的場と見る夢
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「ほら、主様…
梅が綺麗に咲きましたよ」
梅の枝に軽く触れ
にこりとした君の笑顔は
とても儚く
眩しかった………
ーーーーーーー
野風がここに来たのは
1ヶ月ほど前だ
とあるところに妖の姫が閉じ込められているという伝説のような
噂をきいて
一門の者に調べさせたところ
廃屋となったある屋敷に地下があるようだが
強力な封印がされ、入れないという
そこで自ら赴き
封印を解くと
そこは座敷牢だった………
そこにいたのが野風だ…
封印を解いてやると
野風自ら、礼がしたいから
連れていって欲しいという……
使えるかはわからなかったが
その辺の妖とは違う
何やら強い力を持っているようだった
(…妖怪の姫というから、もっとおぞましいものを想像していたが……)
庭に立つ野風を見て思う
…………彼女は美しい
「…主様?どうかされました?」
にこりとこちらを見る
「……何でもない」
しかし野風を連れてきてから
困ったことがあった
それは野風が実体をもつということだ
力が強い故か実体をもち
一見すると人の様なのだ
しかしあの座敷牢に恐らく100年近く…
閉じ込められていたのだから
彼女は妖だ…
実体をもつ野風をその辺のやつと一緒にしておくこともできず…
彼女には部屋を与えることになった
一門の男どもが野風を見て
下世話なことを言っているのも耳にした
だから尚更
部屋を与えてこう命じた
主のわたし以外部屋に入れるな、と…
野風は笑いながら
わかりましたと言っていた
そうして
度々彼女の部屋に赴く自分がいた
ーーーーーーー
「主様?お戻りになられてたんですね」
今夜も笑顔で迎え入れてくれる
「ああ……」
大した返答もせず
彼女の横を通りすぎ
窓辺に腰かける
窓からは
月明かりに照らされたあの梅の木が見えた
「ここからは庭がよく見えますよ」
嬉しそうに野風が言う
「…そうか」
ここにきて特に何かをするわけでもない
大した返答をしなくても
野風は今日1日起きたことなどを話してくれた
嬉しそうに……
「……主様…」
「…ん?」
窓から視線を外し、野風をみると
やけに真剣な顔をしていたので
胸の奥が痛むような
不思議な感覚におそわれた
「主様…
人は強い妖とつながることで
強い力を得られるそうです」
「………それで?」
急に何を言い出すかと思えば…
そんなこと、身をもってわかっている
「わたしは、主様とつながりたいのです」
「………?」
「わたしを
抱いて下さい
主様と、深くつながりたいのです」
不覚にも
驚いてしまった
さらに真剣な表情で言われると
返す言葉がない…
(強い妖と
つながる………)
それは
一体どういうことなのか
わかっているつもりだった…
わかっているはずだった…
「……使えるものは使えばいいと…
前に誰かに言ったなぁ…」
「主様…?」
そう言ったはずなのに…自分は…
考えを巡らせると
自虐的な笑みが出てきた
「野風………」
そう言って
彼女を強く抱きしめた
「主様……」
「………いいんだ
側にいてくれるだけで…」
使えるものは使えばいいと自分で言ったくせに
「…………野風
側にいて欲しい」
「………はい、主様がおっしゃるのでしたら
ずっとお側に……
ずっとおります」
こんなに誰かを愛しいと
思ったことがあっただろうか
愛しさのあまり
またこの部屋に閉じ込めたままにしてしまいそうだ
でもやはり
野風には花や風がよく似合う
野に咲く花や
野を吹き抜けるあたたかな風が
「………野風
二人で花を見にいこう…」
〜fin〜
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