夏目が見る夢
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晴れてよかった…
それに暖かくて心地いい
お出かけ日和、というやつだろうか
約束の時間まであと少し…
(……こんな感覚初めてだ…)
そわそわするような
わくわくするような
少し不安もある…
(何を話そう…
最初は何て言おう…
こんにちは??………何か違う)
頭の中で色々シミュレーションしてみるが…
どれもしっくりこない……
(………どうしよう…)
不安だけが一気に押し寄せてきた
ふと顔を上げ、雑踏の中に目をやる
「………ぁ…」
小走りでこちらに向かってくる
輝いていた… は言い過ぎだろうか?
でも人混みの中
あなたはすぐに見つかった…
ーーーーーーーーーー
「夏目君、ごめんね!
待たせちゃったかな?」
「……ぁ、いや
全然大丈夫…ですっ」
シミュレーションというより
少女マンガの王道みたいなやりとりに、自分でも驚く……
「映画の時間、大丈夫だよね?」
「うん、たぶん余裕」
「じゃぁいこっか!♪」
笑顔で歩きだす彼女
すごく楽しそうだ……
それだけで
今日は良い日だと思える
「野風さん…」
「ん?」
「あ、いや…っ
何でもない」
用もないのに彼女の名前を呼んでしまった…
人混みの中、君と歩く
野風さんが映画をみたいと言ったので
これまたデートの王道のようになってしまっている…
ただ、その見たい映画というのが…
「楽しみ♪名取さんが出てる映画なんて」
そう、俺たちが見にきたのは
名取さんが出てる映画…
主演ではないが、かなり評判の映画だ
「夏目君は、名取さんと仲いいんですよね?」
「あ、うん
色々お世話になってるよ」
「ふたりでお出かけしたりします?」
「え… お出かけ…?」
そう言われて、記憶を探る…
「……温泉に、行ったかな
でも名取さんは仕事もあるし
あんまり出かけたりは…」
(箱崎邸とかは、お出かけじゃないし…)
「温泉?!」
彼女の目が輝くのがわかった
「温泉!いいですね!
行きたいなぁ〜…」
温泉への憧れで
目がキラキラしてる
恐らく、行ったことはないだろう
(妖なら……
温泉なんて普通行かないか…?)
こうして話をしていると
彼女が妖だと忘れそうになる
そして
的場さんの式だということも……
そうこうしているうちに
映画館にたどり着いた
当然だが、ふたり並んで座る
劇場内を見ると
女性グループが目立つ
(……何となく名取さんファンな気がする…)
あとは… 女性のお一人様や
見るからに… 恋人同士……
俺らも
他の人から見たら恋人同士に見えるだろうか…
恋人同士に見えるなら
それは嬉しい、と思ってしまった…
ーーーーー
「ん〜〜!見にきてよかった!」
劇場を出て野風さんが言った
手にはしっかりパンフレットまで…
「名取さんの演技、素敵でしたね」
「んー、そうだね」
演技のことはよくわからないが
すごい、と思えた
主人公の女性に恋をする役で
物語のキーマンだった
「…切なくて、感動しちゃった」
実は劇中、暗い中だが目を潤ませる彼女を見てしまった
その横顔は
とても愛しく思えた………
「じゃぁ次はご飯ですね!
前に言った、わたしが行きたいお店でいいですか?」
「うん、いいよ」
これまた彼女が選んだのは
今話題のカフェだ
(デートの王道を………
突っ走ってる💦)
少し恥ずかしさもあるが、どこか他のデートコースをエスコートできるような力量は…
俺にはない
店までの道のりをふたりで歩く
途中、人混みではぐれそうになる
あぁ、そうか…
こういうとき、人は手を繋ごうと思うのだろう
恋人同士だったらきっと
自然と手を繋ぐのだろう……
離れそうになる君の手を
つかみたいと思った
ぎゅっと握りしめて
離れないで、と…
でも
それはできなかった…
ふと思うのだ
君はもう、誰かのものなのかと
君はもう、あの人のものなのか………
ーーーーーーー
目的の店は混んでいたが
少し待つと席につくことができた
食べたかったのはこれ!といって
メニューをすぐに決める野風さん
俺も同じ物をたのむ
しばらくして出てきたランチプレートは
美味しいかどうかよくわからないが…
とにかく女子が好きそうなやつだった
「こういう店、好きなんですか?」
食事の合間に聞いてみた
「んー…とにかく来てみたくて!
