アルデバラン視点

ーー候補生たちの訓練を終わらせ、いつものように帰ってくると、静かだった。いつもなら彩月の声と、動き回っている音がするのだが。

アルデバラン「ーー静かだと思ったら、寝ているのか??」

リビングにまで来ると、ソファーに凭れ掛かった状態で寝息をたてている彩月の姿が。…道理で静かな筈だ。しかし、こんな所で寝ては風邪を引かせてしまう。けれども、起こすのは可哀想だ。そう思い、部屋から掛ける物を持ってきて彩月に掛けてやる。…さて、彩月が寝ている間に食事の準備をするか。

彩月「ーー…さ…ま…」

寝言か??好きな奴の名前でも呼んだのだろうな。けど、悲しそうな顔で呼んでいるのを聞くと、こんな顔をさせたくないと思ってしまう。…女神アテナと地上を守る１２人の黄金聖闘士が、１人の女性に惚れるとは。…俺も人の事は言えないな。寝ている彼女を部屋に運ぼうかとも考えたがそっとしておく事にし、食事の準備に取りかかる。ーーどれくらい経ったかはわからないがパタパタと慌てている足音が近付いてきた。…起きたのだな。

彩月「ゴメンなさい!!アルデバラン。私も手伝うわ」

キッチンに並ぶ俺と彩月を見て、なにを思ったのかサロが口を開く。

サロ「ーーアルデバラン様と彩月さんって、こうしていると夫婦みたいに見えますね」

子供だから仕方ないが、なんて事を言うんだ…。

彩月「そう見える??でも、私じゃアルデバランのお嫁さんには役不足よ」

ーーそんな事はないと口を開きかけたが慌てて止めた。…俺は一体なにを口走ろうとしているんだ。

彩月「もうすぐご飯出来るから、テネオとセンリサを呼んできて。慌てなくて良いから」

そう言われ、頷き返すとりリビングを出ていった。

彩月「サロも可愛い事を言うのね。私がアルデバランのお嫁さんだなんて。貴方にも選ぶ権利があるのにね??」

クスクス笑う彩月に、釣られて自分も笑ってしまう。聖戦前だと言うのに、穏やかな気持ちにさせられる。まるで、春の日溜まりに包まれているようだ。

彩月「ーーアルデバラン。ありがとう」

なにに対しての礼なのかはわからんが、気にするなと返しておいた。彩月が嬉しそうな顔をするから、軽く頭を撫でる。

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(家族ってこんな感じね)
(彩月には悲しそうな顔より笑顔で居てほしい)
(…アルデバラン様と彩月さんが良い雰囲気だから、もう少しこのままで居よう)