夏目が見る夢
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「夏目君、夏目君!
おみくじ! やりましょう♪」
無邪気そうに、彼女が言った
《恋みくじ 夏目編》
ーーーーー
俺たちはとある神社に来ていた
にゃんこ先生と犬の会のやつらが
この神社の近くに美酒が湧くと騒いでいた
酒に興味はなかったが、あまり行ったことがない地域だったため
地理を覚えるためにも、興味があり
付いてきたのだ
途中で、野風さんに会ったのは偶然だ
にゃんこ先生はあまりいい顔をしなかったが……
彼女も誘ってみんなでここまでやってきた
先生たちはさっさとその美酒とやらを探しに行ってしまったので、今は俺たちふたりきり………
「野風さん……
神社とか来ても、平気なんですか?」
ちょっと気になって、質問してみる
「? 大丈夫ですよ
どうしてですか?」
野風さんは妖だ……
にゃんこ先生が、場所によっては気持ちが悪いとか言ってダウンすることがあるから
野風さんもそんなことがあるのではないかと思ったのだ
「神社とか… 神聖な場所に来て、具合悪くなったりしないのかなぁと…
結界とかあるかもしれないし」
俺の言葉に、野風さんは不満そうに口を尖らせた
「夏目君、ひどいなぁ〜!
わたしはそんな邪悪な存在じゃありませんよーっだ😝
神社に来たところで、何も問題ありません〜」
「ぁ、ぃゃ……💦
そう意味じゃなくて😅💦
すみません💦」
俺の反応を見て、彼女はクスクス笑っていた
「心配してくれたんですね、ありがとう
わたしは大丈夫ですよ♪ここは小さな神社ですし
それに、わたしは普段、的場の屋敷にいるのですよ?
そこでもへっちゃらですからw
にゃんこ先生はダウンしてたみたいですけど😄」
無邪気に彼女が笑う
的場の屋敷……
こうして話をしていると
彼女は俺とそれほど歳の変わらない、普通の人間の女の人のようなのに……
しかも実体があり、能力のない人にも見える存在だ
しかし今の言葉で
やっぱり彼女は妖で
的場さんの式なんだと思い知らされる
「にゃんこ先生は的場さんの別邸で、完全にダウンしてたなぁ……」
いつかのことを思い出す
「ふふ!にゃんこ先生も、まだまだですねw」
にゃんこ先生は一応上級な妖らしいが、その先生でもあの場所はダメだったのに…
「野風さんって………
格の高い妖なんですか…??」
的場さんといて平気なのだから…
「あれ?知りませんでした?
わたしは実は神格級の妖なのです!😆」
「………いや、それはないなw」
「えーー!💦」
彼女の冗談に二人で笑いあう
ただ…… 彼女が本当にかなり格の高い妖だとしたら
(的場さんが側に置くのも……
納得できる……)
「にゃんこ先生たちは… どこまで行ったのでしょうね?」
「さぁ…?そもそも酒が湧くなんて信じられないけどなぁ」
辺りを見るが、にゃんこ先生たちは見当たらない
「境内はこの上ですね
行ってみましょう」
野風さんに言われて前を見ると
長い石段が続いていた
「……けっこうありますね💦」
「頑張ってのぼりましょう、夏目君!」
野風さんが張りきって登り初めたので、俺も渋々それに続く
一体、何段あるのだろう………
「ここはむしろ…… 空気が綺麗
心が落ち着きます」
石段を登る途中で、野風さんが大きく深呼吸をした
真似して俺も大きく息を吸う
確かに、空気が綺麗な感じがした
「森林浴もできて、いいですね」
「………昔は、人も妖も
皆自然とともにありました
皆自然の一部なのです……」
野風さんは、少し遠くを見ているようだった……
彼女が言う昔とは、人の言葉でどれくらいのものをいうのだろう