流行ってるって聞いたから♪」
「何だか田舎から出てきた人みたいですね」
俺が笑ってみせた
「あ!でもそれ当たってるかも!
気分はそんな感じ♪」
ふたりで笑いあう
「……今はね、この世界がとにかく楽しくて…
キラキラしてる、この世界が…」
野風さんがふと視線をおとし
つぶやくように言った
その顔には、憂いのようなものがあった…
前に野風さんは的場一門に幽閉されていると噂があったが
それは誤解だったようだ
しかし、的場さんが解くまで
ずっと封印されていたというのは
恐らく本当だろう………
(…ずっと、1人だったのかな……)
人の俺には想像もできないくらい
長い時間……
「本当にありがとうね、夏目君」
「え?あ、こっちこそ……」
笑顔の彼女に
またドキリとする
「1人じゃできないこと、今日はたくさんできたから♪」
「そうかな?たくさん?」
「うん!ほら、待ち合わせ、とか
1人じゃできないでしょ?」
あ、そうか…
あれも彼女のやりたいことリストに入っていたのか…
「全部ぜーんぶ!
わたしにとっては貴重な思い出
だから、ありがとう!夏目君!」
「…役にたてて、嬉しいです」
彼女に対して
素直に嬉しいと言えた自分に驚いた
でも、本当に
俺の前で彼女が笑顔でいてくれて
嬉しかった………
店を出て
ふたりでこれまたデートスポットだという公園を歩く…
今日1日、恥ずかしいくらい王道デートコースを歩んでしまった…
(学校の奴らに会いませんように…!)
とにかくそれを願った…
野風さんは行きたい所、やりたいことを制覇できて満足な様子だ
そしてまた、どんどんやりたいことが増えているようだ
「次は夜… 夜景とか見たいなぁ
美味しいディナーも一緒に
でも、夏目君が言ってた温泉もいいなぁ♪」
次から次へと出てくる…
「………行きたいなぁ」
そうつぶやいて
空を見上げる彼女をみて
気づいたのだ
(………あぁ、そうか………)
君が一緒に行きたいのは
君が一緒にいたいのは
あの人なんですね………
すぐ隣にいて
手など
触れあってしまいそうな距離なのに
あなたの手は
やはり掴めなかった…………
ふいに……
俺たちに近づく人影があった
見るとそこには
「………ま……的場、さん…」
「静司さんっ」
………笑顔で野風さんが駆け寄る
スーツ姿の男性
的場一門の頭首
そして妖である野風さんの主…
的場静司、その人だった
「お帰りなさい!お仕事終わったんですね」
「…えぇ、ついさっき戻りました」
笑顔で
的場さんを少し見上げる彼女は
幸せそうだ
(あぁ………またか…)
この、嬉しくも切ない気持ちを
何ていうのか……
俺にはわからなかった
「迎えにきましたよ、車を待たせてます」
少し離れた所に
黒塗りのそれらしき車が見える
「……野風は先に車へ」
「え?」
「わたしは、少し夏目君と話があります」
俺と野風さんに的場さんはにこりとしてみせた
(これは、完全に…………
ヤバい展開だ…)
…もう腹をくくるしかなかった
「そう、ですか…
じゃぁわたしはこれで…」
野風さんが少し申し訳なさそうに言った
「夏目君、今日1日
本当にありがとうっ」
「……こちらこそ」
笑顔で手をふりながら
野風さんは迎えの車へと歩いていった……
残された俺と的場さん………
気まずい…
俺のことを見ようともしない
怒って、いるのか
それすらよくわからないが
もう覚悟を決めるしかなかった…
「あ、あの…っ!
すみませんでした…!
