きっと、大丈夫だよ。
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side:咲
「目が、当てられなくてもいい…?え?あれ?目を当てるゲームだったはずじゃ……」
訝しげに眉間に皺を寄せながら、私がそう呟くと、お兄とヒロシさんたちがこちらを向いた。
お兄と目が合う。お兄も不審に思ったみたいだ。
「目は当てられなくてもいい…生きていられれば…」
目を細め、胸の前で指を絡ませ、とても小さな声でお兄は女の人の言葉を繰り返した。
「何ブツクサ言ってんだ!どの道出たとこ勝負の賽の目に命を張れっつってんだぞあの女ああ!」
高いところにいる女の人を指差しながら、大きな声を出して狼狽する末崎さん。こちらを見ていた女の人は、ふいっと視線をそらした。
するとその時、誰かが動いたようだ。小さなざわめきが起きた。立ち尽くす人たちの中で、1人、サークルに向かって歩みを進めていた。その人を避けるように道が出来ていく。
「何だ?あのガキ…」
セイギさんが怪訝そうな顔でその人を見ていた。
「あ…あの子、さっきの…」
見えた学生服の男の子に、思わず声が漏れる。
「知ってるのか?」
「う、うん…ここに来て初めて喋った子…」
あれは、標くんだ…。男の子を見つめたまま、お兄に返事をする。
標くんは、1のサークル手前で足を止め、檻を見上げた。そして、迷いなく、サークル内に入っていった。
「あのガキ、早々に覚悟を決めやがった…」
勇気ある男の子の行動に、末崎さんが驚き感服したような声を発した。
標くんに触発されたのか、次々と1のサークルに人が駆けていった。すぐにでもいっぱいになりそうな勢いだ。
標くんも1だと思ったのかな?それとも何かわかったのかな?
お兄は1のサークルに詰めかける人たちを見るだけで、動くことはなかった。
「行かないんですか?」
チカラさんが焦ったそうにお兄に言った。
「どうなんだ?振り込め詐欺が言ってること」
ヒロシさんも聞く。
「急がないと、1000億円取り損ねますよ!」
「そんな簡単な答えじゃないと思うんです」
なおもチカラさんが訴えるが、お兄はゆっくりした口調で続ける。
「おかしな点が2つあるんですよ」
そう言うと、サークルの方へ移動するお兄。考え事をしていた私は、慌ててその後を追った。
「おかしな点?」
「いやでも、それ自体が引っ掛けっていうか、単なる考えすぎって可能性もなくはない…」
お兄はまだはっきりとした答えは出ないものの、何か気になることがあるみたいだ。そういえばさっきも、モニターに映ったサイコロの映像が引っかかるって言ってたよね…。
「さっきから何ごちゃごちゃ言ってるんですか。1じゃなかったら何が出るんですか!」
「急かすなよ!」
埋まっていく1のサークルを見て焦りを感じているのか、さっきからチカラさんが執拗にお兄の答えを求めている。ヒロシさんがそれを諫めた。
「もうすぐいっぱいですよ!」
あっという間に、1のサークルは満員に近くなった。
それでもお兄は目をつぶって、考えている。
その間にも、1のサークルは埋まっていく。もうほとんどぎゅうぎゅう詰めだ。押し合いへし合いしている。
「いいですよもう!!!」
「え?チカラさん!?」
「チカラ氏?」
ついに痺れを切らしたチカラさんは1のサークルへ行ってしまった。
でも、せっかく入ったというのに、権利はタイムアウトしたときに入っていた人間にあるとかで、今度は追い出されようとしていた。
その様子に目もくれず、お兄はサークルへまた一歩近づいた。
チカラさんのことも気になるけれど、まずは考えなきゃ。
そもそも、あの女の人の言葉には矛盾があった気がするんだ。
目を当ててっていうゲームなはずなのに、当てられなくても入場を許可するなんて…。
「なんだよ、何がおかしいんだよ、零」
ヒロシさんがお兄に問う。
「あの女性、こう言ってました。『ゲーム終了時にサークルの中にいられた者は、その度胸に免じて目は当てられなくても入場を許可する』って」
それはまさに、私も気になっていたことだった。
「え、やっぱりお兄も気になるの?」
「え?ってことは咲も?」
2人顔を合わせて、目を丸くした。
「そういえば、最初にあの女がそう言った時、真っ先に咲ちゃん反応してたもんな…」
ヒロシさんが呟いた。
「目が当てられなくても合格ってことは、つまり、正解してもゲームの勝ち負けには関係ない…」
「え、でもそれじゃゲームにならないですよ」
お兄の考えにスナオさんが反応すると、ヒロシさんも「そうだよな?」と頷いた。
そう。それだと根本的にゲームにする意味がなくなってしまう。じゃあ、どうして…。
「仮に、サイコロの目当てという確率の問題ではないと考えると…あの時…」
お兄は何かを必死に思い出そうとしているのか、頭に手を当ててそれ以上言葉を続けることはなかった。
お兄がこうなったらしばらく時間がかかる。
よし、私は私で考えてみよう。
「目を当てることが正解ではないとしたら…」
ん~あとなんて言ってたっけ、あの女の人。えーっと…確か……。
『ただし、生きていられればの話だけど』
あ…そうだ。なんであんなことを言ったの?サークルの中にいて、外れたら鉄球が落ちてくるわけだから、生きていられるはずがないのに……。
え、待って…まさか、中にいても生きていられる方法があるってこと?
