社会人再会編
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金曜の夕方。
会社を出た瞬間、胸の奥がふっと軽くなった。
でも同時に、妙な疲れがどっと押し寄せる。少し歩いたところで、ふと風に乗って甘い香りがしたコーヒーと焼き菓子の匂い。
視線を向けると、見覚えのある木目の看板。
――喫茶ポアロ。
数年前、一度だけ同期に連れられて来た。あの頃は警察官で、カフェにのんびり入る余裕なんてなかった。
けど今は違う。ただの会社員。
誰にも呼び出されない、平和な時間。
扉を押すと、カランと軽い音がして、温かい空気に包まれる。窓際の席が空いていた。運がいいな。
「いらっしゃいませ」
柔らかい声の女性――梓さんが笑顔で迎えてくれる。
「おすすめってあります?」
「うちのブレンドとミルクティーが人気ですね」
「じゃあ、ミルクティーでお願いします」
彼女が去り、静かなBGMとカップの音が響く。
肩の力が抜けて、深く息を吐いたそのとき。
「だからね、コナンくん、新一は絶対蘭のこと気にしてるって!」
「もう園子、またそれ言ってる……!」
声の方を見ると、制服姿の女子高生二人と、小学生くらいの男の子がいた。なんだか賑やかで、つい笑ってしまう。目が合うと、片方の女の子――蘭ちゃんがにこっと会釈した。
「すみません、うるさくなかったですか?」
「ううん、むしろ元気もらった」
「よかった!凄く綺麗な人だなって思って気になってたんです!あの、もしよかったら少しお話しません? 社会人の話、聞いてみたくて!」
園子ちゃんの勢いに押され、結局向かいに座ることになった。どうせ暇だし、断る理由もない。決して綺麗な人って言われて喜んだからじゃないから。
「いいよ。仕事の愚痴とかでもよければ」
「やったー!」
彼女たちは明るくて、話題がころころ変わる。コナンくんは時々冷静にツッコミを入れていて、妙に大人びていた。そんな中で、園子ちゃんが突然言った。
「ねぇ愛実さん、忘れられない人とかいる?」
「……いるよ」
「どんな人?」
「真面目で、頑固で、正義感ばっか強くて、融通がきかない人」
「うわ、絶対いい人!」
「いや、よくないのよ。口悪いし、何でも一人で抱え込むし。そういうとこ、腹立つけど……放っておけなかった」
自分で言いながら、苦笑する。
頭に浮かぶのは、あの頃の彼の顔。
「それにね、顔がすっごく好みだった」
「顔!?」
「褐色の肌に、ミルクティーみたいな髪。目が鋭いくせに笑うと無防備……ずるいでしょ」
胸が少し痛む。
(ほんと、ずるいんだよ、あんたは)
「え、それって特徴的に安室さんじゃない?」
「安室さん?」
「はい。最近ここで働いてる人!」