彼女はやはり……… 妖なのだ
「…………野風さんが
人間だったら良かったのに……」
「…………え?」
俺の口から出た言葉に、野風さんは少し驚いた様子だった
石段をあがり、彼女の少し先を歩く
…………うっかり口にしてしまった
俺の願望だ…
「…ぁ、夏目君
待って……… っわぁ!」
急に彼女の驚くような声がしたので振り返ると、段差につまずいてバランスを崩しかけている彼女が見えた
とっさに……… その手を掴んだ
「わー…びっくりした💦
ありがとう、夏目君っ
落ちちゃうとこでした〜
わたしってどうしてこんなどんくさいんだろう…w」
照れ隠しのように笑う野風さんが、とても可愛らしかった………
「………夏目君??」
彼女に名前を呼ばれたが、返事をすることなく
俺は石段をのぼり続けた
彼女の手を引いたまま………
長く思えた石段も、思いの外すぐに登りきれてしまった
最後の石段を登ったところで、彼女の手を離した
どこまでも
石段が続けば良かったのに………
目の前に、思ったよりも大きな本殿があった
「意外と立派な神社ですね〜」
野風さんも俺と同じことを思ったようだ
とりあえず、ふたりで参拝する
「夏目君、夏目君!
おみくじがありますよ!」
境内の隅におみくじが置いてあるのを、野風さんが見つけた
備え付けの箱に100円を入れ、中から紙でできたおみくじを引くものだ
いつも思ってしまうのだが… 100円を入れなくても引けそう…
いや、引けてしまう
(よく盗まれないであるよな……😓)
この国は…… 平和だと思う
「夏目君!おみくじ引きましょう♪」
「…えーー…😓
俺、おみくじにはあまり興味な……」
「引きましょうよー!一緒にっ」
「…………😓」
彼女の押しに、負けてしまった……
二人できちんと100円を入れた
(そういえば…… 野風さんは誰から現金をもらっているんだろう?的場さん……??)
的場さんから現金を受けとる野風さんを想像すると……
(………怪しすぎる……!)
「じゃあ、わたしから引きますね♪」
彼女がおみくじを1つ引いたあと、自分も1つ、箱の中から取り出した
「一緒に明けましょう!せーのっ」
彼女に言われ、おみくじを開く
「俺は…… 吉
可もなく不可もなく、かな…w
野風さんは…?」
彼女を見ると……
(………明らかにニマニマしてる😓)
「大吉でしたぁーー!
わーいっ😆😆😆」
無邪気に喜ぶ姿は、まるで子どもみたいだ……w
「そんな嬉しい?w」
「嬉しいですよ〜
だって大吉ですよ?😆」
「たかが大吉…… だと思うけど」
「あ、だって和歌も………」
桃桜 花とりどりに 咲き出でて
[#ruby=風長閑_かぜのどか#]なる
庭の[#ruby=面哉_おもかな#]
「……のどかな庭に美しい花が咲き匂っている、この春の盛りの楽しげな様に、運気が上がっていきます、だそうです
素敵じゃないですか?」
にこりと、笑顔を俺に向けてくれる
その笑顔を…… ずっと見ていたいと思った
彼女がおみくじの内容を紹介する
「願望、漸々吉運に向いて 思わず早く叶う
待人、来ます
失せ物、出る 低いところ
旅行、早く行くが利
学問、安心して勉学せよ……」
「……確かに、どの項目も良さげだなぁw」
「あとは………
そうですね……
ふふふ、おみくじって、面白いですね」
野風さんは丁寧におみくじを畳むと、大事そうに手に持っていた
「ぁ、そうだ…!」
おもむろにもう1枚100円玉を取り出した野風さん……
「……??」
チャリーンと100円を入れた
「主様の分のおみくじも引いて帰ります♪」
「え……💦
それって意味あるんですか…?」
彼女はすでに箱の中に手を入れ
何やらかき回している……