思わず顔を上げて、サークルを見つめた。
「咲ちゃん…?」
お兄と同じように俯いていた私が突然顔を上げたことに驚いたのか、スナオさんが声をかけてきた。
私は答えることなく、一番近い2のサークルに近づいて、覗き込んだ。
「さ、咲ちゃん、あんまり近づくと危ないんじゃない?」
スナオさんが私を引き止める。
スナオさんに小さく微笑んで、私はサークル内に足を踏み入れた。
ぐるっとサークル内を歩いて、頭上を見上げる。巨大な鉄球が今にも落ちてきそうで、少し足がすくんだ。目を閉じてふーっと深く息を吐く。
落ち着いて…大丈夫。
目を開けて、見落としがないように、くまなくサークル内を観察した。今度は、一度サークルから出て離れて見上げてみる。
他の空いているサークルにも入っては鉄球を見上げ、また離れてサークルを見上げるというのを繰り返した。
私の行動に、ヒロシさんたちは首を傾げていた。
鉄球が落ちてきた時を思い出す。怖くて腕をさすりながら、その時の光景を一生懸命思い浮かべた。
あ……もしかして。
いや、でも……ううん、可能性は、なくはない。
まだ確信はないけれど、私は1つ思いついた。
「目が、当てられなくてもいい…?え?あれ?目を当てるゲームだったはずじゃ……」
訝しげに眉間に皺を寄せながら、私がそう呟くと、お兄とヒロシさんたちがこちらを向いた。
お兄と目が合う。お兄も不審に思ったみたいだ。
「目は当てられなくてもいい…生きていられれば…」
目を細め、胸の前で指を絡ませ、とても小さな声でお兄は女の人の言葉を繰り返した。
「何ブツクサ言ってんだ!どの道出たとこ勝負の賽の目に命を張れっつってんだぞあの女ああ!」
高いところにいる女の人を指差しながら、大きな声を出して狼狽する末崎さん。こちらを見ていた女の人は、ふいっと視線をそらした。
するとその時、誰かが動いたようだ。小さなざわめきが起きた。立ち尽くす人たちの中で、1人、サークルに向かって歩みを進めていた。その人を避けるように道が出来ていく。
「何だ?あのガキ…」
セイギさんが怪訝そうな顔でその人を見ていた。
「あ…あの子、さっきの…」
見えた学生服の男の子に、思わず声が漏れる。
「知ってるのか?」
「う、うん…ここに来て初めて喋った子…」
あれは、標くんだ…。男の子を見つめたまま、お兄に返事をする。
標くんは、1のサークル手前で足を止め、檻を見上げた。そして、迷いなく、サークル内に入っていった。
「あのガキ、早々に覚悟を決めやがった…」
勇気ある男の子の行動に、末崎さんが驚き感服したような声を発した。
標くんに触発されたのか、次々と1のサークルに人が駆けていった。すぐにでもいっぱいになりそうな勢いだ。
標くんも1だと思ったのかな?それとも何かわかったのかな?
