あるフリーターの憂鬱Ⅲ
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教室に戻る最中、廊下を歩いているハルヒを見かけた古泉はさり気なく俺と距離を取る。そして、まるで秘密機関のエージェントのように視線も合わせずに折り畳まれた紙を渡してきた。いや実際こいつは秘密機関のエージェントなんだが。
「なんだこれ」
「渡しそびれていました。涼宮さんが配っていたチラシです。おそらく誰かに作成を依頼したものかと。彼女の中で抵抗感があったことが幸いしましたね。全校生徒に求婚されるような事態になっては僕に勝ち目はないでしょうから」
「嫌味か? そんじょそこらのやつじゃお前の顔の良さには並べないだろ」
「……前々から思っていたのですが、ヒカリくんって僕の顔がお好きなんですか?」
「おっ……まえは随分自信がおありだね。いや、一般的にだよ。モテる顔立ちだろ。近くにあると困る程度には整っている」
「まあ、両親の遺伝子なわけなので悪し様には言いませんが。ひとまずこの顔に生まれてきたことを喜んでおきます。意中の相手の好む造形でなければ、あまりモテたところで意味はないんですが」
「それ谷口の前で言ったらくびり殺されるぞ」
「おや? この騒動であなたにも実感頂けたことだと思いましたが。不特定多数に向けられる好意に価値があるかどうかは、一概には論じられないと」
「ちっ。ああ言えばこう言いやがって。ところでお前、今日大丈夫なのか?」
「彼に話すことですよね。ええ、抜かりなく。格好のついた言い回しになっていると良いのですが」
「いつもの“それもご存じなんですね”ってやつ言わないんだな」
「え? ああ、はい。大抵のことはなんでもご存じだという体でいます」
「なんでもは知らないよ。知ってることだけ」
おい、なんだよ。微笑ましい顔をするな。
「それ、アニメのセリフかなにかですよね。それもおそらく、元の世界の」
「な、なぜそう思う」
「そういう言葉を使う時、あなた少し得意げなんですよ」
殺してくれ。おっと、まさか「殺してくれ」まで叶えたりしないよな。ハルヒも。一瞬でいいから俺を隠してくれ。神なら神隠しくらいできるだろ。
「いいと思いますよ。彼女の動向に怯えて話し方を制限するよりは。出来るだけのびのびと過ごしている風に見えた方が」
「だからお前がそれを言うんじゃねえよ。同級生に敬語、使わないんだろ」
「“そんなことまでご存じなんですね”」
「態とらしいんだよ、お前は」
「ふふ。それではご武運を。お弁当、今日もおいしかったです」
「お、おう」
古泉が背中を向けたと同時に、受け取ったチラシを開く。綺麗に折り畳まれていたそれは、思っていたより何倍もよくデザインされたチラシだった。見やすいし、奇抜な色でもない。たしかにハルヒ一人じゃこうはならないな。100%コンピ研の部長だ。今度菓子折りでも差し入れよう。うちの団長がいつもご迷惑をかけてすみません。
で、チラシのタイトルは「不可思議な相談事募集します」となっている。
まあ、原作でもそういったビラ配りはしていたが、問題なのは俺の女装写真が不正利用されて「相談担当:芦川ヒカリ」と明記されていることだ。ご丁寧に吹き出しがついていて「どんな不思議な事件や人物の相談でも構いません。すごく親切に対応します。アニメの話もできます。握手をしたり一緒に写真を撮れます。イチャイチャするのは要相談」なんて書かれている。会えるアイドルか俺は。つか、じゃあCDを何枚か買ってもらって応募して握手券を勝ち取ってもらってくれ。