野風さんのこと、連れ出して」
的場さんに向かって、思いっきり頭を下げた
とにかく謝らなくては、と思ったのだ
何て言われるか…
色々覚悟しながら………
でも
返ってきたのは予想とは違うものだった
「……別に謝ることはないですよ
君が連れ出したわけではないですし
彼女の、野風の希望なのだから…」
「的場さん……知ってて…?」
「………彼女はあまり仕事は同行させません
しかしその間どこで何をしてるかは
だいたいこちらで把握してます」
…それはつまり、俺と出かけることは把握済みで
それを許した、ということになる
「…………君には、感謝もしているのですよ」
「……え?」
俺のことは見ず
遠くを見ながら的場さんが言う
「わたしには、してあげられないことですから………」
あぁ、そうなのか…
このふたりは…
野風さんと的場さんは
想っていることは同じなのだ
一緒にいたい
一緒にいろんなことをしたい
ただそれが、できないだけ……
的場さんの立場を思うと
そうなのかもしれない…
映画を見る
カフェに行く
公園を散策する
ふたりで手をつなぐ…………
今の的場さんには
できないのかもしれない
この当たり前のような
日常の一部を……
だから、俺と野風さんが会うのを知ってて
それを許したのだろうか…
あの的場さんの横顔が
少し寂しげに見えた…
「野風さん…
今度は夜景が見たいって言ってました
綺麗な夜景…
だから…」
頭の中に野風さんの笑顔が浮かぶ
きっと、喜ぶだろう……
好きな人と見られたら
それはきっと幸せだろう
嬉しくも切ない
いや、
切なくも……嬉しいこの気持ちを
人は何というのだろう
的場さんは無言のまま、車へと歩いていってしまった
でもいいんだ
伝わっただろうから…
彼女は……
野風さんは
綺麗な夜景が見られるのだから…
(夜景、か……)
もっと孤独を感じるかと思ったが
そんなことはなかった
帰ろう
……仲間のところへ
(先生たち、夜景とか興味あるかなー?)
少しだけ
自分が成長できた気がした
僕は願う
君の………
〜fin〜
それに暖かくて心地いい
お出かけ日和、というやつだろうか
約束の時間まであと少し…
(……こんな感覚初めてだ…)
そわそわするような
わくわくするような
少し不安もある…
(何を話そう…
最初は何て言おう…
こんにちは??………何か違う)
頭の中で色々シミュレーションしてみるが…
どれもしっくりこない……
(………どうしよう…)
不安だけが一気に押し寄せてきた
ふと顔を上げ、雑踏の中に目をやる
「………ぁ…」
小走りでこちらに向かってくる
輝いていた… は言い過ぎだろうか?
でも人混みの中
あなたはすぐに見つかった…
ーーーーーーーーーー
「夏目君、ごめんね!
待たせちゃったかな?」
「……ぁ、いや
全然大丈夫…ですっ」
シミュレーションというより
少女マンガの王道みたいなやりとりに、自分でも驚く……
「映画の時間、大丈夫だよね?」
「うん、たぶん余裕」
「じゃぁいこっか!♪」
笑顔で歩きだす彼女
すごく楽しそうだ……
それだけで
今日は良い日だと思える
「野風さん…」
「ん?」
「あ、いや…っ
何でもない」
用もないのに彼女の名前を呼んでしまった…
人混みの中、君と歩く
野風さんが映画をみたいと言ったので
これまたデートの王道のようになってしまっている…
ただ、その見たい映画というのが…
「楽しみ♪名取さんが出てる映画なんて」
そう、俺たちが見にきたのは
名取さんが出てる映画…
主演ではないが、かなり評判の映画だ
「夏目君は、名取さんと仲いいんですよね?」
「あ、うん
色々お世話になってるよ」
「ふたりでお出かけしたりします?」
「え… お出かけ…?」
そう言われて、記憶を探る…
「……温泉に、行ったかな
でも名取さんは仕事もあるし
あんまり出かけたりは…」
(箱崎邸とかは、お出かけじゃないし…)
「温泉?!」
彼女の目が輝くのがわかった
「温泉!いいですね!
