!キラキラさせてるからでしょぉがぁぁ💢💦」
「怒った顔も可愛いよ♪」
「ダメだ……どんだけ頭の中お花畑なわけ……😨」
彼女が持ってる週刊誌、俺はとっくにチェック済みだ
(というか事務所呼ばれて説明させられた)
先日買い物デートをしたわけだが、その様子をどうやら週刊誌のカメラに撮られていたらしく、記事が載ったのだ
「記事の中身呼んだ?
いのりのこと、可愛らしい清楚系って書かれてたよ
年下だろうかって書かれてたのは間違いだよね〜 タメだし」
着替えながら彼女を見ると、ソファでクッションに顔を埋めて何やらブツブツ呟いている
「わかってたもん……歩いてるときから周りに気づかれてたし…
お店入っても…… ムダにキラキラさせて……
案の定撮られて記事にまでなって……
どうせわたしは童顔のちんちくりんですよ〜…
てか顔にモザイクとかって…わたしは犯罪者ですか……うぅ〜…」
(わぁ〜…卑屈〜……😓)
「いのりは一般人なんだから…
それとも、顔だしでもよかったのかな?」
「無理!!バっカじゃない?!」
「口が悪いよ〜…😓💦
仕方がないじゃないかぁ
今の世の中、すぐつぶやいちゃう人とかいるだろ?
週刊誌もそれで気づいたのかな?」
「メガネかけたくらいじゃバレバレだったし…
てか柊たちに何とかしてもらえたんじゃ… 」
彼女の隣に腰かけて、その肩に手を回す
「事務所に説明しろって言われたから、真剣交際ですってちゃんと言っておいたよ
今度からは人目につかないように気を付けろとは言われたけど…
まぁ理解してもらえたんじゃないかなぁ😊」
「……し、真剣交際…💦」
「結婚前提の仲って言ってもよかったんだけど」
「ばっ、……バッカじゃない?💦」
彼女は再びクッションに顔を埋めてしまった
(バカとか言ってるけど、照れてて可愛いなぁ……✨)
そんな彼女の首にキスをする……
「ひゃ、ぁ…っ?!💦
な、何何?!」
「……いのり……」
驚いて顔を上げた彼女に
今度は唇に、長めのキスをする
「周、一さん……っ」
「……いのり
俺には君が必要だよ
周りが何て言おうと…そんなの関係ない
だからいのりは、もっと自分に自信をもって……ね?」
優しく彼女を抱きしめる
彼女を抱きしめると、とても暖かい…
「…………でもしばらくは
お家デートだけだからね💦」
「ぁ、それなんだけど… 引っ越そうと思って✨」
「え?💦」
「新居、探そうよ
二人で一緒に住む家」
彼女は驚いた様子で、固まっていた…
「いのりはどの辺に住みたい?
間取りはどうしようか?
ウォークインクローゼットとか必要?」
「ちょ、ちょ……!勝手に話進めないでよ!」
「えー?じゃぁどうしたいの?」
彼女は顔を赤らめて、またうつむいてしまった
「………こ…、ここ」
「ん??」
「…………ここでいい」
小さい声で呟いた
「ここに………一緒に住みたい💦」
彼女のこのツンデレ具合に、俺はやられっぱなしだw
またぎゅうっと抱きしめる
「く、苦しいってば……!💦」
「だっていのりのデレ具合が可愛すぎるんだもん」
「デレとかなってないし……!」
彼女がそっけない態度だったときは
本当にどうしようかと思ったが……
(俺、愛されてるなぁ………♪)
今は存分に自惚れることができる
彼女が口悪く悪態をつくのも
照れや嫉妬からのものだと思えば
とても可愛く思えた
「今日の撮影でもキスシーンがあったんだけど…
いのりとしてるつもりでやったよ✨」
「はぁ?!バッカじゃない!💢💢💢
いっぺん死ねっっ」
………💦
俺、愛されてる…………?
またしばらくの間、拗ねた彼女に俺は振り回されるのだった……
〜fin〜
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