教室に戻ると、今度は朝倉とぶつかりそうになる。さっきのがいい予習になったのか、無事に朝倉の肩を支えることができた。
「すまん。大丈夫か」
「うん。それより、すごいね。この騒ぎ。あなたは大丈夫? わたし、先生に言った方がいいかなって」
「いいや、女子の気持ちを味わえたからこれはこれで良かったよ。意外としゃがむ時なんかに裾に気を遣わないといけなかったりね。それに岡部は口じゃハルヒに敵わないし。放っておこう」
「そう? 嫌なことを無理やりさせられてるなら言ってね。委員長として見過ごせないもの。それに、わたし個人としても我慢してただ耐えるだけって、そういうの好きじゃないから」
とうとうこいつもぶっちゃけて来やがったか。
「いいや、俺は忍耐強い方なんでね。それに、案外この学校生活を大いに楽しんでる。無理させられてるとは思わない」
「でもね。一人がおかしなことをしたら、全体の統制に関わるでしょ。それとも、あなたはそれを見過ごしてくれるタイプなのかしら」
「朝倉、統制なんて随分堅苦しい言い回しをするんだな。委員長としては風紀って言わなきゃ」
朝倉は、珍しく長門のように無感動な瞳をして、それからにっこりと笑う。寿命が縮まるかと思った。
「……そう。そうなんだ」
「俺たちってあんまり気が合わないみたいだな。お前は真面目で、俺は真面目に不真面目だ」
「そんなことないと思うけど。ねえ、あなたが来てクラスの雰囲気がガラッと変わったの。知ってると思うけど、涼宮さんが彼以外と話しているなんてとっても珍しいことなのよ。彼女、あなたを通じてクラスの他のみんなとも交流し始めているじゃない? わたし、あなたには期待しているの。このどうしようもない雰囲気を変えてくれるんじゃないかって」
「どうかなあ。お前に比べたら、俺ってつまんないやつだから」
にこ、とイラストみたいに綺麗な笑顔をして、朝倉は女子の輪の中に戻っていく。冷や汗かいた。こんなハードボイルドなやり取りはごめんなんだが、意思表示はしておかないと仲間扱いされても困る。
俺も席に戻ろう。キョンと目が合って、話しかけて来ようとしているのがわかる。谷口や国木田辺りになにか言われたんだろうか。謝れとか。
「あ、ヒカリ。どこ行ってたのよ」
「トイレだよ。言わせんな恥ずかしい」
ハルヒは俺を呼びつける。キョンに謝られて変な空気になるのも嫌なので、俺は彼女の机にチラシを開いて叩きつけた。
「ハルヒ」
「う、な……なによ」
「どういうことか説明してもらおうか、ネタはあがってるんだ」
「はあ? あんた刑事ドラマの見過ぎよ」
「虚偽の広告表示は犯罪だ。刑事の出番だろうが。俺は知らん生徒とイチャイチャするつもりはない」
「そのことなら、ちゃんと要相談って書いたわよ」
「そういう問題じゃない。それに、こういうのに釣られる輩ってのは、お前や長門や朝比奈さんにも同様のことを求めるぞ。俺は嫌だね。SOS団の女子にその辺のやつがちょっかいかけるなら、俺は室内でマウンテンバイクを振り回して窓ガラスを壊して回ってやるからな。それに、部室に人が押し寄せてオブジェになにかあったらどうする。だいたい、マジで不思議な事件を知ってるやつは、人目につくと逆に相談しにくいだろうが」
「う、うるさいわね。あたしはあんたのことをみんなに教えてあげようと思ったの。本当は秘蔵っ子よ。でも、転校してきたばっかりで古泉くん以外に知り合いもいないんでしょうし、不思議を魅了する力もあんまり出せないんじゃないかなって思ったの」
「俺を喜ばせたいなら一回くらい一緒に昼飯食ってくれよ。忙しいのはわかるけど、団員とコミュニケーションを取るのも団長の務めだろ?」
