きっと、大丈夫だよ。
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side:零
「今から何があるんですかね…」
「こいつらみんな参加者なのか?」
「なんか、男ばかりでむさ苦しいとこですね」
振り込め詐欺の首謀犯であるヤクザのアジトに捕まっていた、スナオさん、ヒロシさん、チカラさんを助けたのも束の間、在全グループの会長である在全無量から、1人10円で買われて王の後継者を決めるとかいうゲームに強制的に参加させられることになった。
この部屋に連れてこられ、待機するよう言われてからだいぶ時間が経つ。
ざわざわと騒がしい室内で、俺たちは部屋の隅に固まって、周りの様子を伺っていた。
ガムに仕掛けておいた発信機が示すチカラさんたちの居場所と、送られてきたメッセージに違和感を感じて、そこへ向かう前に俺は塾から慌てて家へ帰った。
もし、咲にまで何かあったらどうしようって思った。結局は何事もなくて済んだけれど。俺の家まで割り出されてなくてよかった。
だけど今度はこんなことになってしまった。絶対に帰るって咲に約束したのに…。
妹を1人家に残してきたことを今更ながら後悔していた、その時だった。
「お兄ぃーー!!」
突然聞こえた、聞き覚えのありすぎる声に、自分の耳を疑った。
は…?なぜ?いや、ありえない。
幻聴かと振り返ったと同時に、その小さな体は俺の胸に飛び込んできた。
「よかった…!ここにいた!」
「咲!!?」
間違いじゃなかった。ぎゅーっと力いっぱいしがみついて、俺を見上げて安堵の表情を浮かべるこの子は紛れもなく俺の妹で。
家を出る前に見た時と同じ、白いTシャツと黒いスウェットのパンツ、それから、お気に入りなのかよく着ていた紺色のパーカー。
つい数時間前に玄関で別れたばかりの咲が目の前にいる。
っていうかなんで——
「なんで、咲がここにいるんだ!!?」
引き剥がして、ガシッと肩を掴んで咲の顔を見下ろす。思っていたよりも大きな声を出してしまい、俺自身も驚いた。咲も同じだったのか、その大きな瞳を揺らして戸惑いの表情で俺を見た。俺が滅多に声を荒げないせいかもしれない。
「お、お兄が、変な黒い服の人たちに連れていかれるのを見てたのがバレて、それで……気づいたらここにいた」
拉致されたってことなのか?っていうか追ってきてたのか…。
ふと、咲の短い髪の間から覗いた首が、少し青くなっていることに気づいた。
あいつらの仕業か?気絶させてここに連れてきたのか…?随分と手荒だな…。俺は思わず眉をしかめていた。
それ以外には目立った怪我はしてなさそうだ。
「無茶なことするなよ…」
「…ごめんなさい」
俺がため息をつくと、咲はしゅんとして体を小さくさせた。俺がちゃんと話さずに家を出てきたのも悪かったかもしれない。ここは怒っても仕方がないか…。あまりにも気を落とした様子の咲に、俺は困ったように笑って頭を撫でた。
「あのぉ、そちらの女の子は…?」
チカラさんが頃合いを見計らったように、そーっと声をかけてきた。
「あ…俺の妹です」
「妹さんですかあ!」
「大変な目にあっちゃたんだな…」
おお、とチカラさんは声をあげ、ヒロシさんは心配そうな顔をした。
「こんにちは。僕は早乙女スナオっていいます。咲ちゃん、だっけ?」
スナオさんが咲に一歩近づいて、腰を屈めて手を差し出した。
咲はスナオさんの背の高さに驚いて一瞬強張ったように見えた。でも、柔らかく優しげに笑うスナオさんに安心したように、咲はにへらと笑って手を握り返した。さっきまで凹んでいた咲はどこへやら。
「宇海咲です。よろしくお願いします」
「よろしくねー」
スナオさんはどこか嬉しそうに、しばらく握った手を揺らしていた。
