きっと、大丈夫だよ。
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side:咲
カズヤお兄ちゃんのおかげで、私たちは建物から出ることができた。ユウキさんたちのことが気がかりだったけれど、ヒロシさんが気を失ってしまい、それどころではなくなった。
ヒロシさんは落伍者だと告げられて、黒服の男たちに担架に乗せられどこかへ連れていかれてしまった。
大丈夫かな、ヒロシさん…。
『足引っ張ってごめん…ごめんな』
気を失う前、ヒロシさんがかすれた声で絞り出すように言っていた。その声色はとても悔しそうで悲しげだった。
「カズヤも挑戦者なのか?」
「うん。いろいろあって会社辞めたんだ。いいとこまでいってたんだけど」
「何かあったの?カズヤお兄ちゃん」
私もようやく自力で立っていられるようになると、3人だけで話をした。10年ぶりか…本当に久しぶりだ。チカラさんたちは気を遣ってか、少し離れたところでお話ししている。
「まあ、いつか話すよ。今はなんとか自力で起業したい。そのために来たんだけど…まさかこんな物が必要になるなんてね…」
カズヤお兄ちゃんは鉄パイプを持ち上げた。
「とんでもないとこだよね」
「ああ…零が見えたから思わず飛び込んじゃったけど、まさか咲ちゃんまでいるなんて思わなかったよ…」
「まだ、ちゃんと礼を言ってなかったな…俺もそうだけど咲のこと助けてくれて、ありがとう」
お兄が頭を下げたから、慌てて私もお礼を言った。
「いいって。こんな場所だけど、俺は会えて嬉しいよ。零と咲ちゃんに」
カズヤお兄ちゃんのその言葉に顔をあげて、お兄と目を合わせる。
「俺も」
「私も」
2人は声を揃えて笑顔でカズヤお兄ちゃんにそう応えた。
「あのぉ、そちらの方は?」
タイミングを見計らったように、チカラさんが声をかけてきた。
「ああ、友達です。高校の時の。咲も小さい頃に一緒に遊んだりしてました」
お兄が紹介すると、カズヤお兄ちゃんは頭を軽く下げた。
「なんと」
「すごい偶然ですね」
チカラさんとスナオさんが驚いてから、素敵な再会ですね、と笑みを浮かべた。
「すみません!見てました。さっきの」
そこへ、私とヒロシさんとで一緒に逃げたあの青いポロシャツの男の人と、白黒のボーダー服で少しふくよかな男の人、黒髪短髪で黒っぽいシャツを羽織った男の人がやって来た。
「で、あの、誰かと、なるべくまとまってたほうがいいんじゃないかって…」
「僕たちも、一緒にいていいですか?」
ボーダーの男性と短髪の男性がそう言った。
「そうですよね」
「またさっきみたいになるのは危ないですもんね。ね、零」
チカラさんとスナオさんが言うと、「もちろんです」とお兄は答えた。
その場でカズヤお兄ちゃんとは一旦別れ、私たちは、新たに3人の男の人を迎えて、行動を共にすることになった。
青いポロシャツの男の人は島津さん、ボーダーの服の人は石田さん、短髪の男性は小早川さんというらしい。彼らはそれぞれ、動画配信サイトに動画を投稿して生計を立てている人たちなのだそうだ。
移動しながら、チカラさんが石田さんたちと話しているのを聞いていると、ふと、スナオさんがなんだか思いつめたような顔をしているのが目に入った。
「スナオさん?」
お兄の隣から移動して、スナオさんに近づくとスナオさんは何かを隠すような仕草をした気がした。思い過ごしかな?
「な、何?咲ちゃん」
「どうかしましたか?」
隣に並んでスナオさんの顔を覗き込むように見上げながら聞いた。
「えっ!ううん、どうもしないよ?どうしてそんなこと聞くの?」
明らかに動揺している。
「あ、いえ、浮かない顔してた気がして」
「そんなことないよ!えーと、それより、咲ちゃんこそ大丈夫?ユウキくんたちに何かされてない?」
誤魔化された…?