ハルヒは餌を詰めすぎたハムスターみたいに頬を膨らませながらも、反論はしてこなかった。俺は椅子を持ってきて、ハルヒの席に近づける。さて、ここからはネゴシェーター芦川の本領発揮だ。この騒動を静めて、古泉が格好良くキョンに身分を明かす舞台を整えてやろうじゃないか。
「いいけど、なに話したいのよ」
「え?いいの? なに話そうかな。恋バナとかしちゃう?」
「馬っ鹿じゃないの……まあ、いいわ。話してあげるわよ。あんた好きなタイプは?」
「えーとね……そうだな。まずは話が合う人かな。やっぱり話してて楽で気軽なのがいい。それで、俺にないものを持ってて、憧れるっていうか。最終的には頼り合える? みたいな」
「なんかふわっとしてんのよ。具体的に女子で言うとどんなの?」
「そ、……それは、ええと、元気で明るくて。溌剌としててまっすぐでさ。きらきらしていて、頑固で力強くて、だけど守ってあげたくなるような……」
「妙に具体的ね。誰よ」
めちゃくちゃ顔が熱い。俺がずっと憧れていた女の子は、すぐ目の前で不貞腐れている。
「……涼宮ハルヒ……って言うんだけど」
「どこ見て言ってんのよ。じゃあ男だったら」
「人の決死の憧れ暴露を流しやがる。つーか、それいる?」
「当たり前でしょ。あんたBL要員なのよ。具体的にいなくても、特徴っぽいのでいいから。こっちだって色々考えなきゃいけないの、売り出し方とか」
「まあ、それは……普通っぽくて? ノリが楽で。髪の毛硬そうで。巻き込まれ不運みたいな。まあ、ボケよりはツッコミの方がいいかな。俺もボケたいし」
「なにそれ、つまんない男ね」
「そんなことはないと思うけど」
「だって。そんなんじゃあんた、谷口とかコンピ研の部長とか、そういうのってことでしょ?」
「そういうことになっちゃうのかあ?」
「それに……それじゃあ」
ハルヒは言い淀む。苦虫をコップ一杯噛み潰したような顔で、吐き捨てるように零した。
「それじゃ、キョンだってストライクゾーンに入っちゃってるわ」
やばい、返事が一拍遅れた。キョンくんはどう思うのか、なんてことを気にしてしまった。どうもこうもない。嫌がっている。
でもいい。失恋なら失恋で、いつかいい思い出になる。きっと。時間が解決する。してくれ、頼む。
「あー……でも最近は顔綺麗系のボケもいいなって思うよ。マジで。内緒ね」
「ふーん、古泉くんみたいな?」
「あとはまあ、国木田とか?」
ハルヒはたっぷり時間を空けて、溜息を吐いた。妥協って感じだ。
「……あっそ。好きにしたらいいんじゃない? ちゃんと自分の仕事をこなしてる限り文句は言わないわ。あんたは噂の中からあのオブジェがある場所を見つけ出したしね。まあ、でも谷口じゃあんまり売り出せないと思うけど」
「お前は谷口に妙に冷たいな。あいつ面白いやつじゃないか。あれか、同中だからか?」
「ヒカリに関係ない!」
もう話は終わったとばかりに、ハルヒは机にうつぶせた。俺は肩を竦め、自分の席に戻る。なんだ急に怒ったりして。谷口、昔ハルヒになにかしたのか。やっぱりあいつ一回告ってるんじゃねえの。
そんなこんなだったから、放課後までの時間は地獄のようだった。ハルヒはうつぶせっぱなし。キョンは窓の外を見っぱなし。明らかに二人の不機嫌が見て取れる。やっぱりあれか? 繋がってたりするんだろうか。心の奥まで。
感情を共有できる相手がいるなんて羨ましいね。俺は自慢じゃないが空気を一生懸命読んでも外すタイプだから。
授業終了のチャイムを福音かなにかみたいに聞いたのか、キョンは長い溜息を吐き出すと教室から逃げるように立ち去る。そして何秒も経たないうちに、糸でも巻き付いていて引っ張られたかのようにまた舞い戻ってきて、掃除用具入れからオブジェのケースを降ろすと一言。