お兄は1のサークルに詰めかける人たちを見るだけで、動くことはなかった。
「行かないんですか?」
チカラさんが焦ったそうにお兄に言った。
「どうなんだ?振り込め詐欺が言ってること」
ヒロシさんも聞く。
「急がないと、1000億円取り損ねますよ!」
「そんな簡単な答えじゃないと思うんです」
なおもチカラさんが訴えるが、お兄はゆっくりした口調で続ける。
「おかしな点が2つあるんですよ」
そう言うと、サークルの方へ移動するお兄。考え事をしていた私は、慌ててその後を追った。
「おかしな点?」
「いやでも、それ自体が引っ掛けっていうか、単なる考えすぎって可能性もなくはない…」
お兄はまだはっきりとした答えは出ないものの、何か気になることがあるみたいだ。そういえばさっきも、モニターに映ったサイコロの映像が引っかかるって言ってたよね…。
「さっきから何ごちゃごちゃ言ってるんですか。1じゃなかったら何が出るんですか!」
「急かすなよ!」
埋まっていく1のサークルを見て焦りを感じているのか、さっきからチカラさんが執拗にお兄の答えを求めている。ヒロシさんがそれを諫めた。
「もうすぐいっぱいですよ!」
あっという間に、1のサークルは満員に近くなった。
それでもお兄は目をつぶって、考えている。
その間にも、1のサークルは埋まっていく。もうほとんどぎゅうぎゅう詰めだ。押し合いへし合いしている。
「いいですよもう!!!」
「え?チカラさん!?」
「チカラ氏?」
ついに痺れを切らしたチカラさんは1のサークルへ行ってしまった。
でも、せっかく入ったというのに、権利はタイムアウトしたときに入っていた人間にあるとかで、今度は追い出されようとしていた。
その様子に目もくれず、お兄はサークルへまた一歩近づいた。
チカラさんのことも気になるけれど、まずは考えなきゃ。
そもそも、あの女の人の言葉には矛盾があった気がするんだ。
目を当ててっていうゲームなはずなのに、当てられなくても入場を許可するなんて…。
「なんだよ、何がおかしいんだよ、零」
ヒロシさんがお兄に問う。
「あの女性、こう言ってました。『ゲーム終了時にサークルの中にいられた者は、その度胸に免じて目は当てられなくても入場を許可する』って」
それはまさに、私も気になっていたことだった。
「え、やっぱりお兄も気になるの?」
「え?ってことは咲も?」
2人顔を合わせて、目を丸くした。
「そういえば、最初にあの女がそう言った時、真っ先に咲ちゃん反応してたもんな…」
ヒロシさんが呟いた。
「目が当てられなくても合格ってことは、つまり、正解してもゲームの勝ち負けには関係ない…」
「え、でもそれじゃゲームにならないですよ」
お兄の考えにスナオさんが反応すると、ヒロシさんも「そうだよな?」と頷いた。
そう。それだと根本的にゲームにする意味がなくなってしまう。じゃあ、どうして…。
「仮に、サイコロの目当てという確率の問題ではないと考えると…あの時…」
お兄は何かを必死に思い出そうとしているのか、頭に手を当ててそれ以上言葉を続けることはなかった。
お兄がこうなったらしばらく時間がかかる。
よし、私は私で考えてみよう。
「目を当てることが正解ではないとしたら…」
ん~あとなんて言ってたっけ、あの女の人。えーっと…確か……。
『ただし、生きていられればの話だけど』
あ…そうだ。なんであんなことを言ったの?サークルの中にいて、外れたら鉄球が落ちてくるわけだから、生きていられるはずがないのに……。
え、待って…まさか、中にいても生きていられる方法があるってこと?
思わず顔を上げて、サークルを見つめた。
「咲ちゃん…?」
お兄と同じように俯いていた私が突然顔を上げたことに驚いたのか、スナオさんが声をかけてきた。
私は答えることなく、一番近い2のサークルに近づいて、覗き込んだ。
「さ、咲ちゃん、あんまり近づくと危ないんじゃない?」
スナオさんが私を引き止める。
スナオさんに小さく微笑んで、私はサークル内に足を踏み入れた。
ぐるっとサークル内を歩いて、頭上を見上げる。巨大な鉄球が今にも落ちてきそうで、少し足がすくんだ。目を閉じてふーっと深く息を吐く。
落ち着いて…大丈夫。
目を開けて、見落としがないように、くまなくサークル内を観察した。今度は、一度サークルから出て離れて見上げてみる。
他の空いているサークルにも入っては鉄球を見上げ、また離れてサークルを見上げるというのを繰り返した。
私の行動に、ヒロシさんたちは首を傾げていた。
鉄球が落ちてきた時を思い出す。怖くて腕をさすりながら、その時の光景を一生懸命思い浮かべた。
あ……もしかして。
いや、でも……ううん、可能性は、なくはない。
まだ確信はないけれど、私は1つ思いついた。