行きたいなぁ〜…」
温泉への憧れで
目がキラキラしてる
恐らく、行ったことはないだろう
(妖なら……
温泉なんて普通行かないか…?)
こうして話をしていると
彼女が妖だと忘れそうになる
そして
的場さんの式だということも……
そうこうしているうちに
映画館にたどり着いた
当然だが、ふたり並んで座る
劇場内を見ると
女性グループが目立つ
(……何となく名取さんファンな気がする…)
あとは… 女性のお一人様や
見るからに… 恋人同士……
俺らも
他の人から見たら恋人同士に見えるだろうか…
恋人同士に見えるなら
それは嬉しい、と思ってしまった…
ーーーーー
「ん〜〜!見にきてよかった!」
劇場を出て野風さんが言った
手にはしっかりパンフレットまで…
「名取さんの演技、素敵でしたね」
「んー、そうだね」
演技のことはよくわからないが
すごい、と思えた
主人公の女性に恋をする役で
物語のキーマンだった
「…切なくて、感動しちゃった」
実は劇中、暗い中だが目を潤ませる彼女を見てしまった
その横顔は
とても愛しく思えた………
「じゃぁ次はご飯ですね!
前に言った、わたしが行きたいお店でいいですか?」
「うん、いいよ」
これまた彼女が選んだのは
今話題のカフェだ
(デートの王道を………
突っ走ってる💦)
少し恥ずかしさもあるが、どこか他のデートコースをエスコートできるような力量は…
俺にはない
店までの道のりをふたりで歩く
途中、人混みではぐれそうになる
あぁ、そうか…
こういうとき、人は手を繋ごうと思うのだろう
恋人同士だったらきっと
自然と手を繋ぐのだろう……
離れそうになる君の手を
つかみたいと思った
ぎゅっと握りしめて
離れないで、と…
でも
それはできなかった…
ふと思うのだ
君はもう、誰かのものなのかと
君はもう、あの人のものなのか………
ーーーーーーー
目的の店は混んでいたが
少し待つと席につくことができた
食べたかったのはこれ!といって
メニューをすぐに決める野風さん
俺も同じ物をたのむ
しばらくして出てきたランチプレートは
美味しいかどうかよくわからないが…
とにかく女子が好きそうなやつだった
「こういう店、好きなんですか?」
食事の合間に聞いてみた
「んー…とにかく来てみたくて!
流行ってるって聞いたから♪」
「何だか田舎から出てきた人みたいですね」
俺が笑ってみせた
「あ!でもそれ当たってるかも!
気分はそんな感じ♪」
ふたりで笑いあう
「……今はね、この世界がとにかく楽しくて…
キラキラしてる、この世界が…」
野風さんがふと視線をおとし
つぶやくように言った
その顔には、憂いのようなものがあった…
前に野風さんは的場一門に幽閉されていると噂があったが
それは誤解だったようだ
しかし、的場さんが解くまで
ずっと封印されていたというのは
恐らく本当だろう………
(…ずっと、1人だったのかな……)
人の俺には想像もできないくらい
長い時間……
「本当にありがとうね、夏目君」
「え?あ、こっちこそ……」
笑顔の彼女に
またドキリとする
「1人じゃできないこと、今日はたくさんできたから♪」
「そうかな?たくさん?」
「うん!ほら、待ち合わせ、とか
1人じゃできないでしょ?」
あ、そうか…
あれも彼女のやりたいことリストに入っていたのか…
「全部ぜーんぶ!
わたしにとっては貴重な思い出
だから、ありがとう!夏目君!」
「…役にたてて、嬉しいです」
彼女に対して
素直に嬉しいと言えた自分に驚いた
でも、本当に
俺の前で彼女が笑顔でいてくれて
嬉しかった………
店を出て
ふたりでこれまたデートスポットだという公園を歩く…
今日1日、恥ずかしいくらい王道デートコースを歩んでしまった…
(学校の奴らに会いませんように…!)