咲はヒロシさんたちとも一通り自己紹介を済ませて、スナオさんと話していた。
スナオさんはといえば、なんだかさっきからずっとにこにこしている。
普段からのんびりしていて、穏やかなスナオさんだけど、いつにも増してだらしなく笑っている気がする。
「スナオ氏さっきから気持ち悪いですよ」
「チカラ」
「んっ」
ヒロシさんの脇腹を叩くツッコミにチカラさんが呻いた。
「咲ちゃんって小動物みたいで小ちゃくて可愛いじゃないですか…。零が羨ましいです、こんな可愛い妹さんがいて…。はあ、可愛い」
そう言って咲の頭を撫でた。
「あ、おい、スナオ、女の子の頭を簡単に触るなって…!」
ヒロシさんが慌てて止めに入ろうとする。
自身の背が高いと、小柄な咲のことが可愛く見えてしまうのだろうか。
「そうですよ、子ども扱いしないでくださいよー!私はもう19歳なんですからね!」
少し的外れな反論をする咲。
「この前高校卒業したばっかだろ」
思わず口を挟んだ。来年には成人するといっても、咲はまだまだ子どもだった。
咲は頬を膨らませながら、スナオさんの手をどかそうと一生懸命だ。
「身長縮んじゃいますーー!」
「もっと縮んじゃえー」
「ひどーい!」
きゃっきゃと楽しそうな咲を見て、ひとまず安心する。
咲が嫌がってないのならいいか。
呆れたように笑むだけで、俺は特にスナオさんを咎めることはしなかった。
「そうだ、咲ちゃん。今更だけど、ごめんな。俺たちのせいで零も、咲ちゃんまでもこんなところに連れてこられちゃって…」
ヒロシさんが唐突に話し出した。
「2回も助けてくれたんだ。僕たちの命の恩人だよ、零は」
「命の恩人…?えっと、どういうことですか?」
眉を顰めて問う咲に、ヒロシさんたちは「え?」っと声を揃えた。
「前から知り合いなの?」
お兄?と俺を振り返る咲への返答に困っていると、チカラさんが訝しげにこちらを見た。
「あの、もしかして、話していないんですか?僕たちのこと」
「今から何があるんですかね…」
「こいつらみんな参加者なのか?」
「なんか、男ばかりでむさ苦しいとこですね」
振り込め詐欺の首謀犯であるヤクザのアジトに捕まっていた、スナオさん、ヒロシさん、チカラさんを助けたのも束の間、在全グループの会長である在全無量から、1人10円で買われて王の後継者を決めるとかいうゲームに強制的に参加させられることになった。
この部屋に連れてこられ、待機するよう言われてからだいぶ時間が経つ。
ざわざわと騒がしい室内で、俺たちは部屋の隅に固まって、周りの様子を伺っていた。
ガムに仕掛けておいた発信機が示すチカラさんたちの居場所と、送られてきたメッセージに違和感を感じて、そこへ向かう前に俺は塾から慌てて家へ帰った。
もし、咲にまで何かあったらどうしようって思った。結局は何事もなくて済んだけれど。俺の家まで割り出されてなくてよかった。
だけど今度はこんなことになってしまった。絶対に帰るって咲に約束したのに…。
妹を1人家に残してきたことを今更ながら後悔していた、その時だった。
「お兄ぃーー!!」
突然聞こえた、聞き覚えのありすぎる声に、自分の耳を疑った。
は…?なぜ?いや、ありえない。
幻聴かと振り返ったと同時に、その小さな体は俺の胸に飛び込んできた。
「よかった…!ここにいた!」
「咲!!?」
間違いじゃなかった。ぎゅーっと力いっぱいしがみついて、俺を見上げて安堵の表情を浮かべるこの子は紛れもなく俺の妹で。
家を出る前に見た時と同じ、白いTシャツと黒いスウェットのパンツ、それから、お気に入りなのかよく着ていた紺色のパーカー。
つい数時間前に玄関で別れたばかりの咲が目の前にいる。
っていうかなんで——
「なんで、咲がここにいるんだ!!?」