「涼宮、これ俺が部室に持っていくぞ」
「いいけど、落としたら死刑だから。死刑よ。わかってる?」
「わかった」
俺を一瞥したキョンは、溜息を吐いてまた脱兎のごとく駆けだした。
ああもう、ああもう! なんて律儀なやつなんだ。背後からのハルヒダウナー光線を浴びて一日中うんざりだったのなら、そのまま部室に行ってしまえばいいのに。
俺じゃ掃除用具入れの上まで手が届かないだろうからとわざわざ戻ってきてまでケースを降ろしたんだ。しかも、俺がオブジェを運ぶ係になっているから、勝手に運んでやったらハルヒが怒るかもしれないと、確認。
なんでそんなことするんだよ。そもそも俺の机にでも置いておけば、俺が部室まで運ぶのに。なんでわざわざ持って行ってくれるんだよ。全然諦めさせてくれないんだもんな。毎秒好きにさせてくる。例えちょっと引いた相手でも、困っている知り合いを放っておけないなんて、まったく厄介な男だ。
「掃除当番代わって」
こいつはこいつで厄介な女だ。ハルヒは仏頂面をぶら下げて、箒の柄に顎を預けている。
「手伝って、ならいいけど」
「無理。あんたのそれ、貰ったって言ったでしょ。制服。代わりにその人の手伝いするって約束しちゃったのよ」
「じゃあそれも手伝うよ。さっさと掃除終わらせよう。一緒に行く」
「ダメよ。もしかしたら今日のチラシで誰か来るかもしれないじゃない。古泉くんに無断でヒカリを広告塔にしちゃったから……古泉くんが対応したら、追い返しちゃうかもしれないもん」
「古泉には悪いと思ってるんだな。俺にも思ってくれ。次回からでいい」
「うっさいわね。ちょっとは思ってるわよ。キョンもてきとうに話を聞きそうでしょ。あんたが言ったみたいに有希ちゃんやみくるちゃんになんかあっても困るし」
「なんかあるとしたら、それこそ古泉とキョンがいるだろ」
言ったはいいが、あいつらはこの後部室から出てしまう。確かに部室に一人くらい男子がいる方がいいのかもな。
「いいから代わりに掃除しなさい」
「……わかった。じゃあこれは貸しだぞ」
「それでいいわよ。じゃあね」
「ああ、また明日」
ハルヒはまたもや頬を膨らませて、外の湿度みたいにじっとりした目で俺を見て帰って行った。一体どうしたら機嫌のいいハルヒが見られるのかね。古泉の言う通り前提が書き換わっているとなると、もうお手上げである。
さっさと掃除をしようと机を動かす俺に、朝倉が声をかけてくきた。厄介その3だ。熱心なことで。
「わたしが掃除しておくから、用事があるんだったら先に行ってもいいよ」
「お前当番じゃないだろ」
「うん。実はね、わたしも任されちゃったの」
「委員長は大変だな。他の男子は……ゴミ捨てか。いいよ、俺も手伝う。女子一人に掃除させられないだろう」
「ふーん。あなたってそういう人なんだ」
「どいつもこいつも、俺をどういう人だと思ってたんだよ」
ゴミを端に寄せながら、俺たちは仲良く会話する。谷口が見たらまたぎゃあぎゃあ騒ぎ出しそうなくらいの距離で。
「じゃあ、良かったらさ。これからもわたしのこと手伝ってくれない? あなたの言う通り、わたしって結構大変なの。やることがいっぱい」
「へえ、お前って暇すぎて辟易してるものだとばっかり思ってたが」
「そうね。それも近いのかもしれないけど……どっちかって言うと、やりたくもない、なんにも面白くないことをずっとやってる感じかしら。もう、うんざりなの」