「うーーん…… これ!」
勢いよく、1つのおみくじを取り出した
「渡すのが楽しみ〜♪」
先ほどと変わらぬ笑顔だが、それは俺に向けられたものではない
そう思うと、心の奥がざわざわしてきた
「………的場さん
受け取ってくれなさそうですけど…」
「そんなことありませんよ〜
きっと受け取ってくれます」
その笑顔は、的場さんを想ってのものなんだ………
「………そういう野風さんの思いやりとか気持ちとかを
あの人は簡単に踏みにじりそう………」
言ったあとで、ハッとした……
彼女が…
野風さんが、とても悲しげな顔をしていたからだ
「ぁ…っ、すみません!俺……
あの………」
うまく言葉が出てこなかった
「夏目君は………
静司さんのこと、嫌いですか…?」
泣き顔でも、怒った顔でもない
少し困ったというような笑顔を
俺に向けてくれた
彼女が的場さんを名前で呼んだことに
胸がまたざわざわした……
「………好きとか、嫌いとかじゃなくて
次元が違うというか………」
的場さんは遠い人だ
住む世界が違う
「………静司さんが的場の家に生まれてなかったら……
彼はどんな一生を過ごしていたのでしょうね…」
「………………」
彼女の言葉は、遠回しに
的場さんが一門にどれだけ縛られているかを言っているように聞こえた
「…………野風さんが人間で
的場さんが妖なら良かったのに……」
「…………え?」
ふと思ったことを口にしてしまった
「的場さんが妖なら、住む世界が違うで割り切れた
好きにも嫌いにもならずにいられたと思うんです……
同じ人間だと思うから…… 理解し難い部分が出てくる
そうなんだと思います……」
「………じゃあ、わたしが人間だったら?」
「……………」
野風さんが人間だったら……
今すぐ好きだと言えるのに……
「うぉーーぃ!夏目〜〜」
後ろから、にゃんこ先生の声がした
振り返ると……
「にゃんこ先生?!
もうベロベロじゃないか😨💦」
千鳥足の先生と、同じくヨロヨロしながら上機嫌で歩く中級たちがいた
「酒は本殿の裏だぁ〜っ
夏目、お前も飲んでこいぃー!」
「からむな、酔っぱらい💦」
俺たちを見ながら、野風さんがクスクス笑っている
「野風様〜〜
これはお土産です〜 ぜひお持ち下さい」
中級たちが一升瓶を取り出した
中には透明の液体が入っている
「えー!ありがとう♪
帰ってからゆっくり飲ませていただきますね」
彼女の笑顔をみて、中級たちはさらに顔を赤らめた
「夏目は飲まんのかぁ、つまらんやつだなぁ
しかしまぁ、堪能できたことだし……
帰るぞっ\(^o^)/」
にゃんこ先生が先陣をきって石段を降りる
「あ、こら!にゃんこ先生っ」
俺も石段を降りようと駆け出した
しかし、野風さんが動かずにいるので足を止めた
「野風さん…?」
「…………夏目君、わたしはここで
今日は誘ってくれてありがとう」
「ぁ… 帰り、一人で大丈夫ですか?💦」
「わたしは大丈夫です
夏目君はにゃんこ先生たちと行って下さい
また、どこか一緒に出掛けましょう♪」
そう言って、手を振ってくれた
「……はい、また…一緒に」
俺も手を振り
にゃんこ先生たちを追って石段を降りた
途中振り返って石段の上を見たが
野風さんはもういなかった……
俺は、ただ彼女と話したりできるだけでよかった
それなのに、次第に自分の気持ちを押さえきれずにいた
嫉妬のあまり
的場さんのことを悪く言って
野風さんを傷つけてしまった
それでも、また…と言ってくれたのは
彼女の優しさだろう
俺がこの先どうしたらいいかなんて
おみくじには書いていなかった……
「おーい!夏目っ
早くこーい」
「……先生!待ってくれよっ」
〜fin〜