引き剥がして、ガシッと肩を掴んで咲の顔を見下ろす。思っていたよりも大きな声を出してしまい、俺自身も驚いた。咲も同じだったのか、その大きな瞳を揺らして戸惑いの表情で俺を見た。俺が滅多に声を荒げないせいかもしれない。
「お、お兄が、変な黒い服の人たちに連れていかれるのを見てたのがバレて、それで……気づいたらここにいた」
拉致されたってことなのか?っていうか追ってきてたのか…。
ふと、咲の短い髪の間から覗いた首が、少し青くなっていることに気づいた。
あいつらの仕業か?気絶させてここに連れてきたのか…?随分と手荒だな…。俺は思わず眉をしかめていた。
それ以外には目立った怪我はしてなさそうだ。
「無茶なことするなよ…」
「…ごめんなさい」
俺がため息をつくと、咲はしゅんとして体を小さくさせた。俺がちゃんと話さずに家を出てきたのも悪かったかもしれない。ここは怒っても仕方がないか…。あまりにも気を落とした様子の咲に、俺は困ったように笑って頭を撫でた。
「あのぉ、そちらの女の子は…?」
チカラさんが頃合いを見計らったように、そーっと声をかけてきた。
「あ…俺の妹です」
「妹さんですかあ!」
「大変な目にあっちゃたんだな…」
おお、とチカラさんは声をあげ、ヒロシさんは心配そうな顔をした。
「こんにちは。僕は早乙女スナオっていいます。咲ちゃん、だっけ?」
スナオさんが咲に一歩近づいて、腰を屈めて手を差し出した。
咲はスナオさんの背の高さに驚いて一瞬強張ったように見えた。でも、柔らかく優しげに笑うスナオさんに安心したように、咲はにへらと笑って手を握り返した。さっきまで凹んでいた咲はどこへやら。
「宇海咲です。よろしくお願いします」
「よろしくねー」
スナオさんはどこか嬉しそうに、しばらく握った手を揺らしていた。
咲はヒロシさんたちとも一通り自己紹介を済ませて、スナオさんと話していた。
スナオさんはといえば、なんだかさっきからずっとにこにこしている。
普段からのんびりしていて、穏やかなスナオさんだけど、いつにも増してだらしなく笑っている気がする。
「スナオ氏さっきから気持ち悪いですよ」
「チカラ」
「んっ」
ヒロシさんの脇腹を叩くツッコミにチカラさんが呻いた。
「咲ちゃんって小動物みたいで小ちゃくて可愛いじゃないですか…。零が羨ましいです、こんな可愛い妹さんがいて…。はあ、可愛い」
そう言って咲の頭を撫でた。
「あ、おい、スナオ、女の子の頭を簡単に触るなって…!」
ヒロシさんが慌てて止めに入ろうとする。
自身の背が高いと、小柄な咲のことが可愛く見えてしまうのだろうか。
「そうですよ、子ども扱いしないでくださいよー!私はもう19歳なんですからね!」
少し的外れな反論をする咲。
「この前高校卒業したばっかだろ」
思わず口を挟んだ。来年には成人するといっても、咲はまだまだ子どもだった。
咲は頬を膨らませながら、スナオさんの手をどかそうと一生懸命だ。
「身長縮んじゃいますーー!」
「もっと縮んじゃえー」
「ひどーい!」
きゃっきゃと楽しそうな咲を見て、ひとまず安心する。
咲が嫌がってないのならいいか。
呆れたように笑むだけで、俺は特にスナオさんを咎めることはしなかった。
「そうだ、咲ちゃん。今更だけど、ごめんな。俺たちのせいで零も、咲ちゃんまでもこんなところに連れてこられちゃって…」
ヒロシさんが唐突に話し出した。
「2回も助けてくれたんだ。僕たちの命の恩人だよ、零は」
「命の恩人…?えっと、どういうことですか?」
眉を顰めて問う咲に、ヒロシさんたちは「え?」っと声を揃えた。
「前から知り合いなの?」
お兄?と俺を振り返る咲への返答に困っていると、チカラさんが訝しげにこちらを見た。
「あの、もしかして、話していないんですか?僕たちのこと」