夏目が見る夢
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「夏目様ーー!
夏目様ーー!」
…………
学校からの帰り道
後ろから声がする…
《様》なんか付けて呼ぶのなんて
普通の友人たちではなく……
おそらく妖たち………
(振り向くのやだな………😒)
しかし呼ぶ声は続く…
「夏目様ーーー…」
パタパタとこっちに向かってくる足音もする
振り向くのをためらったが
よく聞くと女の人の声だった…
(中級たちじゃない………?)
少しためらいながら振り向いたが
目の前にいる人物をみて驚いた…
「夏目様…はぁ、やっと追いついた」
小走りに駆け寄ってきたのは女の人
少し息を切らしながら
にこりとこちらを見た
清楚な、印象だ
(………可愛い…
けど……
誰だ?!(゜ロ゜))
ーーーーー
「夏目様…?
お忘れですか?!わたしです」
俺の表情を見て
状況をわかってくれたみたいだ
(………見覚えあるような…?)
「わたしです、野風です」
彼女は無造作に髪をまとめ
アップにしてみせた
「…………あっっっ?!」
前に会ったときは
和装に結い髪だったから
気づかなかった…
てか印象違いすぎ…っ
「…野風さん?
ぜ、全然印象が…」
今日はシンプルなワンピース姿で
その辺の女の子と変わらない
クラスの女子より少し大人っぽい印象だ…
(か、可愛い………)
しかし重要なことを忘れていた
彼女は
的場さんの式だ………
思わず辺りを見回す
「あ、主様はいらっしゃいませんよ」
にこりと彼女が言う
「え?ひとり?」
「はい、わたし1人です
そうしたら夏目様が歩いてるの見えたから…
気づいてもらえて良かった♪」
笑顔までも…
可愛らしい……
近くの公園に移動し
二人でベンチに腰かける
「でもよかった
夏目様に忘れられてしまったのかと思いました〜」
「す、すみません…
前は和装だったし、あまりにも印象が違って…」
思わず言い訳をする
今の姿は、人と何ら変わらない……
そんな彼女が妖だなんて
しかもあの的場さんに誓える式だなんて…
「ふふ、この格好
人の子みたいでしょ?」
にこやかに言う
(可愛い………とは
思ってても言えない……)
「夏目様は学校帰りですか?」
「は、はい…」
再び彼女に話しかけられて我に返る
そして気づいた
「その呼び方……
やめてもらえませんか?」
ずっと様を付けて呼ばれていた
「え?
夏目様、ではダメですか?」
「様とか言われるほど偉くもなんともないし…
それに現代的ではないというか…」
正直、恥ずかしい………
「では、何とお呼びしましょう?」
「……夏目、とか
クラスの女子は…夏目君…とか?」
「うーん………
主様のお友達を軽々しくお呼びしていいのでしょうか…?」
「ぜんっぜんいい!!」
様付けられて呼ばれるより
全然いいし
そもそも的場さんとはお友達ではない…!
「…………では、夏目君♪」
…………改めて呼ばれると
少し恥ずかしいような
くすぐったい感じがした
そんな俺たちの前を
見知った顔が通りかかった
「ぁ、西村〜!」
公園を横切ろうとする西村がいたのだ
ベンチから手を振る
「あ、夏目〜〜…………」
西村もこちらに気づいて手を上げたのだが
急に動きを止めた
「???」
俺の横を見ている…
「こんにちは♪」
「こっ………こんにちは!」
俺は驚きを隠せなかった…
野風さんと西村が挨拶を交わしたのだ…!
(ま、まさか…………?!)
「夏目君のお友達?」
野風さんが聞いてくる
こちらの様子にはお構い無しだ…
(野風さんって…………
実体のあるタイプ?!)
色々とまずい…と思った
ーーーーー
西村と少し雑談をし、彼は塾だからと帰っていった…
「はぁーーー……
いつもは逆パターンなのに…」
つい愚痴が出た
「逆パターンですか?」
「うん………
人だと思って接してたら…
そいつは妖で、他の人には見えない
お前1人で何やってんだ〜
て言われるのがいつものパターン…………」
「そうなんですか??」
首をかしげながら
少々ぐったり気味の俺の顔をのぞきこむ
「野風さん…
実体があるならそう言って下さいよ」
「え?あ…
ごめんなさい…
実体とか、見える見えないとか…
よくわからなくて…」
彼女が少し悲しげな表情をしたので
しまった…と思った
「あ、いや!責めてるわけじゃなくて……
妖ってみんな見えないから
俺もそのつもりで野風さんと接してて……」
そう、俺は公園に1人でいるつもりだった
(もしかしたら独り言言ってるヤバい奴に見えたかもだけど…)
そのつもりでいたから、まさか女の人とふたりでいるように見えてたなんて…!