社畜みたいなことを言うやつだ。少なくとも、こいつに面白いなんていう感情があったことが、なによりの誤算だ。俺にとっても、情報統合思念体にとっても。
人間らしく作られた朝倉は、長門よりも多くの感情を獲得している。だから、飽きたり我慢できなくなったりする。人が死んだら悲しいって感情は持ち合わせてにない癖に。
「そりゃ同情するよ。ポストを変えてもらったらいいんじゃないか。誰か偉い人に相談してさ。やっぱ合う合わないってあるだろ。場の雰囲気とかさ。せめて委員長じゃなくしてもらうとか?」
「変わらないのよ。上は頭が固いから。でも、現場はそういうわけにも行かないじゃない? ただ待っていることが最善? どうにかしなくちゃって思うものじゃない」
これ、一日すっ飛ばして俺が刺されるパターンじゃないよな? 会話の流れがVS朝倉戦みたいになっていってる気がするんだが。お前がそれを話す相手は俺じゃない。キョンだ。
そんな俺の思考を悟ったように、朝倉は本当に困ってしまった少女のような目で俺を見上げた。
「だからね。あなたが協力してくれたら“何も起きない”で済むかもしれない。あなたの好きな平穏無事な世界で、あなたの好きな人たちと、誰も危険な目に遭わないで。あなたにはそれができるのよ。思い通りに情報を操作して、彼女を使って……きっとあの情報フレアと同じ状況を作り上げるわ」
「それが起きると困る人たちもいるんだよね」
「ふーん、その人が大切?」
ぴ、と空気の裂ける音を聞いた気がした。顔が強張る。
「どうしてそんな怖い顔をするの? わたし、あなたに何かした? 仲良くしたいって思っているだけよ。だって、あなただってするじゃない。なんにも面白くないって、顔。わたしたち、似てるの。そうじゃない?」
思っていたよ。俺も、毎日がただ作業みたいに過ぎていく日々のどうしようもなさを知っているからな。多分、大抵のやつが抱えているんだ。ずっとこのまま生きていくのかな。なにも大きなイベントのない命として生まれて死んでいくのかな、なんてことを。
みんな同じだから我慢しろとは言わない。言えないけど、だからってめちゃくちゃにしてやろうっていう意見には賛成できない。
本当に会社が爆発したら、殆どのやつは困るよ。自分が仕事に行きたくないって理由で、関係ない人が死ぬのを許容できるやつはそういない。
「まあ、たまに飽き飽きするよ。自分にも世界にも。でも、トータルで見れば今が幸せなんで。そういう勧誘は間に合ってるよ。俺に何かするっていうなら、こう、様々な勢力が黙ってないぜ」
「そっかあ。でも、なにもしないわ。あなたには、なにもしない。だから、お願いがあるの。邪魔しないでね」
「それに関しては、俺じゃとても邪魔できるとは思えないよ」
「……あーあ、掃除終わっちゃったね。もう少し話していたかったな」
「お前が俺と同じ気持ちだって言うなら……明日も明後日も、その先だって……俺は朝倉と話したいけどな」
「うん、それ無理。だって、情報爆発の観測を終えたらわたしは戻るから。じゃあ、また明日ね」
窓の外から強い風が吹いた。朝倉の長い髪が揺れて、彼女は髪を耳にかける。午後から夕方に差し掛かろうとする、黄色と橙の間みたいな太陽に照らされて、少し寂し気に彼女は笑う。違うな、寂しいなんて思っているのは俺の方だ。多分、そうなんだ。
だって、彼女はスカートがはためいているのに押さえもせず、俺ですら目を瞑ってよろめいたほどの風で、微動だにしないでそこに立っていた。その姿は可愛らしい少女の見た目をしているのに、とても人間には見えなかった。
そういう一瞬を切り取った、オブジェみたいだった。
そして朝倉からは相変わらず、なんの匂いもしなかった。