とにかくそれを願った…
野風さんは行きたい所、やりたいことを制覇できて満足な様子だ
そしてまた、どんどんやりたいことが増えているようだ
「次は夜… 夜景とか見たいなぁ
美味しいディナーも一緒に
でも、夏目君が言ってた温泉もいいなぁ♪」
次から次へと出てくる…
「………行きたいなぁ」
そうつぶやいて
空を見上げる彼女をみて
気づいたのだ
(………あぁ、そうか………)
君が一緒に行きたいのは
君が一緒にいたいのは
あの人なんですね………
すぐ隣にいて
手など
触れあってしまいそうな距離なのに
あなたの手は
やはり掴めなかった…………
ふいに……
俺たちに近づく人影があった
見るとそこには
「………ま……的場、さん…」
「静司さんっ」
………笑顔で野風さんが駆け寄る
スーツ姿の男性
的場一門の頭首
そして妖である野風さんの主…
的場静司、その人だった
「お帰りなさい!お仕事終わったんですね」
「…えぇ、ついさっき戻りました」
笑顔で
的場さんを少し見上げる彼女は
幸せそうだ
(あぁ………またか…)
この、嬉しくも切ない気持ちを
何ていうのか……
俺にはわからなかった
「迎えにきましたよ、車を待たせてます」
少し離れた所に
黒塗りのそれらしき車が見える
「……野風は先に車へ」
「え?」
「わたしは、少し夏目君と話があります」
俺と野風さんに的場さんはにこりとしてみせた
(これは、完全に…………
ヤバい展開だ…)
…もう腹をくくるしかなかった
「そう、ですか…
じゃぁわたしはこれで…」
野風さんが少し申し訳なさそうに言った
「夏目君、今日1日
本当にありがとうっ」
「……こちらこそ」
笑顔で手をふりながら
野風さんは迎えの車へと歩いていった……
残された俺と的場さん………
気まずい…
俺のことを見ようともしない
怒って、いるのか
それすらよくわからないが
もう覚悟を決めるしかなかった…
「あ、あの…っ!
すみませんでした…!
野風さんのこと、連れ出して」
的場さんに向かって、思いっきり頭を下げた
とにかく謝らなくては、と思ったのだ
何て言われるか…
色々覚悟しながら………
でも
返ってきたのは予想とは違うものだった
「……別に謝ることはないですよ
君が連れ出したわけではないですし
彼女の、野風の希望なのだから…」
「的場さん……知ってて…?」
「………彼女はあまり仕事は同行させません
しかしその間どこで何をしてるかは
だいたいこちらで把握してます」
…それはつまり、俺と出かけることは把握済みで
それを許した、ということになる
「…………君には、感謝もしているのですよ」
「……え?」
俺のことは見ず
遠くを見ながら的場さんが言う
「わたしには、してあげられないことですから………」
あぁ、そうなのか…
このふたりは…
野風さんと的場さんは
想っていることは同じなのだ
一緒にいたい
一緒にいろんなことをしたい
ただそれが、できないだけ……
的場さんの立場を思うと
そうなのかもしれない…
映画を見る
カフェに行く
公園を散策する
ふたりで手をつなぐ…………
今の的場さんには
できないのかもしれない
この当たり前のような
日常の一部を……
だから、俺と野風さんが会うのを知ってて
それを許したのだろうか…
あの的場さんの横顔が
少し寂しげに見えた…
「野風さん…
今度は夜景が見たいって言ってました
綺麗な夜景…
だから…」
頭の中に野風さんの笑顔が浮かぶ
きっと、喜ぶだろう……
好きな人と見られたら
それはきっと幸せだろう
嬉しくも切ない
いや、
切なくも……嬉しいこの気持ちを
人は何というのだろう
的場さんは無言のまま、車へと歩いていってしまった
でもいいんだ
伝わっただろうから…
彼女は……
野風さんは
綺麗な夜景が見られるのだから…
(夜景、か……)
もっと孤独を感じるかと思ったが
そんなことはなかった
帰ろう
……仲間のところへ
(先生たち、夜景とか興味あるかなー?)
少しだけ
自分が成長できた気がした
僕は願う
君の………
〜fin〜