しかも友だちに見られた……
「………明日学校で問い詰められる」
「……何か、迷惑でした?」
「いや、そうじゃないんだ…!」
ヤバい…
彼女を悲しませたり、困らせたりしたいわけじゃない
話題を変えなくては……
「そ、そうだ…!
今日ひとりなんですよね?
的場さん…一緒じゃないんだ?」
「そうなんです
主様は仕事で……今日はちょっと遠方へ」
にこりと答えてくれた
「仕事?
それなのに一緒じゃないの?」
祓い人につかえる式なら
一緒にいて仕事を手伝うのではないだろうか?
「わたしは、実戦向きではないそうです…💦」
苦笑い、といった感じで彼女が答える
「主様の仕事にはほとんど同行いたしません…
いつもお待ちしているだけです」
「へぇ〜…そうなんだ…」
的場一門といえば
使える妖、使える式をいつも求めていた…
手当たり次第に、といった感じだった
それなのに……
(なんで野風さんを式に…?)
俺の頭の中は?がいっぱいだ…
ただ、野風さんが思っていた以上に自由に過ごしていて
少し嬉しかった…
「けっこう自由なんですね
こうやって出歩いてて」
「えぇ、自由ですよ♪」
嬉しそうに言う彼女は
無邪気な子どもの様で
それもまた可愛らしかった……
「……その、噂になってるみたいで…
的場一門が……
妖のお姫様を幽閉してるって…
野風さんのことかと…」
先日聞いた話だ
的場一門が…、的場さんが
封印を解き、妖の姫を連れ出し
自分たちの所に幽閉していると…………
「幽閉?まさかー!」
彼女は笑ってみせた
「それにわたしはお姫様でも何でもありませんよ」
自由に出歩き、好きな服を着て
楽しそうにしている彼女をみると
幽閉は恐らく誤解だと思える
しかし、彼女が的場さんの式なのは変わらない………
「皆さんは……
主様のことを少し誤解しているんです…」
彼女が遠くを見ながら言った
「主様は、優しい方です」
以前もそう言っていた気がする
しかし的場一門のやり方を知ってる俺たちには…
正直そうは思えない………
(的場さんが、優しい……)
にわかには信じがたい
それとも……
野風さんにだけは
優しいとか…?
「わたし、よく部屋に閉じ籠ってるから、そんな噂がたったのかも!」
彼女が苦笑しながら言う
「じゃぁこれからはどんどん出かけようかな!
幽閉されてる、なんて思われないようにっ」
「それはそれで問題だと思うけど…」
思わず笑ってしまう
「どうしてです?」
「だって、一応式なんでしょ?
俺が知ってる祓い屋の式って、いつも主の側にいて、忠実な感じだから…」
「わたしも忠実です〜!」
彼女と話していると
自然と笑えてくる
一緒にいる空間が
この時間が
心地いい……
ふと、以前にゃんこ先生が言った言葉を思い出した…
野風さんは名を縛られ
無理やり使役させられてるのではないか、と……………
妖の名を縛るのは禁術だ…………
名を縛るということは
命を握るということだ
それなのに
それなのに
ふと自分の頭の中で
名を縛れたら… と思ってしまった
貴女の名を
他の誰のところにも行かぬように…
「…夏目君?」
「あ、すみません…
ぼんやりしてた…」
野風さんが心配そうに俺の顔をみていた
「そうだ!今度一緒にお出かけしましょう♪」
「……え?」
それって…………
「わたし、行きたいところがあるんです♪」
それって…………
………デート?
「やりたいこともたくさん!」
目を輝かせ
期待に胸をふくらませている彼女を前に
断ることなんてできなかった
「………で、行きたいところって?」
それからふたりで
どこにいくか計画をたてた
もちろん……
(的場さんには内緒だな……)
ーーーーーー
次の日
学校で
西村と北本にしぼり上げられたことは言うまでもない………
(てか北本にも言っちゃってるしー!)
〜fin〜