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きっと、大丈夫だよ。

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ざわめく声、騒がしい音に目が覚めた。ぼーっと、その騒音を聞きながら、しばらくの間横になったままでいる。床が冷たい…。

「うっ…」

次第に意識がはっきりしてくると、首に痛みを感じた。首を抑えて唸りながら、上体を起こす。そして、騒がしいのは周りにたくさんの人がいるからだということに気づいた。

ここは、どこ?

えっと、確か、私はお兄を追いかけて…倉庫に…ああ、そうだ、お兄が誘拐されると思って、警察に通報しようとしたら見つかって…それじゃあ私も連れ去られた?

反射的に自分の体を確認する。よかった、ちゃんと服は着てる。ポケットに入れてたスマホもお金もそのままだ。取られていない…。縛られてもいないし、怪我もしてなくて、とりあえず無事なことに安堵する。

それにしても、なんでこんなに人がいるの?この人たちも誘拐されたの?

お兄は、どこ?

「生きてたんだ」

「へっ?」

突然話しかけられ、素っ頓狂な声をあげてしまった。声の方へ視線を向けると、制服姿の色白の男の子と目が合った。とても綺麗な顔をした男の子だ。中学生?高校生?くらいの彼は、壁を背に体育座りをしていた。

「死んでるのかと思った」

彼は表情を変える事なく、私を見つめたままそう言った。不躾な言葉に思わず苦笑する。

「えっと、ここはどこなの?」

情報を得るためにもう少し話してみる。彼は表情が乏しく、何を考えているかはわからない。でもなんとなく、悪い人ではなさそうだと思った。
すると、ずっと無表情だった彼は、わずかに目を細めた。

「知らないの?君も参加者じゃないの?」
「…何のこと?」
眉をひそめて、首を傾げた。

「そう…何も知らないんだね」

その男の子はそう言うと、私から視線を外し、前を向いた。続きを待ってみても、何かを教えてくれるわけではなさそうで、男の子はまっすぐ前を向いたままになった。

続きを聞くことは諦めて、私はその場を離れることにした。まずはお兄を見つけなくちゃ。

私は壁を支えに起き上がった。

「待って」

立ち上がった彼に腕を掴まれて、足が止まる。

「ここにいたほうがいい」

「え?」

「気をつけて。女の子は君しかいないから」

「えっと…ありがとう?でも、ごめんね。私、探さなきゃいけない人がいるの」

そう伝えても、彼は黙ったまま、じっと私を見た。
まだ腕を離してくれない。

「だから…その、離してくれると助かるんだけど…」

できるだけ刺激しないように、言葉を選ぶ。

「……名前は?」

「へ?」

「君の名前」

今度は唐突に名前を聞いてきた。本当に、よくわからない。
綺麗な顔でじっと見つめられ、私はたじろいだ。誤魔化すように、ちょっとお姉さん風を吹かせてみる。

「…人に名前を聞く時は、まずは自分からって教わらなかった?」

「……標」

彼はぼそりと呟いた。あら、ちゃんと教えてくれた。もしかしたらいい子なのかもしれない。

「標くん、ね。私は宇海です。よろしく、で、いいのかな?」

言った後で、私は困ったように笑みを浮かべた。

標くんはこくりと頷いた。あまり喋らない子みたいだ。
ようやく腕を離してくれたから、今度こそ、そこから離れた。

「またね」と彼に残して。





お兄を探して歩いてみてわかったことは、ここには男の人しかいないってこと。標くんの言っていた通りだった。
横を通り過ぎるたびに、じろじろ見られる。すごく視線が痛かった。周りは、標くん以外には成人した男の人たちばかりのようだ。

この部屋のちょっと高いところには、サングラスをかけた黒いスーツの男の人たちが数人いる。

何あれ?監視人か何か?やっぱりこれって誘拐?でもその割には自由が効いてる。

その高台のようなところの下には、白い布で目隠しされた巨大な何かが置かれている。後方には、深紅の幕が張られている。

本当に、何なんだろう、ここ。

部屋の雰囲気はただの誘拐や監禁するような場所らしくない。派手な床だし。もし誘拐するなら、もっと無機質な倉庫のようなところにするはず…。ドラマなら、そんなところに連れていかれることが多いから。


「あ…」

部屋を観察しながら歩いていた私は、不意に足を止めた。
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