スナオさんの問いに私は首を左右に振って否定する。
「ユウキさんとセイギさんには何もされてませんよ。むしろ、守られていた気がします…」
思案しながら答えると、スナオさんは「そっか、ならよかった」と言っていつものふわふわした柔らかい笑みを浮かべた。
それ以上、私は何も聞かないことにした。何かあっても、スナオさんにも話したいタイミングというものがあるかもしれないから。
カズヤお兄ちゃんのおかげで、私たちは建物から出ることができた。ユウキさんたちのことが気がかりだったけれど、ヒロシさんが気を失ってしまい、それどころではなくなった。
ヒロシさんは落伍者だと告げられて、黒服の男たちに担架に乗せられどこかへ連れていかれてしまった。
大丈夫かな、ヒロシさん…。
『足引っ張ってごめん…ごめんな』
気を失う前、ヒロシさんがかすれた声で絞り出すように言っていた。その声色はとても悔しそうで悲しげだった。
「カズヤも挑戦者なのか?」
「うん。いろいろあって会社辞めたんだ。いいとこまでいってたんだけど」
「何かあったの?カズヤお兄ちゃん」
私もようやく自力で立っていられるようになると、3人だけで話をした。10年ぶりか…本当に久しぶりだ。チカラさんたちは気を遣ってか、少し離れたところでお話ししている。
「まあ、いつか話すよ。今はなんとか自力で起業したい。そのために来たんだけど…まさかこんな物が必要になるなんてね…」
カズヤお兄ちゃんは鉄パイプを持ち上げた。
「とんでもないとこだよね」
「ああ…零が見えたから思わず飛び込んじゃったけど、まさか咲ちゃんまでいるなんて思わなかったよ…」
「まだ、ちゃんと礼を言ってなかったな…俺もそうだけど咲のこと助けてくれて、ありがとう」
お兄が頭を下げたから、慌てて私もお礼を言った。
「いいって。こんな場所だけど、俺は会えて嬉しいよ。零と咲ちゃんに」
カズヤお兄ちゃんのその言葉に顔をあげて、お兄と目を合わせる。
「俺も」
「私も」
2人は声を揃えて笑顔でカズヤお兄ちゃんにそう応えた。
「あのぉ、そちらの方は?」
タイミングを見計らったように、チカラさんが声をかけてきた。
「ああ、友達です。高校の時の。咲も小さい頃に一緒に遊んだりしてました」
お兄が紹介すると、カズヤお兄ちゃんは頭を軽く下げた。
「なんと」
「すごい偶然ですね」
チカラさんとスナオさんが驚いてから、素敵な再会ですね、と笑みを浮かべた。
「すみません!見てました。さっきの」
そこへ、私とヒロシさんとで一緒に逃げたあの青いポロシャツの男の人と、白黒のボーダー服で少しふくよかな男の人、黒髪短髪で黒っぽいシャツを羽織った男の人がやって来た。
「で、あの、誰かと、なるべくまとまってたほうがいいんじゃないかって…」
「僕たちも、一緒にいていいですか?」
ボーダーの男性と短髪の男性がそう言った。
「そうですよね」
「またさっきみたいになるのは危ないですもんね。ね、零」
チカラさんとスナオさんが言うと、「もちろんです」とお兄は答えた。
その場でカズヤお兄ちゃんとは一旦別れ、私たちは、新たに3人の男の人を迎えて、行動を共にすることになった。
青いポロシャツの男の人は島津さん、ボーダーの服の人は石田さん、短髪の男性は小早川さんというらしい。彼らはそれぞれ、動画配信サイトに動画を投稿して生計を立てている人たちなのだそうだ。
移動しながら、チカラさんが石田さんたちと話しているのを聞いていると、ふと、スナオさんがなんだか思いつめたような顔をしているのが目に入った。
「スナオさん?」
お兄の隣から移動して、スナオさんに近づくとスナオさんは何かを隠すような仕草をした気がした。思い過ごしかな?
「な、何?咲ちゃん」
「どうかしましたか?」
隣に並んでスナオさんの顔を覗き込むように見上げながら聞いた。
「えっ!ううん、どうもしないよ?どうしてそんなこと聞くの?」
明らかに動揺している。
「あ、いえ、浮かない顔してた気がして」
「そんなことないよ!えーと、それより、咲ちゃんこそ大丈夫?ユウキくんたちに何かされてない?」
誤魔化された…?
スナオさんの問いに私は首を左右に振って否定する。
「ユウキさんとセイギさんには何もされてませんよ。むしろ、守られていた気がします…」
思案しながら答えると、スナオさんは「そっか、ならよかった」と言っていつものふわふわした柔らかい笑みを浮かべた。
それ以上、私は何も聞かないことにした。何かあっても、スナオさんにも話したいタイミングというものがあるかもしれないから。